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JWELD for Ansys LS-DYNAによる溶接シミュレーション結果の活用

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:機能紹介
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JWELD / Ansys LS-DYNA / Ansys Mechanical / Ansys nCode DesignLife

近年では、モデルベースデザインの浸透やバーチャルファクトリーといった概念の登場により、製品設計や衝撃解析、生産技術分野など複数の領域を繋ぐアセンブリ工程でのCAE活用が注目を集めています。JSOLでもこの分野の製品をラインナップしており、注力して取り組んでいます。そのうちの1つが溶接工程を解析する溶接シミュレーションソフトJWELDです。JWELDは溶接変形にフォーカスしたソフトウェアで、溶接による組立工程を仮想環境に再現する解析プラットフォームです(JWELDの詳細は、こちらをご覧ください)。

図1. JWELDの熱弾塑性解析機能による溶接シミュレーション 図1. JWELDの熱弾塑性解析機能による溶接シミュレーション

JWELDの代表的な機能が、熱弾塑性解析による溶接シミュレーションです。この機能では、応力・ひずみ場と温度場を連成して時間増分解析することで、溶接の入熱によって構造物に生じる多様な現象を評価できます。溶接継手に関する課題に、溶接によるひずみや残留応力の影響を加味した溶接構造物の各種性能評価が挙げられます。今回は、このような課題に対するアプローチの1つとして、また、複数領域を横断・連携してエンジニアリングを行う足掛かりとして、JWELD for Ansys LS-DYNA機能を用いた熱弾塑性解析結果の活用事例をご紹介します。

JWELDとAnsys LS-DYNAを連携した溶接シミュレーション

JWELDは独自の有限要素解析ソルバーを内蔵しており、多くの場合、この独自ソルバーを用いて熱弾塑性解析を行います。また、JWELDの熱弾塑性解析機能にはJWELD上で設定した溶接解析のモデルをAnsys LS-DYNAのインプットファイルとして出力する機能「JWELD for Ansys LS-DYNA」が実装されています。汎用プリプロセッサでAnsys LS-DYNAによる溶接解析を設定するには、Ansys LS-DYNAの膨大な機能の理解と煩雑な設定を要します。しかし、JWELDをプリプロセッサとして利用すれば、CADを基本としたJWELDのGUIで簡単に境界条件や溶接条件が設定できるため、Ansys LS-DYNAに精通したエンジニアでなくともモデルを作成できます。

Ansys LS-DYNAをソルバーとして利用するメリットとしてまず挙げられるのが、高い並列化効率です。車両の衝突解析や塑性加工解析などでの実績の通り、Ansys LS-DYNAは多数のCPUを利用する超並列の計算を得意としており、特に大規模モデルの計算においてそのメリットを発揮します。さらに、もうひとつのメリットとして、解析結果の活用が挙げられます。Ansys LS-DYNAをソルバーとして利用することで、幅広いソフトウェアとの連携が可能になり、解析データの利用範囲が大きく拡がります。

JWELD for Ansys LS-DYNAによる溶接シミュレーション結果を引き継いだAnsys LS-DYNA構造解析

最もベーシックな活用方法として、Ansys LS-DYNAによる溶接解析の結果を引き継ぎ、同じくAnsys LS-DYNAで後続の解析を実施した事例を図2に示します。この例で取り上げているのは、4本の溶接線を持つ「U」状の断面形状の構造物です。まず、JWELDをプリプロセッサとして溶接解析モデルを作成し、Ansys LS-DYNAで熱弾塑性溶接シミュレーションを実行しました。溶接、冷却後の相当応力をコンター図で示しています。

続いて、上記の溶接シミュレーション結果を引き継いで、構造物を軸方向に剛体壁で圧縮する解析を行いました。比較対象として、溶接の影響を考慮していないケースも実施したのでその結果も併せて示しています。中央のグラフで剛体壁の荷重履歴を見ると、溶接の影響を考慮するか否かで、ピークの波形が異なっていることが分かります。また、右図の変形モードでも視認できる程度の差異が出ており、溶接残留応力、ひずみの有無で構造物にも異なる変形応答が現れました。荷重のピーク値発生時点でのエネルギー吸収量を比較すると、溶接残留応力を考慮しないケースにおいて11%程度エネルギー吸収量が大きくなっていました。すなわち、残留応力を考慮しない場合はエネルギー吸収能を実際より大きく見積もっている可能性があります。

