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2018.8.30

材料設計のためのミクロ構造の作成とシミュレーション

カテゴリー
: 技術情報
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Digimat / J-OCTA / Simpleware Software / LS-DYNA

多くの材料は複数の混合物からできており、ミクロなスケール(nm〜μm)で複雑な形状を形成しています。たとえば、樹脂複合材料(微粒子、分散繊維、連続繊維)、樹脂・合金の相分離・結晶構造、空隙や欠損を含む材料などがこのような材料の代表例です。
これらの材料ではミクロな構造がその特性・物性に大きな影響を及ぼすことが知られています。しかし、スケールが小さいことから、実験のみでは現象の理解や理想的な構造の探索・設計が難しいという問題があります。そこでJSOLでは、材料の一部分を切り出したミクロ構造をコンピュータ上で作成し、シミュレーション技術により材料特性・物性を評価する、材料設計ソリューションを提供しています。

今回のCAEブログでは、材料のミクロ構造作成から有限要素法などによる解析、材料特性の評価に適したプロダクトの使い分けを紹介します。

1. ミクロ構造の作成

ミクロスケールの解析を行うには、最初に、材料の一部分を切り出したミクロ構造をコンピュータ上で作る必要があります。このミクロ構造を代表体積要素(Representative Volume Element: RVE)と呼びます。複数のプロダクトを使い分けることで、目的に適したRVEの作成が可能です。
Synopsys社のSimplewareソフトウェアを用いることで、実材料のCTスキャンやFIB-SEMなどで得られた画像データをもとに、3次元構造をコンピュータ上に再現することができます。実物に即したモデルを用いるため、内部構造統計分析にも活用でき、現象の理解に役立てることができます。

実材料からCTスキャンで取得した繊維の構造
実材料からCTスキャンで取得した繊維の構造

Digimatを用いることで、繊維長やコンポジットの体積分率などが指定された仮想的なミクロ構造を簡単に作成することができます。凝集、繊維の配向や織構造、界面厚などの特徴を次々と変更していくことが可能なため、理想的な構造を探索するような数値実験に適しています。

Digimatで作成した合金のミクロ構造
Digimatで作成した合金のミクロ構造

相分離した樹脂中のカーボンナノチューブの分散構造
J-OCTAで計算した相分離した樹脂中の
カーボンナノチューブの分散構造

J-OCTAを用いることで、成分間の化学的な相互作用を考慮しながら、フィラー分散や樹脂・ゴムの相分離構造などを予測することができます。高充填のフィラー分散構造を作り出すことも可能です。

2. 有限要素法シミュレーションのためメッシュ作成

最終的なシミュレーションに有限要素法を用いる場合、上記で作成したミクロ構造に対するメッシュデータを作成する必要があります。
Simplewareソフトウェアを用いることで、複雑に入り組んだ構造も、画像からダイレクトにメッシュを自動作成することができます。Simplewareソフトウェアで作成したミクロ構造に限らず、構造が複雑であるために他のソフトウェアではメッシュを作成できないSTLファイルなどを用いたメッシュ作成も可能です。
Digimatにもメッシュ作成機能が含まれています。Digimatで作成したミクロ構造であれば、簡単な操作で界面領域も含めて自動的にメッシュを作成することができます。さらに、J-OCTAで予測したフィラー分散構造をインポートして、メッシュを作成することも可能です。

Digimatで作成したメッシュ構造
Digimatで作成したメッシュ構造

3. シミュレーションによる材料特性・物性の評価

最後に、材料の特性・物性予測や現象理解のためのシミュレーションを実施します。まず、上記で用意したメッシュデータを用いた有限要素法シミュレーションが可能です。
Simplewareソフトウェアには弾性体の力学特性、熱・電気伝導、多孔質中の浸透などのシミュレーション機能が含まれており、材料全体の均質化物性を評価することができます。J-OCTAでも弾性体の力学特性、熱伝導の評価などが可能です。
さらにDigimatを用いることで、塑性や破壊までを考慮した複雑な力学特性、熱・電気伝導などのシミュレーションが可能になります。LS-DYNAにはさらに多くの材料モデルを内包しており、またSPGやEFGを含むメッシュフリー法など高度な離散化機能によって、より複雑な現象を扱うことができます。ここで、Jvisionを用いることで、LS-DYNA用の各種パラメータを簡単に設定することができます。

CFRP(断面)の破壊計算
CFRP(断面)の破壊計算

ミクロ構造がnmサイズの場合、有限要素法ではなく、J-OCTAを用いた分子シミュレーションのほうが適している場合があります。樹脂・ゴムのようなポリマーとフィラーの間の相互作用や、ポリマー形状の変化が物性に影響を及ぼす様子を確認する場合などに、特に効果的です。

分子シミュレーションによるゴム中のフィラー分散構造
分子シミュレーションによるゴム中のフィラー分散構造

今回ご紹介したソリューションにご興味がございましたら、こちら からお気軽にご連絡ください。

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