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2010.05.06

陰解法機能の特徴と利点

カテゴリー
: 構造解析
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LS-DYNA

一般的に有限要素法には衝撃など動的な現象を得意とする陽解法と静的な現象を得意とする陰解法があります。LS-DYNAは陽解法をベースして開発された経緯もあり、衝撃解析が得意なソルバとして知られておりますが「1つのモデル、1つのソルバを用いてさまざまな現象の解析可能とする」という開発方針のもと陰解法に関する機能も多く実装されております。今回のHow To Use LS-DYNAではLS-DYNA特有の陰解法機能の特徴と陰解法の実行方法をご紹介させていただきます。

陰解法機能の特徴

LS-DYNAの陰解法の最大の特徴は、一般の商用ソルバとは異なり、追加オプションなどを必要とせず、現在お手持ちのモジュール、モデルを用いて陰解法機能が使用可能という事です。そのため、計算実行中の陰解法・陽解法の切替えなどを行うことができ、収束な困難な変形に対しては陽解法を、平衡状態を求めるためには陰解法を用いるといった使用法も可能です。また、衝撃解析で多くの実績のある複数のノードを接続して大規模並列計算が実施可能なMPPと呼ばれる分散並列計算手法にも対応しており、計算時間の短縮はもちろんのこと、1コアあたりが必要とするメモリ量を削減することが可能となっております。図1に並列計算手法による計算時間の違いを示します。多くの陰解法ソルバで活用されているSMPでは4コアあたりで既に並列性能が飽和状態になっていますが、LS-DYNA特有の分散並列計算手法(MPP)では32コア程度まで十分な並列性能が出ていることが分かります。また、図2にはMPPの並列数による1コアあたりの使用メモリの違いを示しています。図2から分かるように、MPPでは並列数を増加させる事で、1コアあたりに必要とされるメモリを減少させることができ、通常の並列計算では困難であった大規模モデルの計算が可能になります。

図1 並列計算手法のよる計算時間の違い 図1 並列計算手法のよる計算時間の違い

図2 MPPの並列数による必要メモリの違い 図2 MPPの並列数による必要メモリの違い

陰解法の実行方法と注意点

先にもご紹介したとおり、LS-DYNAの陰解法機能はお手持ちのモジュールのみでご利用いただくことが可能です。入力データに関しましても、すでにお持ちの陽解法用の入力データに対して、陰解法コントロール用のキーワードを数行追加するだけで、設定が完了となります。

なお、陰解法では陽解法に比べ、拘束条件の処理が厳密になります。そのため、ジョイントの拘束自由度の設定には注意が必要です。また、陰解法では収束計算が必要になるため、倍精度のモジュールでの実行が必要となります。

代表的な陰解法用キーワード

陰解法における代表的なキーワードとその機能概要を次に示します。

*CONTORL_IMPLICIT_GENERAL
陰解法機能を利用するために必須のキーワードとなります。
IMFLAG:陰解法・陽解法の切替えの設定。「1」を設定する事で、陰解法が実行可能。
DT0:1ステップの刻み幅。
*CONTORL_IMPLICIT_SOLVER
剛性方程式の解法を指定するためのキーワードとなります。
LSOLVR:剛性方程式の解法の種類を設定。
LPRINT:線形ソルバに関するメモリ情報出力を設定。
*CONTORL_IMPLICIT_SOLUTION
非線形解析のための各種パラメータを設定するためのキーワードとなります。
NSOLVR:非線形解析の解法の種類を設定。
ILIMIT:剛性マトリックスの更新する反復回数を設定。
DCTOL・ECTOL・RCTOL:変位、エネルギ、残差力の収束判定値を設定。
NLPRINT:変位とエネルギの収束情報出力を設定。
*CONTORL_IMPLICIT_AUTO
自動タイムステップサイズ機能を設定するためのキーワードです。
IAUTO:自動ステップサイズをオンにするかどうかを設定。
DTMIN、DTMAX:最小ステップサイズ、最大ステップサイズを設定。
*CONTORL_IMPLICIT_EIGENVALUE
固有値解析の実行の指定をするキーワードです。
NEIG:1 求める固有値の数を設定。1以上の値を設定する事で、固有値解析を実施。

例題

陰解法・陽解法のスイッチング解析

自動車のルーフパネルの強度解析事例をご紹介します。パネル強度解析は、平板の座屈という非線形性の非常に強い現象を対象としているため、一般の陰解法では収束性などの問題から解を得ることが難しい解析の1つです。ここでは、LS-DYNA特有の陰解法・陽解法の切替え機能を用いることで、ルーフパネルの座屈現象の解析を実現しています。

図3 モデル概要 図3 モデル概要

図4 解析結果

静的陰解法によるボールベアリング回転解析

ボールベアリングの回転解析の事例をご紹介します。回転解析では定常状態における回転の様子と内輪・外輪に作用する応力分布から、ベアリングの耐久強度などの評価を行いいますが、ボール表面の滑らかな形状を表現するための細かなメッシュと高度な接触計算を必要とするため、一般の陰解法や陽解法では非常に困難な解析になります。

図5 モデル概要 図5 モデル概要

図6 解析結果

まとめ

今回はLS-DYNAの陰解法機能の特徴とその使用方法をご紹介しました。1つのソルバで陽解法、陰解法を使用することができるというのはコストの面だけではなく、計算時間・解析精度といった面からも非常に有用なものになります。陰解法実行のための設定に関しましても、非常に簡単なものとなっておりますので、皆様方のモデルでトライしていただけたらと思います。また、解析エラー発生時にも迅速に対応できるよう弊社のサポート体制も充実させておりますので、その折は是非サポートもご活用ください。

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