お問い合わせ

CAE Technical Library 注目機能紹介 - CAE技術情報ライブラリ

建設機械・農業機械の開発を支援するシミュレーションのご紹介

カテゴリー
:技術情報 / 機能紹介 / セミナー・イベント / その他
関連製品
Ansys LS-DYNA / Ansys Mechanical / HYCRASH / J-Composites

はじめに

本記事では、建設機械・農業機械の設計に役立つシミュレーション事例をご紹介します。

乗用車だけでなく、建設車両や農業車両のような特定の用途に特化した自動車においても、乗員安全性の確保や試作削減による開発期間の短縮、コストダウンが求められます。これらの課題を解決する方策のひとつが、シミュレーションの活用です。

JSOLで取り扱っている衝撃・構造解析ソフトウェアAnsys LS-DYNAは、自動車衝突安全評価解析において広く使用されています。また、プレス成形シミュレーションシステム JSTAMPは、自動車部品の成形性評価を支援するソフトウェアです。JSOLは、Ansys LS-DYNA、JSTAMPをはじめとする、幅広いCAEソフトウェア・サービスを取りそろえて、長年にわたり自動車業界の設計・開発現場におけるシミュレーション活用を支援してきました。建設車両や農業機械など、用途に特化した車両・機械の設計にも、乗用車の設計・開発で培ったJSOLのシミュレーション技術が応用可能です。

ROPS・TOPS・FOPS性能試験

建設機械の乗員を機械の転倒や落下物による事故から守るための性能評価試験が、日本工業規格(JIS)や国際規格(ISO)で定められています。代表的な試験に、ROPS(Roll-Over Protective Structures)、TOPS(Tip-Over Protective Structures)、FOPS(Falling-Object Protective Structures)があります。ROPSとTOPSは、機械の転倒・横転時の乗員安全保護の性能評価として実施される試験であり、FOPS(図1)は落下物に対する安全評価として定められている試験です。農業機械でも同様の試験が行われます。これらの試験をシミュレーションして結果を予測することで、要件未達や過剰品質を事前に把握し、開発期間の短縮やコストダウンにつながります。

図1. 建設機械キャビンへのFOPS性能試験 図1. 建設機械キャビンへのFOPS性能試験

以上に挙げました試験のシミュレーションには、乗用車の衝突試験シミュレーションのノウハウを活かすことができます。近年、乗用車衝突シミュレーションにおいて、より一層の精度向上が図られています。精度向上に寄与するシミュレーションモデル化の手法には、加工硬化の考慮や、鋼板で発生し得る破断のモデル化などがあります。加工硬化の影響を考慮するツールとしてHYCRASH、鉄鋼材料の破断予測ツールとしてNSafe® ※1を用いることで、解析精度の向上が期待できます。これらのツールは、ROPS・TOPS・FOPS性能試験のシミュレーションにおいても精度向上に役立ち、より精緻な試験結果の予測が可能です。

摩耗評価

図2に示すようなパワーショベルのショベルやブルドーザーのバケット、トラクターの耕うん刃、コンバインの刈刃など、建設機械・農業機械は、乗用車にはない作業用の部品を備えています。これらの作業用部品は繰り返しの摩擦を受けることで摩耗が発生するため、摩耗による部品の耐久性や部品寿命の予測が課題のひとつです。

図2. ショベルと土壌の接触面における摩耗深度評価 図2. ショベルと土壌の接触面における摩耗深度評価

摩耗の予測は、難易度の高いシミュレーション課題ですが、Ansys LS-DYNAには、図3に示すように摩耗量を評価する機能が実装されています。この機能を用いたシミュレーションにより摩耗量を予測することで、実機試験を行う前に部品の耐久性や部品寿命の予測を行い、性能要求を満たすような設計改良の検討に役立ちます。

図図3. 物体(DEM要素)がシェル上を摺動する際の摩耗量評価 図3. 物体(DEM要素)がシェル上を摺動する際の摩耗量評価

制御された機構の構造評価

建設機械・農業機械は複雑な機構機能を有しており、機構の動作検討のために制御設計ソフトが使用されます。Ansys LS-DYNAでは、制御設計ソフトとの連成シミュレーションが可能です。

図4は、制御設計ソフトを主体とする連成解析の例です。制御設計ソフトが、10-4秒ごとにAnsys LS-DYNAとデータ交換を行い、Ansys LS-DYNAの中では時間ステップ10-5秒で計算します。Ansys LS-DYNAと制御設計ソフトとの連成解析の設定をすることで、たとえば、制御中のクレーンの構造解析を行うことができ、外力がかかった際の制御機構の動作保証性の向上検討や不慮の動作による事故防止策の検討に役立ちます。

