[解析事例] コンフォーマル冷却回路の最適化とLEDレンズ残留応力の低減
- 事例カテゴリ
- 冷却/レンズ成形/最適化
冷却回路最適化による残留応力の低減
概要
本事例では、東莞理工学院によるMoldex3Dを用いたコンフォーマル冷却回路設計の成功事例をご紹介いたします。
フレネルレンズにおけるレンズ表面の一方の面は滑面になっていますが、反対の面には同心円状に等間隔の溝が施され、これらの溝があることにより、特定のスペクトル領域に対する光学バンドパス(反射または屈折)の作用を実現できます。従来の研磨仕上げの光学機器の光学バンドパスフィルタは高価なものですが、フレネルレンズは効果的にコストを抑えることができます。
東莞理工学院はMoldex3Dを利用してフレネルレンズの冷却回路設計を最適化し、コンフォーマル冷却回路の設計に成功しました。これにより、製品冷却後の温度分布を均等にすることができ、直交実験と組み合わせて最適な成形プロセスを手に入れることで製品の成形サイクルを最適化させ、製品の応力を低減できました。その結果、社内生産コストの削減と、生産効率の改善が実現できました。
課題
- ・製品外観における鮮明なウェルドラインやフローマークなどの不具合の回避
- ・製品の表面精度に対する要求を高め、表面粗さを20nm未満に抑える
- ・製品冷却後の温度分布を均等にし成形サイクルを短縮
- ・製品内部の残留応力の低減
導入ソリューション
東莞理工学院はMoldex3Dのコンフォーマル冷却モジュールおよび応力モジュールを用いて、一般の冷却回路とコンフォーマル冷却回路を何度も検証してトポロジー最適化を行い、冷却後の製品温度を均等にする目的を果たしました。
更に、Moldex3Dによる光学および残留応力の予測を用いて成形プロセスの最適化を行いました。その結果、冷却回路の最適設計を迅速に突き止め、製品の研究開発サイクルを大幅な短縮の実現により産学官連携も果たしました。
成果
- ・最適なコンフォーマル冷却回路レイアウトを突き止め、製品冷却後温度分布の不均等の問題を解決
- ・製品冷却時間を15秒から13秒に短縮
- ・製品の寸法精度問題を解決
- ・製品の残留応力の低減および均等化
ケーススタディ
LEDとつなