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CAE Technical Library エンジニアレポート - CAE技術情報ライブラリ

レーザースキャン結果を活用した
モデルバリデーションプロセス(後編)

カテゴリー
: 技術情報
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DIFFCRASH / LS-OPT

前回のエンジニアレポート では、レーザースキャン結果を活用したモデルバリデーションプロセス(前編)と題して、モデルバリデーションの必要性と課題、効率的な検証方法をご紹介しました。後編となる今回は、前回ご紹介したモデルバリデーションプロセスを、LS-OPT(LS-DYNA)と DIFFCRASH を用いて実施した具体例をご紹介します。

LS-OPT(LS-DYNA)と DIFFCRASH を用いたモデルバリデーションプロセス:

  • ・試験前に、試験を再現した解析モデルを構築し、製品ばらつきを考慮したモンテカルロ計算を実行
  • ・試験後、すぐに実機のレーザースキャンを取得
  • ・解析と試験の変形モードを比較
  • 試験前:バラツキ考慮モデル構築〜計算モデルの変形モード取得

    前回取り上げたものと同じクラッシュボックスを準静的に圧縮する試験を計画し、製造ばらつきを考慮した先行モンテカルロ計算を、LS-OPT を用いて行いました。

    図1. LS-OPT によるモンテカルロシミュレーション 図1. LS-OPT によるモンテカルロシミュレーション

    LS-OPT によるシミュレーションの結果を取り込み、DIFFCRASH を用いてモード空間に投影すると以下のプロットが得られました。この結果から、今回、一次モードは画面左右に傾くモードであることが分かります。

    図2. シミュレーション結果をモード空間に投影(DIFFCRASH) 図2. シミュレーション結果をモード空間に投影(DIFFCRASH)

    試験実施:レーザースキャンデータの取得

    シミュレーション結果に基づくプロットの取得後に、試験場にて実際に試験を行います。今回はドイツ Fraunhofer EMI研究所 にて試験を行っていただきました。試験終了後に、レーザースキャナーを用いて試験片の形状を取得しました。

    図3. クラッシュボックスの準静的圧縮試験 図3. クラッシュボックスの準静的圧縮試験

    試験後:変形モードの比較

    レーザースキャナーで取得した形状データを DIFFCRASH に 取り込みます。DIFFCRASH は、解析モデルのモンテカルロシミュレーションから得られたモード形状を元に形状データのフィッティング計算を行います。その計算結果は、シミュレーションによるモード空間上に投影されます。

    図4. スキャンデータのフィッティング計算とモード空間投影 図4. スキャンデータのフィッティング計算とモード空間投影

    合計10回試験を行い、それぞれを DIFFCRASH にて処理しました。その結果、今回はシミュレーションによる変形モード空間において、実験結果がシミュレーション結果集団内に存在しました。そのため、「シミュレーションで起きると予測された変形が実験でも起きた」と考えられます。
    また、形状についても、モード空間において試験結果に近いシミュレーション結果を形状比較したところ、最終形状は試験結果によく近似されていました。したがって、モデルによる現象再現度は高いと言えます。また、試験結果はモード空間において左側に偏在していることから、生産プロセスにおいては左側に寄った状態だったと推測されます。
    よって、差異を議論する際には、パラメータセットをモード空間の左側に相当する状態に調整(モデルアップデート)してから行うことが効果的であると考えられます。

    図5. 試験とシミュレーションの最終形状:モード空間で試験に近い結果は形状も近似 図5. 試験とシミュレーションの最終形状:モード空間で試験に近い結果は形状も近似

    試験結果から得られたレーザースキャン結果を用いたモデルバリデーションプロセスの実施例をご紹介しました。事前に生産バラツキを考慮した解析モデルを用意し、試験後のスキャンデータと素早く比較することで、モデルと試験方法の妥当性確認を行い、さらに今後のモデル改良において注目すべきパラメータも予測することができました。モデルバリデーションを効率的に進めることで CAE 活用業務のスリム化が見込まれ、開発効率の向上が期待できます。さらに、リアルをモデルにフィードバックするプロセスは、製品開発・設計におけるデジタルツイン実現に向けた取り組みにおいても役立ちます。

    DIFFCRASH および LS-OPT の詳細は こちら からお問い合わせください。

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