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2011.11.01
日本国内をはじめ、世界各国で利用されているLS-DYNAは、1年に一度行われる日本ユーザー様向けLS-DYNA & JSTAMPフォーラムのほかに、2年に一度欧州でのユーザー会が開催されています。同じく2年に一度行われる北米ユーザー会とあわせ、世界各国からユーザー様が集まる国際会議として位置づけられており、先進的な機能の紹介やユーザー様からの適用事例が発表され、活発なディスカッションが行われます。
第8回を数える2011年度の開催は、フランスにおけるLS-DYNA販売代理店のAlyotech社の主催により、フランスのストラスブールで行われました。ドイツとの国境に近い、アルザス地方にあるこの田舎町は、その美しい風貌とは裏腹に、大陸北部の交通要所であることから中世より領有権の争いの場となり、長い歴史の中で両国への帰属を繰り返していました。欧州を二分した第二次世界大戦が最後にして最大の紛争となりましたが、その終戦を受けてフランス領となり、現在では欧州議会はじめヨーロッパの主要な国際機関の拠点を置き、欧州の歴史を象徴する平和都市となっています。
カンファレンス概要
8th European User Conference
- 日程
- 2011年5月23日、24日
- 場所
- ストラスブール、フランス
- 講演
- 基調講演数8、一般講演数110、セッション数24
セッション
- Plenary session
- Connection modeling
- Design Process and Optimization
- Optimization for crash analysis
- Material Modeling
- High performance computation
- Concrete Modeling
- Metal forming
- Polymer processing
- Polymer and rubber modeling
- Element technology and user options
- Nuclear and Industrial applications
- High performance computation
- Full vehicle crashworthiness
- Biomechanics and Safety
- SPH application
- Composite Materials
- Pre and Post Processing
- Process Modeling
- Crashworthiness of vehicle components
- Dummy modeling
- Blast simulation
- CFD and FSI applications
- Aeronautical and Off-shore applications
- New CFD and acoustics methods
JSOLからはCFRP繊維材料を用いたプレス成形材料を衝突解析に適用した事例発表("Multiscale approach for CFRP composite simulation by JSTAMP/NV and DIGIMAT")のほか、トヨタ自動車様、豊田中央研究所様の共同開発、当社が販売・サポートを行っているTotal Human Model for Safety (THUMS)の展示を行い、欧州各社への技術紹介を行いました。
"Multiscale approach for CFRP composite simulation by JSTAMP/NV and DIGIMAT"
講演の様子 JSOL 一ノ瀬
JSOL展示ブースの様子
毎回内容が高度かつ専門性を帯びてくるこのカンファレンスですが、今回は材料(Material)にかかわる講演が非常に多かったのが特徴的でした。ここ5,6年、自動車車両の軽量化や比剛性向上のために樹脂材料の適用が増えてきましたが、特に構造部材への適用も進み、衝突解析でも正確に予測する必要が出てきています。さらに自動車車体の変形だけでなく、人体への傷害値の評価を行うには、最終荷重経路である樹脂材料の高精度化は避けられません。また近年、樹脂は均一材料からCFRPに代表される複合材料化が進んでおり、これらの材料のモデル化の検証が急がれます。材料のみを主題とするセッションも今年は例年以上に多く見られました。
自動車の衝突解析や乗員安全解析、金属加工や爆破解析、原子力分野など、従来から精力的に行われている領域も引き続き盛況でしたが、これら解析技術・解析モデル化手法に加えて、今回はプロセスインテグレーションについて話題が多く見られました。基調講演にあった、欧州を代表するシートメーカーであるFaureciaからの発表にあるとおり、LS-DYNAを使った各解析をどのようにして、どのタイミングで設計プロセスの中に取り入れ、またマネジメント層からどの様に管理するか、見える化を行うか、など、解析をプロセスとして定義して納期・コスト・品質を管理する手法に注目が集まっています。従来エキスパートが行う専門的な領域であったCAEを、ルーチン化してきた領域は標準化することによりナレッジをシステムでカバーし、それをマネジメント層がきちんと管理する、という思想はかつてからありましたが、特に欧州では専門家のツールとして認識されていたCAEが徐々に標準技術としての運用に切り替わっていく機運が感じられました。
毎回新しいテーマが生まれつつも、LS-DYNAユーザー会は技術指向という重心がブレることがなく、常に先進技術を取り入れ、議論する場所となっています。JSOLも世界の技術動向の速さと深さに身を引き締め、これらの技術を吸収し、また情報を共有、ディスカッションすることにより昇華し、日本国内のお客様に還元してまいります。