
CAE Technical Library エンジニアレポート - CAE技術情報ライブラリ
2008.11.04
樹脂製品・樹脂部品の強度設計が最近非常に重要になってきました。たとえば自動車の衝突安全分野では内装品、外装品とも樹脂製品が重要な位置を占めています。このため樹脂製品にも強度や衝撃吸収性などが求められるようになり、設計のためのCAEも適用が始まっています。
弊社の取り組みとご提案
樹脂製品は材料や形状が様々であり、CAEの適用にあたっては、解析モデルや材料モデルなど、どのようにすればよいのか、迷ってしまうことが多々あります。すでに解析には取り組んでいるが、精度が低い、破断などモデル化がうまくできない、などの問題もあります。このような問題の解決のため、弊社は、樹脂製品の構造・強度解析に取り組んできました。
- 解析を実施しているが、実験と合わない。
- 解析を始めたいが、どうすればよいかわからない。
- 樹脂のCAEについて、いろいろ情報がほしい。
- 製品の不具合の原因と対策を検討したい。
- CAEでコスト削減をしたい。
お客様が樹脂製品のCAEを始められるきっかけは様々にあります。弊社は、お客様のきっかけやニーズに合わせて、CAE導入のお手伝いをご提案します。
- 受託解析
- 解析用プログラムの導入
- プリポストを含む解析システムの構築
弊社ならば、これまでの豊富な設計解析経験を活かしたCAEの導入のお手伝いが可能です。ここではその解析事例の一部を紹介します。
樹脂製品CAEのポイント
実用的な解析をより高い精度で行うことが最大のポイントになります。現在実施している解析に少しの工夫を行うだけで解析精度が向上します。
樹脂解析では材料物性がまず重要となります。材料モデルのわずかな差が結果の大きな違いに結びつきます。下図のような製品を簡略化したモデルで検討しました。
金属製の板を樹脂のリブ構造を持った箱で保持するようなモデルです。この解析モデルを3点曲げ解析により強度を評価します。この際、樹脂の材料モデルを変更して解析を行い、解析結果(治具の反力)に対する影響を検討します。
解析結果では、CASE3の弾性体で解析した場合が一番ずれた値となりました。通常の線形解析では、弾性域で計算することになりますが、線形解析では限界があることが分ります。CAE1とCASE2の差は少ないように見えますが、詳細に検討すると以下のようなことが分ります。最初の反力のピークに差が現れていますが、これはCASE1では応力-ひずみ関係を正確に入力し、降伏近辺の剛性の立ち上がりを考慮できているからです。
このように、応力-ひずみ関係のわずかな相違が結果の大きな差になって現れます。樹脂の特徴的な応力-ひずみ関係をより正確に入力することから精度改善が始まります。
樹脂の解析はリブ構造を含むモデルが多く、どのようなモデル化を行うのがよいか、難しい問題があります。最近ではリブ構造を含めて詳細にモデル化することが始められていますが、シェル要素でいいのか、ソリッド要素なのか、基本的なところの検討が続けられています。
リブ構造の部分のモデル化をシェル要素とソリッド要素で行い、比較を行いました。従来から樹脂部品はシェル要素でモデル化されていますが、上図に示すように、シェル要素では板厚方向の応力が計算されません(板厚方向応力は0)。シェル要素では、右図のように共有節点では回転モーメントでのみ接続することになりますので、自ずと限界があります。
そこで、リブ構造物のモデル化について、シェル要素とソリッド要素でのモデル化の比較を行いました。基板に対してリブが高い場合にはシェルもソリッドもほぼ同じ挙動を示しますが、リブの高さが低くなると、モデル化に差が現れ始めます。シェル要素では、板厚中心の位置を上面や下面に設定する機能がありますので、これを使うと改善される可能性があります。
最近のトピックス
材料モデルについてはより進んだ物性材料モデルが検討されています。樹脂材料に適した降伏関数やクレージングの効果も考慮できるモデルが開発されつつあります。
さらに、われ・破断のモデル化の検討も進めています。われや破断を計算が不安定にならずにモデル化できることが重要です。要素を削除する方法が広く用いられているが、メッシュ依存性が大きく、メッシュに依存しないわれ・破断の再現方法が求められています。また、判定方法も重要であり、応力・ひずみ・ダメージパラメータなどで判定するのが一般的ですが、まだ確立された評価方法はできておりません。これらについても弊社で技術開発を進めていく予定です。