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射出成形金型のキャビティ温度デジタルモニタリング
−Moldex3DとAnsys Twin Builderの連携事例紹介−

カテゴリー
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Moldex3D / Ansys Twin Builder

樹脂流動解析ソフトウェアMoldex3Dとシステム・シミュレータAnsys Twin Builderの連携事例として「キャビティ温度デジタルモニタリング」解析をご紹介します。

射出成形機で何度も成形を繰り返す連続成形では、金型温度が安定するまでの間の温度上昇に注意が必要です。Moldex3Dによる樹脂流動解析とAnsys Twin Builderを組み合わせることで、この温度上昇を高速にシミュレーションし、連続成形時に金型温度が規定値以下となるか否かを判定できます。

金型温度を上昇させると、製品の表面光沢やウェルドラインを目立たなくする効果があります。しかし、離型する際の製品表面が高温になるため、室温での冷却中に反り変形が大きくなるなどの負の影響が生じます。キャビティが製品に触れる面の温度上昇には特に注意が必要ですが、問題となる箇所には温度センサを配置することができません。そこで、Moldex3Dによるシミュレーションを用いて、バーチャル空間での温度モニタリングを試みます。

Moldex3Dでは、樹脂の充填から保圧、冷却、型開き、そして反り変形までのサイクルを一気通貫でシミュレーションできます。しかし、このサイクルを繰り返し解析して、連続成形時の温度上昇を見る場合は、計算時間が課題となります。仮に1サイクル10分程度で終了するような計算コストの小さいモデルであっても、100サイクル分を解析するには丸一日以上の時間を要します。そこで、Ansys Twin Builderの1Dシミュレーションで、高速にキャビティの温度上昇/下降を計算し、上昇温度の漸近値を見積もります。Ansys Twin Builderでは、電気回路や制御演算子だけでなく、Modelica形式の1Dモデルも使用できるため、伝熱や剛体運動などを含むマルチフィジックスな領域でのシステム・シミュレーションが可能です。

図1. Ansys Twin Builderによるキャビティ表面温度の1Dモデル 図1. Ansys Twin Builderによるキャビティ表面温度の1Dモデル

この事例では、Moldex3Dの最初の1ショットの計算結果から、充填と保圧によりキャビティに供給される単位時間あたりのジュール熱を算出しました。また、保圧後の水冷と空冷は、Modelica形式の伝熱素子でモデル化します。熱容量や熱伝達係数などのパラメータは、Moldex3Dの解析モデルから概算し、パラメータスタディにより同定しました。この1Dモデルは1サイクルあたりの計算時間が1秒未満であるため、短時間で同定できます。水冷における熱伝達係数は、水冷のタイミングでは同定した値を用い、それ以外のタイミングでは0と設定しました。空冷における熱伝達係数も同様です。すなわち、各現象時間が重ならないように設定することで、充填から空冷までの遷移を表現しました。10サイクル計算した平均キャビティ表面温度結果を下に示します。ここで、比較のために最初の3サイクルはMoldex3Dの結果も記載しました。

図2. 計算結果(10サイクル) 図2. 計算結果(10サイクル)

充填と保圧による温度上昇と、水冷と空冷による下降のサイクルが再現され、Moldex3Dの結果とほぼ一致しています。4ショット以降を見ると、極大値が59.5℃付近に漸近することが分かります。仮に60℃以下に抑えたいとすれば、冷却性能は十分であると言えます。少し余裕もあるため、冷却時間を短くして生産性を上げる、などの検討も可能です。3Dの樹脂流動解析では、1サイクルで何時間もの計算時間を要する場合もありますが、Moldex3Dにより最初の1サイクルの計算を実行、その結果をAnsys Twin Builderに取り込んでおけば、それ以降の1Dシミュレーションでは1サイクルあたり1秒未満であるため、冷却時間などのパラメータスタディを短時間で行い、より良い成形条件をすばやく導出できます。

本記事では、熱伝達係数をパラメータスタディで同定しましたが、Ansys Twin BuilderのStatic ROM機能を用いることで、冷却条件から熱伝達係数を導出するROMを作成することも可能です。Moldex3DとAnsys Twin Builderの連携は、射出成形条件を高速に最適化する強力なツールです。同様の課題をお持ちの方、ご興味をお持ちの方は、こちらからお問い合わせください。

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