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CAE Technical Library エンジニアレポート - CAE技術情報ライブラリ

2011.11.01

NUMISHEET2011参加レポート

カテゴリー
: 生産技術解析
関連製品
JSTAMP

NUMISHEETは1989年以来、3年ごとに開催される塑性加工の国際会議です。世界中から多くの塑性加工、特に板成形分野の研究者、ソフトウェア開発者、及びその利用者が参加します。JSOLでは、論文講演、自社開発製品(JSTAMP、JWELD 他)の展示などを行うとともに、この分野の最新テーマや今後の動向についての情報交換をするために参加を続けています。この会議の特徴は、個別の研究テーマに関する論文講演に加えて、主催者より定義されたベンチマーク形式の特別なテーマに関し、応募者の数値シミュレーション結果と実験結果を比較し公開することです。今回、JSOLは全てのベンチマークに応募し、かつ優秀な結果を公開することができました。その成果として、いくつかのベンチマークでは結果を発表するという数少ない機会を与えられました。本レポートでは、会議の概要と、ベンチマークの詳細、およびJSOLの技術者による論文講演内容について報告いたします。

会議概要

Sheraton Walkerhill Hotel

名称:
NUMISHEET 2011
日時:
2011年8月22日(月)〜 8月26日(金)
場所:
韓国ソウルSheraton Walkerhill Hotel
参加者:275名
地域別内訳
  • ・アジア 171名(日本31名、中国30名、韓国97名、インド5名 他)
  • ・欧州 75名(独27名、仏10名 他)
  • ・北米、カナダ 29名
所属別内訳
  • ・教育機関+研究機関 194名(学生 70名)
  • ・産業界 81名
ベンチマーク課題:4件
BM1 - Earing Evolution during Drawing and Ironing Processes
  • 1. To investigate the earing evolution during drawing and ironing processes for advanced material modeling
  • 2. To predict the average cup heights and the required punch load after drawing and ironing processes
BM2 - Simulation of the Cross-shaped Cup Deep-drawing Process
  • 1. To validate the capability of numerical simulation for a warm forming process
  • 2. To investigate the warm forming process including the punch load, the thickness distribution, the temperature distribution and the failure location
BM3 - CAE-based Optimization of Stamping Processes for a Front Side Member
  • 1. To investigate capability of utilizing CAE process for the tool design of an automotive member with high strength steels
  • 2. To develop a CAE process to design the optimum process parameters by inspecting and removing problems, such as tearing, wrinkling, spring-back, and so on, during a press tooling design
BM4 - Pre-strain Effect on Spring-back of 2-D Draw Bending
  • 1. To evaluate the spring-back behavior of advanced high strength steels in multi-step forming processes
  • 2. To investigate the pre-strain effect on subsequent forming and spring-back in 2-D draw bending
講演発表:138件
研究テーマ別内訳
  • ・板成形のための材料構成則 22件
  • ・衝突問題など自動車部品としての適用 8件
  • ・結晶塑性、マルチスケール 11件
  • ・板成形の有限要素にかかわる技法 8件
  • ・板成形における破壊、ダメージ予測 12件
  • ・高温プレス 8件
  • ・ハイドロフォーミング 6件
  • ・材料試験 16件
  • ・プロセス設計、最適化 28件
  • ・スプリングバック 19件

ベンチマーク結果

当社は、主催者から出題されたベンチマーク課題4件全てを実施し、いずれも好成績を収め、ベンチマークのセッションにて2件の講演を行いました。この結果、多くの参加者から 当社の技術に注目が集まり、JSTAMP の評価を高めることができました。

ベンチマーク 1

BM1 - Earing Evolution during Drawing and Ironing Processes
http://www.numisheet2011.org/index.html?Pagenum=51

