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CAE Technical Library エンジニアレポート - CAE技術情報ライブラリ

2018.9.27

ユーザーサブルーチンの組み込み:
UMMDpへの取り組みとplug-insの作成
- NUMISHEET2018 発表報告 -

カテゴリー
: 技術情報 / セミナー・イベント
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LS-DYNA / JSTAMP

LS-DYNAには、ユーザー独自の材料モデルを組み込める「ユーザーサブルーチン」機能が実装されています。求める材料モデルが未実装である場合などに役立つ機能ですが、ソフトウェア独自の作法の理解とプログラミング知識が必要となるため、組み込みは容易ではありません。そこで、非線形CAE協会・解析モデリング分科会により提案されたのが、特に板材成形解析で重視される異方性降伏関数を組み込むサブルーチン(ライブラリ)「UMMDp(Unified Material Model Driver for plasticity subroutine library/塑性サブルーチンライブラリ用統一材料モデル)」です。JSOLは、この「UMMDp」とLS-DYNAの橋渡しをするplug-insを作成しました。

NUMISHEET2018では、『Development of plug-ins for bridging variables between advanced finite element codes and 'UMMDp'』(有限要素コードとUMMDp連携プラグインの開発)と題して、「UMMDp」用プラグインの組み込み方法とプラグインの動作確認を題材に発表しました。今回はNUMISHEET2018での内容内容を踏まえ、UMMDpやplug-insの詳細について報告します。

UMMDp:異方性降伏関数の組み込みサブルーチン

UMMDpは、複数の汎用構造解析ソフトウェアで利用できる異方性降伏関数の組み込みサブルーチンライブラリです。異方性降伏関数は、圧延によって製造される板材の塑性変形挙動を解析するためのもので、ソフトウェアを用いた板材成形の数値計算において非常に重要です。UMMDp(およびplug-in)を利用することで、ユーザーはソフトウェア独自の作法に縛られることなく、任意の異方性降伏関数を用いて板材成形解析を精度良く解くことができます。

ソフトウェアとUMMDpの連携プラグイン

UMMDpの利用には、ソフトウェアが計算した応力増分(入力)とUMMDpが計算したひずみ増分(出力)それぞれの受け渡し、つまり、汎用構造解析ソフトウェアとUMMDpの橋渡しをする「plug-ins」が必要です。
「plug-ins」は、ユーザーサブルーチン以上にソフトウェア固有の作法への理解が必要となるため、その作法を熟知しているソフトウェアベンダーが作成する必要があります。JSOLはLS-DYNAとUMMDpをつなぐplug-insを開発しました。発表では、このplug-insの組み込み方法を詳細に説明しました。

LS-DYNA固有のサブルーチンや変数に多数言及しており内容が非常に煩雑となるため、詳細を確認されたい場合は、次のURLから掲載論文を参照してください。
http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742-6596/1063/1/012100/pdf

プラグインの検証

実際にplug-insが正常に動作しているかどうかは、既存の材料モデルを用いた場合の結果と比較することで確認できます。UMMDpは異方性降伏関数に特化したサブルーチンであるため、異方性塑性を扱える材料モデルで検証する必要があります。今回は、LS-DYNAに組み込まれているYLD2000-2d(*MAT_133/Barlat 2000 降伏モデル)とUMMDpを利用したYLD2000-2dを比較しました。

UMMDpとLS-DYNAの結果比較:球頭絞り
UMMDpとLS-DYNAの結果比較:球頭絞り

UMMDpとLS-DYNAの結果比較:S字レール
UMMDpとLS-DYNAの結果比較:S字レール

上記の結果を見てお分かりいただけるとおり、完全に同じにはならないものの、異方性の影響はほぼ捕らえられており、実用問題にも適用できます。また、以下に示すように、要素プロセッシングにおいて大幅に計算速度が低下することもなく、実用に耐えうるクオリティと考えています。

計算速度の比較
計算速度の比較

ソフトウェア研究

わたしたちJSOLは、ソフトウェアベンダーとしてのソフトウェアの販売、サポートなどの活動にとどまらず、ソフトウェアをより深く理解し、活用の幅を広げるために、アカデミックな分野においても研究・研さんを重ねています。UMMDpは組み込みのための研究用(スタディー)として開発され、われわれソフトウェアベンダーとしてもサポートをお約束しているものではありません。ただ、内容をご理解いただくことで、ソフトウェアへの降伏関数の組み込み方を理解するにはこれ以上ない有用な資料となると思います。組み込みには、最低限のプログラム言語(Fortran)への理解が必要となりますが、ユーザーサブルーチンを使うことに対する垣根は大きく下がっているはずです。
興味がある方は、ぜひ、ダウンロードして使ってみてください。

UMMDpは、非線形CAE協会・解析モデリング分科会の取り組みの一環として作成しました。JSOLは解析モデリング分科会のベンダー委員として参画しています。
非線形CAE協会・解析モデリング分科会
UMMDpダウンロードページ
※ご利用には、Intel Fortranコンパイラーが必要となります。バージョン等ご不明な場合はお問い合わせください。

ユーザーサブルーチンについて
通常、ユーザーサブルーチンは、LS-DYNAが計算したひずみ(増分)などの情報から応力(増分)を計算するためのコードを、ユーザー自身が記述して作成します。JSOLでは、2018年6月にユーザー定義の材料モデルを題材に「LS-DYNA トピックスセミナー 第5回 ユーザー定義材料モデル編」を開催しました。LS-DYNAのユーザーサブルーチンの実装方法にご興味のある方は、こちら からセミナーの資料をご確認いただけます(ユーザー限定)。

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