
CAE Technical Library 注目機能紹介 - CAE技術情報ライブラリ
複合材成形解析モデリングツールJ-Composites/Form Modeler Ver.2.0.0では、樹脂複合材(ドライ繊維基材および熱可塑・熱硬化プリプレグ)の成形工程設計業務に一層役立つツールをめざし、さまざまな機能追加と改良を行いました。
注目機能として、以下の3つの追加機能をご紹介します。
- ○ 標準材料データベースの拡充とGUI更新
- ○ 熱構造連成解析への対応
- ○ ワンステップ計算への対応
標準材料データベースの拡充とGUI更新
複合材料の成形解析の入力データにおいて、成形時の材料物性は非常に重要です。
一般的には材料試験の結果から物性データを取得しますが、製品設計や材料検討などの初期段階では、適切な試験データの入手が困難な場合もあります。
そのため、J-Composites/Form Modelerでは、市販の複合材料物性データを標準材料データベースとして提供しています(Table 1)。
当社計測によるものや材料メーカ様ご提供、あるいは公開文献に基づき、Ver.1.0.0の4種から、Ver.2.0.0では計11種に材料物性データを拡充しました。
Table 1 Form Modeler Ver.2.0.0に搭載した標準材料データベースリスト
Grade Name | Manufacturer | Matrix | Fiber | Pattern |
---|---|---|---|---|
Cetex®_8HSatin | TenCate | PPS | Glass | 8 Harness-Satin |
Cetex®_TC1200 | TenCate | PEEK | Carbon | UD |
Cycom®HTS-977-2 | Cytec | Epoxy | Carbon | UD |
HexForce®_G1151 | Hexcel | - | Carbon | 3X formable weave |
HexPly®_T700-M21 | Hexcel | Epoxy | Carbon | UD |
Pipreg®_5HSatin | Porcher | PEEK | Carbon | 5 Harness-Satin |
PYROFIL™_TR3110 360GMP | Mitsubishi Chemical | Epoxy | Carbon | Plain weave |
Tepex®dynalite_102-RG600 | Bond-Laminates | PA6 | Glass | Twill weave |
Tepex®dynalite_202-C200 | Bond-Laminates | PA6 | Carbon | Twill weave |
TORAYCA®_C06343B | Toray | - | Carbon | Plain weave |
TORAYCA®_C06347B | Toray | - | Carbon | Twill weave |
また、材料データベース(Material DB)のGUIを更新しました(Fig. 1)。
ⓘ情報ボタンから、メーカ、樹脂、繊維など、各材料の関連情報を入力できます。入力した情報は、材料データベースに表示できます。GUIの更新により、ユーザー登録材料も含めたデータ管理の利便性が向上しています。
Fig. 1 Ver.2.0.0の材料データベース(Material DB)GUI
熱構造連成解析への対応
熱可塑樹脂や熱硬化樹脂を予め含浸したプリプレグ材料などは、成形前の材料加熱や成形時の金型との接触による材料温度の低下などの、熱履歴を経て成形されます。
このような成形解析を実施する場合には、複合材料がもつ温度依存性を考慮して解析を行う必要があります。
そのため、J-Composites/Form Modeler Ver.2.0.0から、熱構造連成解析に対応しました。
温度依存の機械特性や熱特性(比熱、熱伝導率)などを材料データに登録し、熱構造連成計算を実行することで、成形時の複合材料の熱挙動を考慮できます。(Fig. 2)
また、熱接触条件設定や成形現象加速に合わせた時間関連物性値のスケーリングなど、熱連成計算に要する関連設定も、一括自動処理できるようになりました。
J-Composites/Form Modeler Ver.2.0.0では、このような温度推移による物性変化の表現を実現し、熱感度の高い複合材料を対象とした解析において、精度向上が期待できます。(Fig. 3)
Fig. 2 材料データベースにおける温度依存物性の設定画面
Fig. 3 熱構造連成解析によるプレス成形時の温度変化
ワンステップ計算への対応
クイック検討を目的とした陰解法によるワンステップ機能は、板金プレス成形解析用にLS-DYNAに実装されていました。その後の機能拡張により、ワンステップ法が複合材料にも適用可能になり、ブランク材料のカットパターンや、せん断変形角コンターなど、材料設計や形状設計段階で有用な情報を短時間の解析で得られるようになりました。
J-Composites/Form Modeler Ver.2.0.0では、複合材料のワンステップ解析を実施するためのモデルを、製品形状、材料特性および初期繊維方向を入力設定するだけで、一括自動作成できます。
Fig. 4は、半球押し成形工程において、従来の陽解法によるインクリメンタル解析と、新たに実装された陰解法によるワンステップ解析の比較です。
ワンステップ解析では、大幅に少ない計算リソースで、インクリメンタル解析と同傾向の材料のせん断変形角の結果コンターを得ることが可能です。
Fig. 4 従来手法とワンステップ法の解析結果比較
J-Composites/Form Modeler Ver.2.0.0の機能の一部をご紹介しました。このほかにも各機能の改善・拡張により、樹脂複合材の成形工程設計業務に一層役立つツールとなっております。
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