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2018.10.23
エアバッグ折り畳み事例とJFOLD最新情報(前編)
- LS-DYNA Conference 2018 JSOL講演6 -
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15th LS-DYNA Conference で講演したJFOLDの最新開発情報と、エアバッグ折り畳み事例を紹介します。
近年のエアバッグは、自動車乗員が通常の着座位置にないアウトオブポジションの問題や、エアバッグ展開方向の不正確さ等の複雑な問題に対応できる性能が求められています。これらをシミュレーションするためには、より精度の高いエアバッグモデルが必要となります。エアバッグ折り畳み形状において高精度モデルを得る1つのツールとしてJFOLDがあります。講演では、カーテンエアバッグ(CAB)とパッセンジャーエアバッグ(PAB)の高精度モデル作成事例を紹介しました。CABは車体のルーフサイドラインに沿う形で組み付けられている乗員保護具であり、PABはインパネの内部に格納する形で取り付けられている乗員保護具です。いずれも折り畳み後のエアバッグ形状が複雑で高精度モデル作成が困難です。これら複雑形状のモデルにおいて、JFOLDを使用することで、高精度なエアバッグモデルを作成することができました。
前編では、JFOLDの機能・最新開発情報とCABの折り畳み事例の詳細を説明いたします。後編のPABの折り畳み事例は、次回以降のエンジニアレポートで紹介します。
JFOLDの機能・最新開発情報
高精度エアバッグモデルに求められる1つの性能として、エアバッグの折り畳み後の形状が実物に近いことが挙げられます。JFOLDはこのニーズに対応するために開発され、折り畳み前のエアバッグ形状をインプットとし、折り畳み工程を順次シミュレーションベースで実施することで、折り畳んだエアバッグ形状を得るソフトウェアです。JFOLDは、ARUP softwareのプリプロセッサーPRIMERのJavaScriptとして動作します。エアバッグの各折り畳み工程はLS-DYNAを用いて計算します。
JFOLDはエアバッグの折り畳み工程をフローチャートで管理する機能が実装されており、さまざまな折りパターンのエアバッグモデルを作成することができます。
JFOLDには、実機の折り畳みツールをモデル化したツール機能が実装されており、以下のツールをツールライブラリーから使用できます。
- ・荷重負荷ツール
- ・並進・回転運動をもつツール
- ・基布の拘束ツール
- ・基布の縫製ツール
- ・複雑な折り畳みをするツール(例:ジグザグ折り)
- ・標準サイズのインフレーターモデル
さらに、
- ・折り畳みに適したオリジナルのツールモデル作成・ライブラリーへの追加
- ・ツールライブラリー作成
- ・折り畳み工程間でのツールモデルのコピー・再利用
等が可能です。
次回リリースされるJFOLD v5では、より精度の高いエアバッグモデル作成ができるように、展開時の引っかかりの原因となる接触のめり込み数(クロスエッジ数)を各時刻でレポートする機能や、より簡便にエアバッグモデルの形状変更ができるようにモーフィング機能等を実装する予定です。
折り畳み事例:カーテンエアバッグ(CAB)
CABはルーフのサイドラインに沿うような形で車体に組み付けられている自動車乗員保護具です。実物のCABは、上図の形状からロールして細長い筒状にし、それを車体のルーフサイドラインに沿うように曲げることで折り畳まれ、車体に取り付けられます(下図参照)。この折り畳み工程を、JFOLDを使用してシミュレーションで再現することでCABの計算モデルを作成することが可能です。
以下は典型的なCABデザインです。
図1. CABの折り畳み前の典型的なデザイン(上)と車体組み付け位置(下)
この展開後の形状から、JFOLDとLS-DYNAを用いてJFOLDでCABの折り畳みを実施し、折り畳み後の形状を得た例を示します。
※各STEP間で「COPY」機能を使って形状をコピーし、前工程の最終形状を次工程の初期形状として使用します。
- STEP 1:ロール
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- ・チューブ状ツールに、
回転運動のみを設定 - ・チューブ状ツールと重なるCAB節点を剛結
- ・フラットパネルでCABの基布を
挟みこみ、基布を平らにする - ・ツールを回転して基布をロール形状にする
シワがよらない、
きれいなロール形状 - ・チューブ状ツールに、
- STEP 2:折り
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- ・ロール工程の最終形状をコピー、
折り工程の初期形状として利用 - ・プレートツールを2つ導入
- - タブ・インフレーター挿入部と
剛結するプレートツール - - タブとロール部の間のプレートツール
- - タブ・インフレーター挿入部と
- ・2つのプレートツールそれぞれに
回転・並進運動を定義 - ・基布に圧力をかけて折り畳み
シワがよらない
折り畳み形状 - ・ロール工程の最終形状をコピー、
- STEP 3:フィット
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- ・前工程の最終形状を初期形状として利用
- ・エアバッグ参照形状をひと回り小さくしたラップカバー(図のピンク色)を導入
- ・ラッパーフィッティングを実行
- ・ラップカバーは参照形状に戻ろうとするため、エアバッグを緩みなく引き締め
エアバッグのフィット
- STEP 4:インフレーター挿入
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- ・前工程の最終形状を初期形状として利用
- ・平坦なインフレーター(最終形状は3D)を導入
- ・インフレーター挿入部のポケット部分にインフレーターを配置
- ・インフレーターを膨らませる
インフレーター挿入
- STEP 5:シュリンクフィッティング
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- ・前工程の最終形状を初期形状として利用
- ・実機のCAB収納スペースを模擬したパッケージツールを導入
- ・シュリンクチューブを2つ導入
- ・チューブにはパッケージにフィットする参照形状を定義
- ・ケーブルツールでCABを引っ張って緑色のパッケージに近づけて
シュリンク
CABがパッケージ位置に収まる
- STEP 6:展開
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- ・粒子法を使ったLS-DYNA計算で展開形状を確認(上図)
- ・圧力分布を確認(下図)
CABの展開は良好
CABの展開形状をインプットとして、JFOLDを使って折り畳み後の形状をアウトプットとして得ることができました。折り畳み後の形状からエアバッグが開く過程をLS-DYNAで検証することで、折り畳み形状の妥当性を確認しました。
総括
JFOLDを使用した、高精度エアバッグモデル作成事例の紹介をしました。ルーフラインに沿うような形で組み付けられるCABやインパネ内部に格納されるPABのように折り畳み後の形状が複雑なエアバッグにおいて、JFOLDを使用することで、高精度モデルを作成することができます。
JFOLDの最新開発情報とCAB/PABの解析事例は、2018年11月1日(木)に開催する LS-DYNAテクニカルセミナー で詳細を紹介します。
JFOLDは、ユーザーのフィードバックとリクエストに基づき、さらなる機能拡張を計画しております。
JFOLDについてご質問や機能のご要望がありましたら、こちら からお問い合わせください。