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ユーザー事例:「楽に、そしてスマートに」高品質かつ洗練されたHondaのクルマを作る
ご利用企業様の声:本田技研工業株式会社様

カテゴリー
:その他
関連製品
JWELD

導入のメリット

  • ・精度の良い溶接コンプのばらつき予測
  • ・部品の構造上の弱点を、実物を作る前に定量値で評価

本田技研工業株式会社 外観

お話を伺った方

お話を伺った方

  • 本田技研工業株式会社 四輪事業本部 四輪開発センター
    生産技術統括部 車体生産技術部 デジタル技術課
    井手 隼人 氏

― 現在、どのようなお仕事やプロジェクトを担当されているのでしょうか。

井手 私の所属は、車体生産技術部門のデジタル領域になります。デジタル技術を使って、車体の生産技術を進化させる。簡単に言うと、デジタル技術でもっとクルマをスマートに作る開発を目指しています。近年は新たな試みとして、ホワイトボディの品質向上や現場での作業の効率化・負荷低減を目的とした、図面段階での不具合発生を事前に予測する手法開発しました。

― 「JWELD」の導入経緯と目的を教えてください。

井手 クルマの外観品質を保つには、ドアやフェンダー、フードの隙間と段差が一律であることが重要な要素の1つです。そのためにはまずボディを構成する部品を精度よくつくらなければなりません。試作に入る前の段階、すなわち実物を作る前図面の段階での部品の不具合発生を予測できれば、手戻りが少なく、新機種立ち上げ全体の工数を大きく抑えることができる。そこで、ボディ部品を組立てる際のクランプ・接合などの影響を組み合わせた評価が可能な「JWELD」を2022年に導入したんです。

― 「JWELD」のどのような点を評価していますか。

井手 「JWELD」導入前は、公差解析ソフトを使ってプレス単品公差をインプットしたバラつき予測をしていました。公差解析は計算がとても速い一方で、ジグセット時の板同士の干渉、溶接ガンによる加圧、溶接によるひずみなどの要素をうまく表現できないため、実態と合わない部分が出てしまいます。この問題を解決するため、複数の溶接組立のCAEソフトを評価したところ、寸法精度ばらつきの予測値がもっとも実測値に近かった「JWELD」を導入することに決めました。「JWELD」が優れていた点は、まず溶接解析を自動化できること。解析設定を専用のGUIで終えたら、出力される解析用ファイルはすべてテキスト形式です。そのため設定の変更が容易で、コマンドプロンプトから解析投入できる点も扱いやすいです。一番重要なのはシミュレーションの精度です。正寸形状に微小なバラつきを与えて繰り返し計算させたところ、他社と比較して一番実物の計測結果に近い予測結果でした。また、他社製品と比較して計算コストにも優位性があり、「JWELD」を採用しました。

― 「JWELD」の導入によって、どのような成果が得られましたか?

井手 JWELDとメッシュモーフィング機能を組み合わせて自動で繰り返し計算する予測システムを構築ました。このシステムにより、部品の構造上の弱点を、実物を作る前に発見できるようになり、製造管理の難しさを定量値で評価できるようになりました。構造上の弱点に対応するため、形状の変更や溶接打点位置の見直しなどの施策を生産技術のチームから設計チームに提案し、図面への意思入れを行ってきました。解析から得られた知見と過去機種の現物から得られた知見を照らし合わせることで、プレス領域で対応するのか、溶接領域で対応するのか、改善の方向性を示せるようになったことも良かった点の1つです。また、当社でもクルマの電動化を進めており、それに伴って車体と部品の構造が変化してきています。そのため、新しい構造であっても、弱点をシミュレーションで検出することのできるこのシステムは、今後の開発において非常に有用と考えます。

― 「JWELD」やJSOLに期待することはありますか。

井手 例えばですが、今回のツールを使って蓄積された知見を、AIなどと組み合わせることによって、工程仕様作成や予測にかかる時間を一気に短縮する。それができればうれしいですし、今後取り組んでいきたいと考えています。可能であれば解析ソフトの枠組みを超えた領域に一緒に取り組んでいきたいです。また、将来的には設計をしながら車一台分の領域でつくりやすさの検討も短期間に行えるようにしていきたいです。JSOL様は、プレス等の他領域のソルバも扱っていますので、関連ソフトと連携させた連成解析を行い、車一台分の生産技術の検討が行えるソフトを実現してほしいです。難しいとは思いますが、計算速度と精度を両立したものになると嬉しいです。

― 今後の展望についてお聞かせください。

井手 やりたいことは大きく分けて2つです。1つは、「JWELD」を含む各領域の品質予測ツールを使ったプロジェクトの認知度をもっと上げていくこと。将来的にはシミュレーションと実機の両方のテスト結果から、社内用の設計ガイドラインを作成していきたいと考えています。設計の段階から現物フェーズでの不具合をつぶしこむことで、設計への手戻りを少なくし、新機種業務全体の工数を削減できると考えています。また、社内には『製品開発完了=生産準備完了』という言葉があります。このプロジェクトがそれを実現するための、1つのツールになればいいなと思っています。
もう1つは、「かっこいいクルマをスマートにつくる」ことです。じっくりと時間とコストと手間を掛けて1台のクルマを作るのではなく、洗練された美しいクルマを、いかに余計な手間やコストを掛けずに作り上げていくか。このプロジェクトが広がっていけば実現可能だと思いますし、社内の開発スピード向上にも貢献できるのではないかと考えています。
また、シミュレーションを活用することで、これまで原因の分からなかった根深問題を解明し、根治することができれば現場が楽になります。現場を楽にする技術がいい技術だと私は思っていますし、現場の効率が上がれば、クルマの価格も下がり、多くの人に手が届きやすくなります。Hondaのかっこいい高品質なクルマを、より低価格で提供する。そんな未来を使って実現していきたいと思っています。

インタビュー協力

本田技研工業株式会社ロゴ

本田技研工業株式会社

二輪車、四輪車、パワープロダクツを中心に国内外で幅広く事業を展開する大手輸送機器メーカー

本 社  所 在 地 : 
東京都港区南青山2-1-1
設    立 : 
1948年(昭和23年)9月
資    本   金 : 
860億円
従  業  員  数   :   
連結 197,039人 / 単独 33,065人

(※2023年3月31日現在)

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