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IGAの学会トレンドと最新の話題

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近年、新しい解析手法の1つとして、Isogeometric Analysis(IGA)が、ヨーロッパやUSを中心に研究されています。IGAは、Design(CAD)とAnalysis(CAE)の親和性を高める手法であり、学界にとどまらず産業界においても今後の動向が注目されています。
今回のエンジニアレポートでは、Isogeometric Analysis(IGA)の概要についてご紹介するとともに、2018年10月10日(水)~12日(金)にTexas University Austin校のキャンパスにて開催されたIGA Conference 2018の参加報告を通して、IGAの学界におけるトレンドと最新の話題を紹介します。

Isogeometric Analysis(IGA)とは

IGAは、Design(CAD)とAnalysis(CAE)の親和性を高める新しい解析手法として、2005年にT. J. R Hughes、Yuri Bazilevsらの研究グループにより提案されました。本手法ではメッシュ生成による離散化を必要とせず、CADの形状生成で用いられるNURBS とよばれる高次の基底関数を、解析における近似の形状関数としてそのまま使用します。IGAの適用により、次の3点が期待されています。

1.モデル作成工数の削減

CADで使用されている基底関数を、近似の際の形状関数として使用することからFEMの必須プロセスであるメッシュ生成が不要になります。IGAでは、オリジナルのCADデータから解析に適したPatchへの変換が必要となりますが、この変換の効率化により、従来のFEMに比べ、モデル作成工数の削減が期待されます。

2.形状再現性の向上

IGAでは、メッシュによる形状誤差、いわゆる直線近似誤差が発生しません。そのため、従来のFEMに比べ、オリジナルのCADに近い形状での解析が可能となります。

3.高次基底による解析精度の向上

FEMの一般論として、近似の際に使用される形状関数を高次化することで、解析精度が向上することが知られています。形状表現に使用されるNURBSは2次以上の高次関数であり、これを解析に適用することで、高次化と同様の効果が得られます。従来の1次要素によるFEMと比較し、解析精度の向上が期待されます。

このように、IGAの適用によりFEM利用時の工数削減が期待できます。「Design(CAD)とAnalysis(CAE)をシームレスにつなぐ」というIGA技術の目標を実現するため、現在も学界においてIGAの発展に向けた研究が続けられています。

IGA Conference 2018

2018年10月10日(水)〜12日(金)に、Texas University Austin校のキャンパスにある、 AT&T Hotel and Conference Centerにて、IGA Conference 2018が開催されました。ヨーロッパやUSの研究グループを中心に、約150名が参加しました。
テクニカルセッションは、基礎技術の研究から、CADとCAEの親和性向上、計算効率化、産業界・FSI(流体構造連成)解析への応用など多岐にわたるテーマで、15セッション、計122講演がとりおこなわれました。

LS-DYNAに関連した発表には、LS-DYNAのIGAコードを開発している米国LSTC社のDavid Benson氏による最新機能に関するご発表、2017年度当社ユーザー会でも基調講演いただいた株式会社本田技術研究所の高田様によるご発表、また、当社が代理店として販売しているIGA Toolの開発元である株式会社エリジオンの都築様によるご発表がありました。いずれもIGAの可能性を感じる、非常に有意義な発表となっていました。

また、IGAの研究およびソフトウエアの開発を行っているCoreform社が主催するポスターコンペティションや、「IGAの産業界への応用」をテーマとしたパネルディスカッションも行われ、研究グループ間の活発なコミュニケーション、ディスカッションがみられました。

IGA Conference 2018会場
IGA Conference 2018会場

LS-DYNAにおけるIGAの現状

米国LSTC社のDavid Benson氏を中心に、LS-DYNAにおいてもIGAの実装が進められています。LS-DYNA IGAの実行手順を通して、機能の実装状況をご紹介します。

1.CADデータからNURBSパッチへの変換

LS-DYNA IGAでは、オリジナルのCADデータから、解析に適したNURBSパッチへの変換が必要となります。LS-DYNA専用のプリポストプロセッサーであるLS-PrePostには、NURBSパッチへの変換および修正のための、NURBS Editorと呼ばれる機能が実装されています。この機能を用いて、簡易的な形状であればNURBSパッチへの変換が可能です。

2.プリプロセッシング

上記1により得られたNURBSパッチに対して、解析条件を設定します。通常のFEMと同様に、LS-PrePostを用いて、解析対象となるパートの要素特性・材料特性の定義、境界条件、初期条件等を設定します。 IGAのための特別な設定が必要となるケースがありますが、基本的にはFEMと同様に設定します。

3.解析実行

FEMと同様の流れで解析を実行します。LS-DYNA IGAで抑えておくべきポイントは次の3つです。

①計算の自由度

FEMでは、節点が自由度を持ちますが、IGAではコントロールポイントが自由度となります。

②要素計算

FEMの要素に類似した概念として、IGAではNURBS要素と呼ばれるものがあります。NURBS要素は、Knot(節点)で囲まれるセグメントであり、数値積分はこのNURBS要素単位で行なわれます。

③コンタクト計算

LS-DYNA IGAでは、補間要素と呼ばれる1次要素を自動的に作成し、これに基づいてコンタクトの計算を行います。補間要素は、上述したNURBS要素を等分割して作成されます。
NURBSパッチの滑らかな曲面を活用したコンタクトアルゴリズムは、新機能として開発が進められています。

4.ポストプロセッシング

コンタクト計算においても使用される補間要素が、物理量の出力単位となります。コントロールポイントがもつ物理量を元に、応力・ひずみ等の物理量が算出され、これらを補間要素にマッピングすることで、結果を出力しています。
FEMのポストプロセッシングと同様、各種バイナリー、および、アスキーファイルをLS-PrePostにインポートすることで、結果を確認します。

このように、LS-DYNA IGAの実行手順の大部分は、FEMと同様です。
しかし、産業界で使用される複雑なCADデータを、IGAに適したNURBSパッチに変換するフェーズが、1つのボトルネックとなっています。
JSOLでは、2018年7月より、このボトルネックを緩和し、より効率的な変換を実現するツールとして、IGA Toolを提供しています。
IGA Toolの概要は、CAE技術情報ライブラリ『注目機能紹介』でご紹介します。

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