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2022年6月に4a engineering社主催「Technology Day 2022」が開催され、JSOL技術者が参加、講演を行いました。本記事では、同社で開発中のバッテリモデリングサービスを含むバッテリ関連の講演に着目し、当日の様子をご紹介いたします。
本イベントの概要
本イベントは、これまで「試験とシミュレーション」や「軽量構造とプラスチック・複合材料」などのテーマで技術発表や4a engineering社のサービス紹介が行われてきました。2022年は、世界的な自動車のEV化に対応し、新たに「バッテリシミュレーション」のテーマが追加されました。
開催形式は現地(オーストリア)とオンラインのハイブリッド開催でしたが、参加者・講演者のほとんどが現地での参加と、ポストコロナの状況が垣間見えるものとなりました。出席者数は約80名(2日間の日程、通しは65名)で、一部パラレルセッションを含む全20の講演があり、JSOLからは以下の2講演で参加しました。
・Challenges towards Multi-scale Material characterization : from macroscopic reverse engineering to mesoscopic numerical approaches
・Recent Activities of Battery Simulation for Thermal Runaway Prediction
図1. 当日の様子
バッテリシミュレーションのJSOL講演
今回は、二次電池の放電時の熱解析シミュレーション、および圧壊シミュレーションの2事例を紹介いたしました。
前者はAnsys LS-DYNAの熱-電気連成解析、後者は純粋な構造解析としてまずは取り組んだものです。いずれもバッテリの安全性の評価を見据えた取り組みではありますが、実際の開発現場ではまだ試験による評価が主流となっています。
一方で、バッテリ単体、および周辺構造物を含むバッテリシステムの開発において、試作レスや軽量化のためにバッテリの変形まで考慮する必要性が高まっており、この分野のシミュレーションのニーズは高くなると考えられます。このような試験とのバリデーションを重ねていくことで、シミュレーション技術も向上していくものと期待されます。
発表内容の詳細は、過去のJSOLフォーラムの資料もご参照ください(ユーザー様限定)。また、「エンジニアレポート」でも以前、二次電池の放電時の熱シミュレーションの詳細をご紹介しております。こちらの記事(ゼロからはじめるバッテリーシミュレーション〜実験からデータ処理、解析結果との比較まで〜第1回)もご参照ください。
図2. バッテリ放電時の熱解析
図3. バッテリの圧壊解析
バッテリ関連の講演
JSOL以外の発表は、DYNAmore社、PCCL社、主催者の4a engineering社の3社がバッテリ関連の講演を行いました。
・DYNAmore社「Modular Simulation of Li-Ion Batteries under Use and Abuse Load cases with LS-DYNA」
この講演では、熱暴走において実際に発生する温度の上昇に対し、これまでAnsys LS-DYNAで考慮できる既存の内部短絡抵抗によるジュール発熱に加え、追加で熱量を付加できる新しい機能の紹介がありました。(*EM_RANDLES_EXOTHERMIC_REACTION)
この機能は、実験からリバースエンジ的に化学反応等ジュール熱以外による発熱を*DEFINE_FUNCTIONにより決められた物理量の関数として定義することができます。これにより、試験相当の温度の上昇結果を得ることができました。
・PCCL社「Assessment of a reliable cell disassembly, sample preparation and characterization of Li-ion battery cells」
後述する4a engineering社が検討しているバッテリモデリングツールでは、ユーザーから実物のバッテリを提供してもらい、電池特性を計測後、機械特性や熱特性などを計測するためにバッテリを部位ごとに分解するプロセスがあります。この講演では、バッテリのCTスキャンからSTLデータに変換し、構造の分析を行ったり、形状について詳細に計測したりする技術が紹介されました。
また、バッテリの分解のための装置についても紹介があり、分解する上では酸化や湿気による汚染に細心の注意が必要ということに言及されていました。
・4a engineering社「Battery cell and pack casings in crash and thermal runaway - modelling and characterisation」
4a engineering社では、JSOLでも販売代理店をしているIMPETUS/VALMIATのような構造解析をターゲットとした材料の機械特性試験から材料データを自動生成するソリューションを展開しています。この講演では、そのバッテリ版とも言える、同社が開発中の新たなサービスについて紹介されました。
ターゲットは、衝突時のバッテリセルおよびケースを含む構造体の熱暴走の評価です。バッテリの場合、構造に熱や電気といったマルチフィジックス問題になるため、これらの部品ごとの詳細な特性取得や、バッテリ全体のマクロ特性としての特性取得のノウハウが必要となります。また、解析の目的に応じたバッテリのモデル化やメッシュ作成も本サービスに含まれます。
図4. バッテリモデリングサービスの概要
図5. バッテリモデリング方法
この技術に関しては、JSOLも4a engineeringとのこれまでの協力体制と、JSOL発表にあるような技術の蓄積を生かして協業していきたいと考えておりますので、共にトライいただけるパートナーを募集しています。今回ご紹介したバッテリモデリングサービスにご興味ございましたら、こちらからお問合せください。