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JSTAMP:強連成金型たわみ機能

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JSTAMP

まもなくリリース予定のJSTAMP新機能「強連成金型たわみ機能」を紹介します。

「強連成金型たわみ機能」は、金型の変形を考慮しながら板金のプレス成形シミュレーションを行う機能です。
通常のプレス成形シミュレーションでは、金型を剛体、つまり変形しないものと仮定してモデル化します。しかし、実際のプレス加工では成形時に非常に大きな荷重が発生するため、金型にたわみが生じて型当たりや面圧が変化し、被加工材の成形性や寸法精度、面品質等に影響を及ぼします。そこで、シミュレーションでも被加工材の成形と金型の変形を同時に計算することで、さまざまな成形不具合の予測精度の向上が期待できます。

特に、近年適用が増えているハイテン材の成形においては、加工条件がいっそう厳しく金型にたわみが生じやすいことから、より大きな効果を発揮します。また、ダイフェース設計段階から金型のたわみ量を予測することで、たわみの逆見込みや金型構造設計へのフィードバックといった対策の検討が可能になり、設計・開発リードタイムの短縮、トライアウトや金型玉成工数の抑制によるコスト削減が望めます。

強連成金型たわみ機能を用いたFenderパネル絞り成形(動画) 強連成金型たわみ機能を用いたFenderパネル絞り成形(動画)

本記事で紹介する「強連成金型たわみ機能」は、1.粗密メッシュの結合による高速化、2.構造モデル専用のセットアップコマンド、3.簡易構造モデル作成コマンドの3つの特長により、プレス成形CAEの高精度化とたわみ量の予測を実現します。

強連成金型たわみ機能の特長1:粗密メッシュの結合による高速化

一般的に、被加工材と金型を同時に計算する際には、計算時間や設定の手間の増加が課題となります。確かに、広く用いられている連成手法では金型の変形を考慮するには非常に多くの計算時間と設定工数が必要でした。というのも、金型の変形を計算するには金型をソリッド要素でモデル化しなければならず、また、被加工材との接触計算にはダイフェースの形状精度の確保が不可欠です。つまり、非常に細密なソリッド要素で作成した金型モデルが必要となり、それが計算時間とモデル作成工数の大幅な増加につながっていました。

本機能では、高速化手法の適用により、計算時間やモデル作成工数を節約した連成解析を可能にしています。この手法では、金型の構造解析に用いるソリッドモデルと、被加工材との接触計算に用いるシェルモデルを別々に作成します。接触計算用のシェルモデルには剛性のない材料を適用し、構造用ソリッドモデルの表面に対してシェル構成節点の相対座標を拘束します。こうすることで、シェルモデルは相対座標を保ちながら構造モデルの変形に追従することになります。

この手法のメリットは、構造モデルとダイフェースモデルのメッシュサイズが異なっていても計算できることです。多くの場合で、金型の構造解析とダイフェースの接触計算では、求められるメッシュ解像度が異なります。そこで、構造解析用のソリッド要素は大きなサイズで、接触計算用のシェル要素は小さいサイズで作成することで、計算時間の節約と接触計算の厳密さを両立しながらたわみを考慮した計算が可能になります。図 1にこの手法の模式図を示します。

図1. 強連成金型たわみ機能のイメージ図
図1. 強連成金型たわみ機能のイメージ図

強連成金型たわみ機能の特長2:構造モデル専用のセットアップコマンド

たわみを考慮した成形解析モデルの設定において、もうひとつ課題になるのが構造モデルのセットアップ作業です。成形解析に3次元の構造モデルを組み込むには、構造同士の接触条件や境界条件などの煩雑な設定が必要となり、汎用プリプロセッサで作業を行うと週単位の設定工数を要します。

本機能ではこれらの作業を手間なく確実に行うための、構造モデル専用セットアップコマンドを提供しています。これらのコマンドにより、短時間でモデルをセットアップすることが可能になります。図2 は本機能を利用して金型構造同士の接触面を抽出している一例です。

図2. 金型構造同士の接触面を抽出
図2. 金型構造同士の接触面を抽出

強連成金型たわみ機能の特長3:簡易構造モデル作成コマンド

特長1、2で工数の増加を抑えられたとして、実際の金型設計フローにたわみを考慮した成形解析を取り入れることは可能でしょうか。金型の構造モデルのデータを入手可能であれば、1、2の特長を利用して、速やかに金型のたわみを考慮した成形解析を業務に適用できます。

しかし、多くの場合で、金型構造の設計に着手できるのはダイフェース設計が概ね収束した後になります。その一方で、CAEによる設計検証はダイフェース設計と並行して行われます。つまり、CAEの稼働率が高い段階では金型の構造モデルがないため、たわみを考慮した解析の実施は困難です。

本機能では、こうした設計プロセスのタイムラグを解消するために、金型構造の簡易的な形状を作成し、各種境界条件を付与できる簡易形状作成コマンドも提供します。簡易形状作成コマンドは、ダイフェース面をベースに押し出し等の処理を行い、ボリュームを作成します。外形の拡大、クッションピンの形状作成、金型構造間のガイドの作成も可能です。細かな作り込みはできませんが、簡易的な形状ながら実物に近いモデル化をすることができます。

これらのコマンドを利用することで、金型構造データがない段階でもたわみを考慮した解析が実施可能になります。図 3は、ベースとなるダイフェースモデルから作成した簡易モデルの例です。

図3. ダイフェースモデルから簡易形状モデルを作成
図3. ダイフェースモデルから簡易形状モデルを作成

たわみの影響

最後に、金型のたわみの考慮が解析結果に与える影響について、一例を示します。

図4は、たわみを考慮しない剛体金型モデルの場合と、本機能を利用してたわみを考慮した場合それぞれの、パネル端部の板厚減少率を表したコンター図です。たわみを考慮しない計算では板厚減少率を大きく見積もっていることがわかります。このモデルではダブルビードによりパネル左側に大きな流入抵抗が発生し、しわ抑え面のたわみを誘引します。たわみによるクリアランスの変化は流入抵抗の変化につながるため、結果として、剛体金型モデル使用時と本機能使用時で内部の板厚減少率に差が出ていると考えられます。

図4. 金型たわみの考慮による板厚減少率の変化
図4. 金型たわみの考慮による板厚減少率の変化

以上、強連成金型たわみ機能の3つの特長と計算例を紹介しました。

金型の変形を取り入れることで、被加工材の成形性や寸法精度、面品質などの解析精度の向上が期待できます。しかし、これまでは、金型のたわみを考慮した成形解析は、計算時間と作業工数の問題で実際の生産フローに組み込むことが困難でした。
JSTAMPの新機能「強連成金型たわみ機能」は、工数の増加を抑制しながらも高精度な解析を実現します。

プレス成形CAEの高精度化に課題を抱えている方はぜひご利用をご検討ください。

金型たわみ機能およびJSTAMPの詳細は こちら からお問い合わせください。

本機能は金型自体の挙動の分析においても有用なツールになることが期待できます。実際の金型の成形中の挙動は、測定が難しいこともあり、十分に現象を分析できていないというのが実情ではないかと思います。金型のたわみが被加工材の品質に影響を与えるメカニズムの解明、たわみにくい金型構造の実現といった課題に関心をお持ちの方がいましたら、ぜひご相談ください。

  • ※本機能は有償オプションです。
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