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CFRP積層体の破壊挙動のモデリングと妥当性検討

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: 技術情報
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JSOL は16th International LS-DYNA Users Conference において、マツダ株式会社との共同研究で実施しているCFRP積層体のモデリングと解析に関する講演を行いました[1]。
以下、講演内容を簡単にご紹介いたします。詳細は文末の参考文献[1]をご参照下さい。

異なる積層構成による破壊モード変化の予測

近年、自動車などの材料として利用されるCFRPは軽量で高強度であることから軽量化に役立つ材料です。しかし一方で、積層構成により破壊挙動が変わるため、衝突時の破壊挙動の予測が難しい複雑な材料でもあります。繊維の破断やねじれ、樹脂の亀裂や層間剥離などのさまざまなダメージの複合により、破壊挙動は変化します。衝突安全性能評価のために衝突解析は重要であり、なかでも、前面衝突や側面衝突時に支配的となる圧縮や曲げを与えた際のCFRPの破壊挙動を予測することが重要となります。本共同研究では、図1に示すとおり、FEモデルの設計変数として形状と材料物性、さらに積層構成を変えた際の、破壊挙動を含めた妥当なシミュレーションを目的としています。講演では、積層構成が異なるUD積層部材の4点曲げのLS-DYNAによる解析と検討について報告しました。

図1 衝突解析におけるCFRPのシミュレーションの要件 図1 衝突解析におけるCFRPのシミュレーションの要件

解析対象はハット形状のUD積層部材(図2)とし、1:疑似等方積層([0/45/90/-45]3S)、2:0°中心積層([0/90/90/(0)9]S)の2種類の積層構成で、4点曲げ試験と解析を行いました。
積層モデルはシェルとCohesiveの多層モデルで表現し、各シェル層(複合材)の材料カードは*MAT_262、Cohesive層(接着層)は*MAT_138または後述のユーザサブルーチンでモデル化しました。また、MATカードの各材料パラメータは試験(クーポン試験、ENF試験、DCB試験)により求めました。

図2 ハット形状のUD積層部材の4点曲げモデル 図2 ハット形状のUD積層部材の4点曲げモデル

疑似等方積層と0°中心積層の亀裂進展方向の解析

試験結果

1:疑似等方積層 [0/45/90/-45]3S
・変位 10 mmあたりから亀裂の進展が見られ、負荷子下において周方向に進展
・最大荷重後はこの亀裂進展の影響で荷重が徐々に低下
2:0°中心積層 [0/90/90/(0)9]S
・長手方向への亀裂の進展と急激な荷重低下を確認

1、2を比較すると、積層構成の違いにより異なる破壊モード(周方向への亀裂進展と長手方向への亀裂進展、図3)が観察されました。

図3 各積層構成の亀裂進展の様子(a) 疑似等方積層(b) 0°中心積層図3 各積層構成の亀裂進展の様子

解析結果

疑似等方積層モデルでは、試験で観察された周方向への破壊が解析上でも再現され、FSカーブも試験結果と良いコリレーション(図4)が見られました。しかし、0°中心積層モデルでは試験と異なり亀裂が周方向に進展し、解析の方が試験よりも荷重が大きい結果となりました。

図4 疑似等方積層モデルの解析結果(a) FSカーブ(b) 周方向へ亀裂進展する破壊モード図4 疑似等方積層モデルの解析結果

0°中心積層モデルの改良

試験結果の破壊挙動をCTスキャンにより確認し、実際の現象に合わせて層内、層間、積層体のモデリングを以下のように改良しました。

  • 層内:*MAT_262に面外せん断ダメージ(23平面方向と31平面方向)を追加
  • 層間:ユーザサブルーチンによりCohesive要素に亀裂進展方向依存の靭性値異方性を追加
  • 積層体:厚肉シェル+厚みゼロのCohesive要素で解析

改良後のモデルの解析結果を図5に示します。試験で観察された荷重の急激な低下および、積層体の長手方向に亀裂進展する破壊挙動を解析上で再現しました。
以上より、異なる積層構成における破壊挙動の違いをLS-DYNAのFEモデルによりシミュレーションすることができました。

図4 疑似等方積層モデルの解析結果(a) FSカーブ (b) 長手方向へ亀裂進展する破壊モード図5 0°中心積層モデルの解析結果

参考
  • [1] Nishi, M., Nishihara, T., Iimori, M., Kawamura, C., Kanemoto, S., Saito, K., Hartmann, S. “Modeling and Validation of Failure Behaviors of Composite Laminate Components using MAT_262 and User Defined Cohesive Mode”, 16th International LS-DYNA Users Conference

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