
CAE Technical Library エンジニアレポート - CAE技術情報ライブラリ
JSOL は 12th European LS-DYNA Conference において、LS-DYNA による繊維強化樹脂の圧縮成形解析とプロセスチェーンを考慮した強度解析の講演を行いました[1]。さらに、現在開発中の繊維強化樹脂圧縮成形解析ツールを紹介しました。
今回取り上げるのは、「繊維強化樹脂圧縮成形解析ツール J-Composites/Compression Molding の開発」です。
LS-DYNA による不連続長繊維強化樹脂の圧縮成形解析
自動車の排出ガス規制の強化に対応するために車両軽量化による大幅な燃費向上が求められています。そのため、比強度と比剛性に優れている炭素繊維強化樹脂 CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)の適用が期待されています。そのなかでも不連続長繊維強化樹脂は、強度性能を維持しながら圧縮成形により自由な形状に成形できることから、多くの材料メーカーや研究機関で開発が進められています。JSOL はこのような革新素材の製品開発に CAE で貢献するために、LS-DYNA による不連続長繊維強化樹脂の圧縮成形解析技術を開発しました。この新しい解析手法では、繊維をビーム要素、マトリックス樹脂をアダプティブ EFG ソリッド要素でモデル化し、ビーム・ソリッドカップリング手法により成形解析を行います。

本解析手法の妥当性を評価するために、不連続長繊維 CFRP の十字リブ形状圧縮成形試験を実施して LS-DYNA 解析と比較しました。試験では、十字リブ内への材料充填とウェルドライン形成が確認され、LS-DYNA 解析はこれらの挙動を再現しました。

J-Composites/Compression Molding の開発
本解析手法では、EFG 要素やアダプティブリメッシング機能、ビーム・ソリッドカップリング手法が使用されるため、計算安定化のためにさまざまなパラメータの設定が必要になります。また、計算コストを抑えるために、ビーム要素とソリッド要素を適切な数にすることも重要です。そのような複雑なモデリングノウハウで構築される解析モデルを簡単にセットアップするためのツールとして、J-Composites/Compression Molding(CoM)の開発を行っています。このツールには繊維モデル(ビーム要素)の生成機能が実装されており、JSOL が独自開発した手法により、できるだけ少ないビーム要素数で 2D ランダム配向を満足することを可能にしています。
材料特性の同定手法を確立するために、恒温槽内で材料を平板で圧縮させる試験(Squeeze Flow 試験)を実施しています。Squeeze Flow 試験を様々な圧縮速度と温度下で行うことにより、材料のひずみ速度依存性と温度依存性を計測することができます。このようにして高精度な材料データを計測することにより、圧縮成形試験の成形圧や流動挙動の予測精度を上げることができます。J-Composites/CoM には材料データベース機能が実装されており、いくつかの材料データを標準実装する予定です。また、ユーザーが作成した材料データを材料データベースに追加して管理することができます。
J-Composites/CoM のシステムフローを下図に示します。最初に、ブランク材と金型(パンチとダイ)のメッシュデータを持つテンプレートモデルを J-Composites/CoM に読み込ませます。次に、J-Composites/CoM の GUI から材料データを選択して、繊維モデル生成のためのパラメータを入力します。マトリックス樹脂モデルの生成(ブランク材シェル要素からソリッド要素を生成)、コントロールカード、r-アダプティブ、接触定義などの設定は、ほぼ自動的に行うことができます。

J-Composites/Compression Molding Ver.1.0 は2020年2月にリリースする予定です。もし、ご興味がありましたら、弊社営業担当者または こちら からお問い合わせください。
- 参考
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- [1] Shinya. Hayashi, C.T. Wu, Wei Hu, Youcai Wu, Xiaofei Pan, Hao Chen; “New Methods for Compression Molding Simulation and Component Strength Validation for Long Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics”, 12th European LS-DYNA Conference 2019, Koblenz, Germany