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論文掲載:CFRP積層材の動的な層間破壊靭性評価法の提案

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Fraunhofer EMIとJSOLの共同研究の成果が、国際誌『Composites Part A: Applied Science and Manufacturing』に掲載されました。

ドイツに拠点を置く欧州最大のFraunhofer研究機関において、高速領域の実験およびシミュレーションを中心に取り扱う研究所がFraunhofer EMIです。同研究所はJSOLと交流が深く、JSOLのLS-DYNA&J-STAMPフォーラムでも毎年のように最新の研究成果を講演頂いております。また、今回、共同研究の成果が掲載されたComposite Part Aは、複合材料の研究分野で最も権威のある国際学術論文誌の1つとして知られています。

CFRP部材衝突解析における課題

近年、CO2削減の必要性から、軽量化効率に優れる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の自動車部材への適用が進められています。法規により定められた安全基準を満たす必要がある衝突安全性能では数値シミュレーションによる評価の必要性が高く、CFRP部材の衝突時のエネルギー吸収、変形・破壊モードのFEMによる高精度な予測が、効率的な設計のために不可欠になっています。

金属部材が塑性変形で衝突エネルギーを吸収するのに対して、CFRPは材料の連続的な破壊によりエネルギーを吸収します。つまり、衝突シミュレーションでCFRP部材のエネルギー吸収性能を高精度に予測するためには、シミュレーションの前段階として信頼性の高い破壊特性を取得することが重要になります。しかし、特に衝撃荷重下における破壊特性の試験計測には課題が多く、CFRP部材の衝突シミュレーションを行う上でのボトルネックになっています。

動的な層間破壊靭性の同定アプローチ

本共同研究では、上記の課題解決の1つとして、動的なモードI破壊靭性値の評価方法を提案しました。

層間破壊靱性値は、CFRP積層材の層間破壊は構造物の破壊・損傷の起点になりうることから、重要な特性であり、衝突シミュレーションの精度にも大きな影響を与えるパラメータとして知られています。一方で、層間破壊靱性値を計測する際には、試験中の負荷荷重、荷重点変位、および亀裂長さの履歴を計測する必要があります。しかし、高速変形を与える衝撃試験において、これらを直接計測することは技術的にほぼ不可能です。さらに、動的な破壊靱性値を実験的に取得する手法も確立されていません。

そこで、本共同研究では、高速度ビデオカメラによる試験片の変形トラッキングとEuler Bernoulliの梁の理論を用いて、負荷荷重と亀裂長さを導出することで動的な層間破壊靭性を同定するアプローチを提案しました。

具体的には、Hopkinson Pressure Bar法を用いて、モードI(開口型)の層間破壊靱性試験として最も一般的なDCB(double cantilever bending)試験片に、くさび状の治具を15m/sで押し込み、高速で亀裂を進展させます。このとき、高速度ビデオカメラで変形の様子を記録し、試験片の変形のプロファイルをEuler Bernoulliの梁の理論によりフィッティングします。Euler Bernoulliの梁理論により変形と荷重の関係が理論的に決定できるため、亀裂先端の正確な位置および試験片端部の荷重を導出可能になります。

本提案手法により、衝撃試験において計測が困難な荷重履歴や亀裂先端の位置を計測することなく、動的な破壊靭性値を得ることが可能となります。さらに、本論文では、実際の試験から本手法を用いてロバストにCFRPの破壊靭性値を取得できることを報告しました。

本論文は、下記サイトよりダウンロード可能です。ダウンロード方法などの詳細はリンク先をご確認ください。
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