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二次電池のためのシミュレーション(後編)

カテゴリー
: 技術情報
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LS-DYNA

前回のエンジニアレポート で、電池の基本的なモデル化と放電解析の事例をご紹介しました。今回は、前回の冒頭で述べた電池の安全性に関わる内部短絡のシミュレーションと、更にLS-DYNAのマルチフィジックス解析を更に活用した電池の冷却解析をご紹介します。

4.電池の短絡解析

はじめに、内部短絡機能について簡単にご説明します。
Randles回路を用いた電池モデルに対し、衝突により電池が変形したとします。前回の図1 に示したモデル化された電池は、従来のLS-DYNAの構造解析のための機械特性も定義されていますので、変形が計算できます。また、電流により発生するジュール熱は、熱ソルバーに渡されます。電池が変形し、電極間の距離がある条件を満たすと、Randles回路の内部短絡機能により、大電流が局所的に流れ、温度があがるという現象を再現することができ、これにより内部短絡の評価検討を行えます(図3)。

図3 内部短絡の表現モデル
図3 内部短絡の表現モデル

この機能は主に、電池製造後の単体としての安全性評価、および製品へ実装された状態での安全性評価への適用が考えられます。UN/ECEやGB/Tなどの規定や法規では、外部短絡や圧潰試験、衝撃試験や釘刺し試験などの安全性評価の指標が定められています。下の図4は、バッテリセルが複数搭載されたシステムの状態で、圧潰試験による内部短絡〜熱暴走の可能性の評価を行うようなケースを想定したシミュレーションの例です。また、特に自動車衝突の領域では、市場における事故の可能性を考慮した、独自の評価を行うことも考えられます。JSOLではこれらのケースに対応できるよう、技術構築に取り組んでいます。

図4 バッテリシステムの圧潰解析例(温度分布と電流密度ベクトル)
図4 バッテリシステムの圧潰解析例
(温度分布と電流密度ベクトル)

5.電池の冷却解析

たとえば、運用時の冷却性能も評価すべき項目になります。LS-DYNAには、熱流体解析の機能も備わっており、既にご紹介した電池のモデルと組み合わせることにより、電池が動作している状態での冷却解析を行うことが可能です。流体そのものの流れと圧力、温度分布を計算することにより、現実に近い冷却性能の評価を検討することも可能です。このような高度なマルチフィジックス問題も、標準のLS-DYNAモジュールのみで実行できます。

図5 バッテリの冷却解析例(温度分布と電流密度ベクトル)
図5 バッテリの冷却解析例
(温度分布と電流密度ベクトル)

6.JSOLの取り組みの方向性

二次電池は、原料から開発設計、製造、製品への実装・運用に至るプロセスを考えたとき、さまざまなプロセスでシミュレーションの活用が期待されています。また、シミュレーションを考えた時、取り扱うべき物理は多岐にわたり、スケールも広範囲にわたります。
たとえば開発の段階では、電極のメカニズム解析や材料設計のために、ミクロスケールでのシミュレーション技術を用いることが考えられます。また、実際に試作した電極を画像測定し、充放電特性のシミュレーションに生かすことも考えられます。LS-DYNAを含む当社の取り扱いソフトウェアを用いて、およびこれら複数のソフトウェアを組み合わせることで、さまざまな現象を解析によって表現することができます。詳細は以下をご参照ください。
EV/HEV開発を支えるCAEソリューション

JSOLは二次電池をはじめとする、EV/HEV関連のシミュレーション技術をご提供することにより、お客様の開発・設計の更なる効率化に貢献してまいります。

今回ご紹介したソリューション、および関連して解析が可能か検討されたい課題がございましたら、こちら からお気軽にお問い合わせください。


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