お問い合わせ

CAE Technical Library エンジニアレポート - CAE技術情報ライブラリ

2018.12.13

二次電池のためのシミュレーション(前編)

カテゴリー
: 技術情報
関連製品
LS-DYNA

自動車産業では、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド電気自動車)への移行が世界的に進んでいます。これらの駆動用に適用される二次電池は、現在主流のリチウムイオン電池から将来的には全固体電池にシフトしていくものと考えられますが、二次電池の利用そのものは今後大きく増加することが見込まれます。自動車の駆動用二次電池は、乗員に対し比較的近くに配置されることも多く、衝突時に万が一発火に至ると、生命にかかわる事故となると同時に、市場に与えるインパクトは大きいものになります。そのため、電池単体、および、製品へ実装された状態での安全性評価は、自動車産業において取り組むべきテーマのひとつです。

今回のエンジニアレポートでは、二次電池に関する解析、特にLS-DYNAを用いた安全性評価のための解析を中心にとその例をご紹介します。

1.機能実装の背景

LS-DYNAの開発元に、このような二次電池の安全性をターゲットにしたシミュレーションの相談が持ち込まれ、最初に機能実装がなされたのは2015年のことです。背景には、 CAEBAT(Computer-Aided Engineering for Electric-Drive Vehicle Batteries/電気自動車用電池におけるCAE技術の活用)とよばれるプロジェクトが米国エネルギー省傘下のNREL(National Renewable Energy Laboratory/国立再生可能エネルギー研究所)で立ち上がったことが関係しています。これは次世代バッテリーの開発のためのCAE技術を開発するためのプロジェクトで、2011年から3年間、約1400万ドル(うち、700万ドルはNRELがアワードとして供与)の予算で始まり、後にCAEBAT-2、CAEBAT-3と続いています。現在でも、関連する新しい機能が追加されるなど、盛んに開発が行われています。

2.機能の概要

LS-DYNAにおける電池の解析機能の基本となる部分をご紹介します。 まず、電池を構成する各層は有限要素でモデル化され、熱構造連成解析に使用されます。ここで、正極と負極の集電体の各節点間をRandles回路と呼ばれる等価回路を用いて二次電池を簡易的にモデル化します(図1)。これにより、集電体の要素では電磁場解析機能の抵抗加熱ソルバーにより電流とジュール熱が計算されます。このように、電池内部で生じる電気化学的な物理現象を等価回路で表現する手法は一般的に行われてきましたが、節点同士をつなぐ回路を3次元的に配置して電池をモデル化することで、電極などの構造部材の変形を追随しながら電池内の電流分布を巨視的に計算することが可能です。

図1 電池のモデル化の例(ラミネートタイプ、厚さ方向拡大)
図1 電池のモデル化の例
(ラミネートタイプ、厚さ方向拡大)

3.電池の放電解析

最初に、簡単な解析として電池の放電解析を取り上げます。 電池に一定の電流を流したときに、放電に伴い電圧が下がっていき、SOC(State of Charge/充電率)がゼロに近づくと急激に下がる様子が表現可能です。さらに、電池内の温度分布や電流分布を可視化することができます。

図2 放電時の温度分布と電流密度ベクトル分布(上)
図2 電圧履歴の例(下)
図2 放電時の温度分布と電流密度ベクトル分布(上)と
電圧履歴の例(下)


このケースでは、電池内部の温度の拡散を熱解析で、電流分布を電場解析で求める連成問題としています(厳密には、構造解析も行いますがここでは剛体化して固定)。
これにより、まずは使用状態にある電池を解析で再現できました。

次回のエンジニアレポート では、この機能を踏まえてLS-DYNAの特徴である構造解析による電池の変形と、それに起因する内部短絡の解析をご紹介します。

*CONTACT

お問い合わせ

電話でのお問い合わせ:03-6261-7168 平日10:00〜17:00

※ お問い合わせページへアクセスできない場合

以下のアドレス宛にメールでお問い合わせください

cae-info@sci.jsol.co.jp

ページトップへ