図2. 溶接変形や残留応力を考慮したAnsys LS-DYNAによる構造解析 図2. 溶接変形や残留応力を考慮したAnsys LS-DYNAによる構造解析

JWELD for Ansys LS-DYNAを用いた溶接シミュレーションとAnsysソフトウェアとの連携

次に、Ansys LS-DYNA以外の解析ソフトウェアとの連携活用例を示します。AnsysのCAEソフトウェア統合プラットフォームであるAnsys Workbenchでは、外部モデルとして解析モデルデータを取り込むことが可能です。Ansys LS-DYNAから出力されるデータ引継ぎ用ファイル(dynainファイル)にも対応しており、この機能を利用してAnsys LS-DYNAの解析結果をAnsys Workbench上に取り込むことができます(図3 : Step 1)。すなわち、JWELD for Ansys LS-DYNAで作成した溶接シミュレーションモデルの解析結果をAnsys Workbenchで扱えるようになります。

Ansys Workbenchに取り込むことで、さまざまなAnsysソフトウェアとの連携が容易に行えるようになります。たとえば、溶接解析の結果を引き継いでAnsys Mechanicalで構造解析を実施することも可能です。図3:Step 2ではデモンストレーションとして静的構造解析を実施しています。静的構造解析の相当応力分布をみると、溶接残留応力を考慮しないケースでは幾何的な要因のみで応力が決まるので、継手に沿って滑らかな分布を示しています。一方で溶接残留応力を考慮したケースでは、応力値自体が高くなっていることに加え、非常に複雑な分布を示しました。溶接による熱膨張、熱収縮を経たことで内部応力の複雑なバランスが生じていることが推察できます。実際の溶接構造物でもこのような見た目にはわからない内部応力分布が発生している場合、強度設計に影響します。Ansys Mechanicalでは、静的構造解析以外にも固有値解析や周波数応答解析など多様な機能を備えています。プリポストとソルバー一体型のソフトウェアで、ユーザーフレンドリーなGUIと操作性により、設計に近いプロセスで様々な構造性能の評価を可能にします。

また、Ansys Mechanicalで計算した結果をさらに後続の解析業務に引き継ぐこともできるので、図3:Step 3に示すように、構造解析の結果を利用したAnsys nCode DesignLifeでの疲労耐久性評価を実施することも可能です。このモデルでは、溶接施工と冷却の過程でワークに拘束を与えていますが、この拘束が冷却時の熱収縮に抵抗する形になり、継手付近に引張応力が生じました。引張残留応力は疲労強度を低下させることが知られていますが、疲労解析の結果にもそれが表れており、溶接残留応力を考慮したケースでは大幅に余寿命が低下します。

図3. JWELD for LS-DYNAを利用した溶接解析モデルのAnsysソフトウェアとの連携事例 図3. JWELD for LS-DYNAを利用した溶接解析モデルのAnsysソフトウェアとの連携事例

おわりに

本記事では、JWELD for Ansys LS-DYNAによる溶接シミュレーションを起点とし、溶接の影響を取り入れたいくつかの解析事例を紹介しました。軸圧壊、静的強度、疲労耐久性など、いずれも溶接工程が解析結果に影響 を及ぼすことが分かります。JWELD の熱弾塑性解析モジュールを用いると、CADを基本にしたGUIの設定で簡単に境界条件や溶接条件が設定可能で、作成した解析モデルをAnsys LS-DYNA形式で出力できます。Ansys LS-DYNAをソルバーとして利用することで幅広いソフトウェアとの連携が可能になり、解析データの利用範囲が大きく広がります。さらに、Ansys Workbenchとの連携も可能になり、Ansys MechanicalやAnsys nCode DesignLifeなど複数のソフトウェアを連携した解析業務を容易に実施できます。

溶接変形や残量応力を考慮した構造物の性能評価について課題をお持ちの方、JWELD for Ansys LS-DYNAにご興味をお持ちの方は、こちらからお問合せください。

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