図4. Ansys LS-DYNAと制御設計ソフトの連携の例 図4. Ansys LS-DYNAと制御設計ソフトの連携の例

泥、小石の影響評価

建設機械・農業機械は、乗用車と異なり、舗装されていない路面を走行します。泥や小石をモデル化した走行シミュレーションを実施することで、泥路における走行状態を予測し(図5)、必要な走行性能を確保するような検討が可能です。また、図6に示すようなチッピングなどの検討を実施できます。

図5. 泥路におけるタイヤの回転 図5. 泥路におけるタイヤの回転図6. 小石がぶつかったバンパーの摩耗量 ※2 図6. 小石がぶつかったバンパーの摩耗量 ※2

生産技術CAE

JSOLでは、さまざまな生産技術CAEソリューションを提供しています。建設機械・農業機械においても、この生産技術CAEは重要です。特に近年ではさまざまな材料・工法が提案されています。短納期・低コストでの開発を実現するためには、図7に示すプレス成形シミュレーションや、図8に示すパイプ曲げ成形シミュレーションをはじめとする生産技術CAEが欠かせません。(詳細は、生産技術CAEソリューションページをご覧ください)

図7. プレス成形シミュレーション 図7. プレス成形シミュレーション図8. パイプ曲げ成形シミュレーション 図8. パイプ曲げ成形シミュレーション

また、近年では生産工程の影響を考慮した上で構造解析を行う、プロセス連携シミュレーションが注目されています。たとえば、HYCRASHを用いた金属の加工硬化の考慮や、J-Composites / Fiber Mapperを用いた繊維強化樹脂の繊維方向の考慮が挙げられます。このような部品成形シミュレーションとのプロセス連携を行うことで、安全評価シミュレーションや摩耗評価シミュレーションなどの精度を向上することができ、開発期間の短縮、開発コストの削減が実現可能です。

機構解析・振動解析・疲労き裂進展解析

建設機械・農業機械において、機構部品の耐久性予測は重要であり、機構部品の応力評価、モータの振動影響評価、疲労き裂進展評価などが必要です。Ansys LS-DYNAやAnsys Mechanicalは、機構解析(図9)・振動解析(図10)・疲労き裂進展解析(図11)においても実績があります。

図9. Ansys LS-DYNAによるギアの機構解析 図9. Ansys LS-DYNAによるギアの機構解析図10. Ansys LS-DYNAによる高速モータの駆動解析(側方向への変位振動) 図10. Ansys LS-DYNAによる高速モータの駆動解析(側方向への変位振動)図11. Ansys Mechanicalによるき裂進展解析 図11. Ansys Mechanicalによるき裂進展解析

機構解析や振動解析、き裂進展解析を用いて耐久性評価や寿命予測を行うことで、機構部品の交換サイクルを事前に検討でき、建設機械・農業機械のより安全な運用設計が可能です。

バッテリーシミュレーション

脱炭素社会に向けて、乗用車の電動化が進んでいます。近年、JSOLでは、図12、図13に示すようなバッテリー解析の技術開発を推進しています。

図12. 電池モデル(厚み方向拡大)事故時のバッテリー短絡による発熱評価 図12. 電池モデル(厚み方向拡大)事故時のバッテリー短絡による発熱評価図13. 電流密度ベクトル充放電時の発熱特性評価 図13. 電流密度ベクトル充放電時の発熱特性評価

バッテリーシミュレーションのノウハウは、建設機械・農業機械の車載電池にも応用でき、性能要件を満たしつつ安全性を保障するバッテリーの開発を支援します。
(関連記事:ゼロからはじめるバッテリーシミュレーション〜実験からデータ処理、解析結果との比較まで〜

おわりに

JSOLは、30年以上、シミュレーションを用いたものづくりのサポートを行っており、特に自動車に関する解析においては高い実績を残しております。本記事でご紹介しましたように、乗用車向けのシミュレーションで培ったノウハウは、建設機械・農業機械の設計にも応用可能で、すでに数社の建設機械・農業機械のメーカー様にJSOLのソリューションを活用していただいています。

本記事でご紹介した事例の中でご興味のあるテーマをお持ちの方は、こちらからお気軽にご連絡ください。

  • ※1 NSafe®は、日本製鉄株式会社の登録商標です。
  • ※2 車体モデル提供:FHWA/NHTSA National Crash Analysis Center
*CONTACT

お問い合わせ

電話でのお問い合わせ:03-6261-7168 平日10:00〜17:00

※ お問い合わせページへアクセスできない場合

以下のアドレス宛にメールでお問い合わせください

cae-info@sci.jsol.co.jp

ページトップへ