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2018.10.11

繊維強化樹脂のプレス成形解析
- LS-DYNA Conference 2018 JSOL講演5 -

カテゴリー
: 技術情報 / セミナー・イベント
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LS-DYNA / J-Composites

15th LS-DYNA Conference でJSOLが発表した講演の内容を紹介します。

今回とりあげるのは、「熱可塑性CFRPのプレス成形解析とJ-Compositesの紹介」についての講演です。
軽量・高強度化のキーマテリアルとして、自動車をはじめとしたさまざまな産業で繊維強化樹脂(FRP)の適用が拡大しています。中でも、連続繊維FRPのプレス成形工法は、繊維の機械特性を最大限に生かしつつ、量産にも適する成形技術として知られています。
発表では、連続繊維FRPのプレス成形中の挙動を正確に予測するための解析技術に加えて、JSOLが開発したJ-Compositesシリーズのうち、プレス成形解析のモデル作成ツール「Form Modeler」について紹介しました。

プレス成形中のFRP挙動を正確に予測するための解析技術

プレス成形中の成形不良を解析で事前に予測し、成形条件を最適化することは、開発期間・コストの削減にとても有効です。連続繊維FRPのプレス成形における代表的な成形不良として、しわがあります。しわはプレス成形中の材料変形が面内から面外に分岐することで生じる不良であり、この挙動を正確に解析するには、材料の面内および面外挙動に加えて、積層材の層間のすべり挙動を正確に表現することが重要になります。
連続繊維FRPシートのプレス成形時の面内および面外の挙動を正確に表現するため、JSOLではシェル−膜複合モデルを開発しました[1]。面内特性とは異なる、独立した面外の曲げ特性を正確に表現するこのモデルは、J-Composites/Form Modelerで作成できます。また、成形時のシート層間には高温の樹脂が存在するため、構造解析で一般的に用いられるクーロン摩擦モデルではその挙動を正確に表現できません。そこで、樹脂の粘性摩擦および粘着・剥離を考慮する新しい接触摩擦モデル(COMPOSITEオプション)がLS-DYNAに追加されました。
シェル−膜複合モデルおよびCOMPOSITEオプションを用いることで、プレス成形時の材料挙動を高精度に予測可能になります。

層間モデリングのための接触COMPOSITEオプション
図1. 層間モデリングのための接触COMPOSITEオプション

J-Composites / Form Molder の紹介

FRPプレス成形解析のモデル作成ツールForm Modelerは、材料データを作成・管理する「Material-DB」、積層定義する「Lay-up Modeler」、繊維結果の引き継ぎを行う「Lay-up Mapper」の3つの機能を提供します。JSOLの解析ノウハウを取り入れた高精度な解析モデルを、自動セットアップ機能により効率的に作成することができます。

Form Modelerの主な機能
図2. Form Modelerの主な機能

Form Molderの次期バージョン(Ver.2.0)では、
・標準材料データベースの拡充(公開論文情報・材料メーカー様との協業)
・成形中の温度変化を考慮した解析モデル(熱構造連成解析モデル)の自動作成機能
・ワンステップ逆解析による成形性の簡易評価機能
などの機能拡張・追加を予定しています。Ver.2.0は2019年1月リリース予定です。

インクリメンタル解析(詳細解析)とワンステップ逆解析(簡易解析)の比較
図3. インクリメンタル解析(詳細解析)とワンステップ逆解析(簡易解析)の比較

J-Composites / Form Molderによる解析事例

Form Modelerを用いた、熱可塑性GFRPシートのホットプレス解析の事例です。熱構造連成解析により成形中の温度変化および温度変化による材料特性の変化を考慮するとともに、COMPOSITEオプションを用いて層間のすべり挙動を正確にモデル化しました。図4には、実験(上)とCAE(下)のプレス成形後の変形の比較を示します。実験では、成形後の変形を観測するため、プレス成形前のFRPシートに白色の直交グリッドを描き、成形を行っています。このように、繊維の方向を変化させて成形した際の実験の変形挙動をよく再現できていることを確認しました。

熱可塑性GFRPシートのホットプレス解析事例
図4. 熱可塑性GFRPシートのホットプレス解析事例

FRPプレス解析へのCAEの適用

J-Composites/Form Modelerで作成するシェル−膜複合モデルとCOMPOSITEオプションの利用により、プレス成形実験の連続繊維FRPシートの挙動をLS-DYNAで精度よく再現できることを確認しました。一般的なシェル要素や膜要素では困難だったしわ発生を含む成形中の材料挙動がCAEで予測可能になり、最適な成形条件を探索することで開発期間・コストの削減に貢献します。
今後、J-Compositesシリーズではさらなるツールの開発を計画しています。

[1] 西正人, 鏑木哲志, 黒瀬雅詞, 平島禎, 倉敷 哲生, “有限要素法による織物強化熱可塑性樹脂のプレス成形解析”, 日本機械学会論文集, Vol.80, No.820, (2014)

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