缶の製造工程において、絞り工程で耳が発生し、しごき工程で耳が消えるという現象が発生しますが、ベンチマーク1では絞り後としごき後の耳の形状の変化と成形時のパンチ荷重を予測します。材料はアルミと鉄の2種類が対象となっており、耳の予測にあたっては異方性を表現できる材料モデルの選定が鍵となります。

多くのベンチマーク応募者は、異方性が強く8つの耳が出ると報告されていたアルミ材について、CPB06ex2、Barlat2000、Yld2004-18p といった高次降伏関数を採用したようです。当社は Gotoh の4次降伏関数と吉田−上森モデルを組み合わせた材料モデルを開発し、8つ耳の予測に取り組みました。

主催者によるベンチマーク結果報告によると、絞り成形後としごき成形後の耳の形状を精度良く予測できた応募者はわずかであったとのことです。当社のシミュレーション結果はアルミ材の耳の発生位置と形状を精度良く予測し、アルミ材のパンチ荷重履歴の予測結果に関しては主催者より最上位の評価を得ることができました。

図2 アルミ材の耳の形状 図2 アルミ材の耳の形状

ベンチマーク 2

BM2 - Simulation of the Cross-shaped Cup Deep-drawing Process
http://www.numisheet2011.org/index.html?Pagenum=52

ベンチマーク2ではマグネシウム合金(AZ31B)を温間で十字型のカップに深絞り成形するモデルの解析を行ないます。マグネシウムは軽量でかつ高強度であるということから、近年、注目を集めている材料の一つです。マグネシウムは、その結晶構造の特徴から、常温での成形性はよくありませんが、高温下では成形性が飛躍的に向上することが知られています。本ベンチマークでは、熱伝導―構造連成となる温間プレスのシミュレーションを行い成形荷重曲線、ブランクの板厚、温度分布、概形、成形限界(破断箇所)を予測します。

シミュレーションに必要なマグネシウム合金の材料物性は原則、主催者から提供されたものを使用します。提供されるデータとしては各温度、ひずみ速度ごとの応力−ひずみ曲線や各温度におけるR値があります。マグネシウムの強度は上で述べた温度や、ひずみ速度の影響が大きく、さらに異方性をどのようにして考慮するかということがこのベンチマークの重要なポイントといって良いでしょう。

当社はJSTAMPのホットフォーミング機能を使用し、温間プレスのシミュレーションを実施しました。その結果は、主催者による実験結果を非常に高い精度で予測し、多くの参加者から高い注目を集めることができました。特に成形限界の予測に関し、ベンチマーク応募者のうち当社は唯一ブランクの破断箇所を正確に予測することができ、JSTAMPのシミュレーション精度の高さを確認することができました。

図3 ブランクの破断個所 図3 ブランクの破断個所

図4 JSOL 天石の発表 図4 JSOL 天石の発表

ベンチマーク 3

BM3 - CAE-based Optimization of Stamping Processes for a Front Side Member
http://www.numisheet2011.org/index.html?Pagenum=53

ベンチマーク 3ではハイテン材フロントサイドメンバについて、われ・しわ・スプリングバックなどの成形不良・精度不良を抑える最適な成形条件を、CAEにより最適化設計します。初期ブランク形状とホルダー荷重が最適化設計パラメータとなっており、スプリングバック後の製品形状の予測精度と共に、最適化プロセスの計算時間と効率化も考慮すべき重要なポイントとなります。

主催者から提供された成形条件には、最適化設計パラメータである初期ブランク形状とホルダー荷重は含まれておらず、ベンチマーク応募者が決定しなければなりません。この課題に対し、当社は JSTAMP と最適化ソフトウェアの HEEDS を使用して最適化計算を実施しました。

当社のシミュレーション結果ではしわの発生が予測されましたが、主催者による実験においてもしわが発生したとのことでした。また、スプリングバック結果は実験結果と良く一致し、JSTAMP と HEEDS の高い予測精度が確認され、主催者からも高い評価を得ることができました。

図5 スプリングバック形状の形状誤差 図5 スプリングバック形状の形状誤差
出典)PART C BENCHMARK PROBLEMS AND RESULTS 166頁

図6 JSOL 具の発表 図6 JSOL 具の発表

ベンチマーク 4

BM4 - Pre-strain Effect on Spring-back of 2-D Draw Bending
http://www.numisheet2011.org/index.html?Pagenum=54

予ひずみは成形性とスプリングバックに影響を及ぼすため、特にハイテン材のスプリングバック予測においては、予ひずみを考慮することが重要になります。ベンチマーク 4では DP780 ハイテン材について、予ひずみの有無によるスプリングバック変形の違いを予測・評価します。

また本ベンチマークではスプリングバックの高精度予測のために、繰返し応力-ひずみ挙動を表現する材料構成式の適用と、ヤング率の塑性ひずみ依存性の考慮が重要になります。主催者によるベンチマーク報告書によると、ベンチマーク応募者は降伏関数に Hill48, Yld2000-2d, Von Misses、また硬化則には吉田-上森モデル、等方硬化と移動硬化を組み合わせた複合硬化則のいずれかを採用したようです。

当社は Hill48 と吉田-上森モデルを使用して、この課題に取り組みました。また吉田-上森モデルのパラメータ同定には、材料パラメータ同定ソフトウェアの MatPara を使用しました。この結果、予ひずみのなし・ありいずれにおいても、スプリングバック結果は実験結果と良く一致し、主催者からは上位の評価を受けました。

図7 スプリングバック形状の比較(予ひずみあり8%) 図7 スプリングバック形状の比較(予ひずみあり8%)
出典)PART C BENCHMARK PROBLEMS AND RESULTS 223頁

論文講演

当社は以下の2件の一般講演を実施いたしました。これにより、海外に向けて JSTAMP の情報を発信し、国際的なネットワーク構築を図ることができました。

Development and Application of Non-linear Friction Models for Metal Forming Simulation
LS-DYNAのユーザーサブルーチンとして非線形摩擦モデルの開発を行い、角筒絞りへの適用結果を報告しました。(株式会社JSOL 杉友宣彦)
Springback Simulation and Compensation for High Strength Parts Using JSTAMP
JSTAMP による 440〜980MPa級ハイテン材のスプリングバック予測と、その金型見込み結果を報告しました。(株式会社JSOL 進藤晃成)

図8 JSOL 杉友の発表 図8 JSOL 杉友の発表

図9 JSOL 進藤の発表 図9 JSOL 進藤の発表

展示ブースにて

板成形分野のソフトベンダーが展示ブースを出展する中、当社も展示ブースを構え、自社開発製品であるJSTAMPやJWELDの紹介を行いました。会場が韓国ソウルということもあり、特に韓国や中国の教育機関・研究機関関係者から多くの注目を集めました。当社としては今後も日本国内だけでなく世界に向けた情報発信を積極的に行なっていきたいと考えています。

出展製品
・プレス成形シミュレーションシステム「JSTAMP
・構造物の溶接変形シミュレーションソフトウェア「JWELD

図10 JSOL 展示ブース 図10 JSOL 展示ブース

出典
  • [1] Kwansoo Chung, Heung Nam Han, Hoon Huh, Frederic Barlat, Myoung-Gyu Lee, THE 8th INTERNATIONAL CONFERENCE AND WORKSHOP ON NUMERICAL SIMULATION OF 3D SHEET METAL FORMING PROCESSES (NUMISHEET 2011), AIP CONFERENCE PROCEEDINGS 1383
  • [2] Hoon Huh, Kwansoo Chung, Soo Sik Han, Whan Jin Chung, The NUMISHEET 2011 Benchmark Study of the 8th International Conference and Workshop on Numerical Simulation of 3D Sheet Metal Forming Processes, PART C BENCHMARK PROBLEMS AND RESULTS

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