
CAE Technical Library 注目機能紹介 - CAE技術情報ライブラリ
2019年3月にリリースしましたDigimat 2019.0の注目機能をご紹介します。
Digimat-RP/Fiber orientation estimator
成形解析と構造解析の連携を行うための統合プラットフォーム「Digimat-RP」の繊維配向予測機能Fiber orientation estimatorがアップデートされました。Fiber orientation estimatorは、Digimat-RPのGUI上で射出成形品のゲート位置、ゲートサイズ、成形条件(樹脂溶融温度、金型温度、充填時間)を設定するだけで、充填解析・繊維配向解析を行える機能です。構造解析用インプットファイルさえあれば、流動解析ソフトによる高精度な解析データや、流動解析用のCADモデルやメッシュが入手できない場合にも、簡易的に成形工程を考慮したうえで構造解析をシームレスに行うことができます(図1)。流動解析ソフトをお持ちでないお客様や、構造解析への入力用に繊維配向データを簡単に入手されたいお客様におすすめの機能です。
V2019.0では流動解析時に用いるメッシュがBLM(Boundary Layer Mesh)にアップデートされ、射出成形品の構造解析に重要な肉厚方向の繊維配向をより高精度で求めることができるようになりました。また、V2018.1以前より対応していたソリッド要素に加えて、V2019.0からはシェル要素の構造解析インプットデータも読み込み可能になりました。さらに、ソリッド要素のモデルを用いる場合は、ウェルドライン位置の出力に対応しました(図2)。以上のアップデートにより、さまざまなモデルに対し、より簡単な設定で、より精度よく、解析を行えるようになりました。
※Fiber orientation estimatorはDigimat-RPのオプション(有償)です。
図1 Digimat-RP/Fiber orientation estimatorの機能紹介
繊維配向予測とマッピング結果
図2 Digimat-RP/Fiber orientation estimatorの機能紹介
ウェルドライン予測機能
新しい粘弾粘塑性材料モデル
構造解析で製品の評価をする際は、試験片を作成して引張試験を行い、その結果から各材料モデルのパラメータを作成する必要があります。樹脂の落下・衝撃解析などでは材料のひずみ速度依存性の考慮が必要になりますが、従来の粘弾粘塑性モデル(Viscoelasto-viscoplastic)では、構成式が複雑であるためにパラメータ同定が非常に難しいという問題がありました。
この問題に対応するため、最新版のDigimatでは新しい粘弾粘塑性モデルが追加されました。これにより、まず、ひずみ速度ごとのS-Sカーブで弾塑性パラメータを求め、最終的にすべてのひずみ速度の弾塑性パラメータをマージする、という2ステップで簡易に粘弾粘塑性モデルを作成できるようになりました。作成した粘弾粘塑性モデルはDigimat-RP、Digimat-CAEなどを介して成形解析を考慮した構造解析で使用することが可能です。
※パラメータ同定やモデルのマージにはDigimat-MXが必要になります。
図3 各引張速度でパラメータを同定したものをマージし、1つの粘弾粘塑性モデルを作成
LS-DYNA R9.3に対応
Digimat 2019.0でDigimat-CAE/LS-DYNA連携解析に対応しているLS-DYNAのバージョンは以下になります。- - R9.1.0
- - R9.2.0
- - R9.3.0
Foam構造の作成機能追加
Digimat-FEはモデル作成、メッシュ作成、解析実行機能(モジュール)を備えたRVE(Representative Volume Element)解析のための機能です。これまでもさまざまな種類の複合材料のRVE作成に対応しており、今回のアップデートではさらにフォーム構造の作成機能が追加されました。
図4 Digimatで作成したFoam構造の例
現在Digimatをお使いのお客様は、既存のライセンスでDigimat 2019.0をお使いいただくことができます。上記でご紹介した以外にも、各機能が向上され、安定性が改善されておりますので、ぜひアップデートしてお使いください。
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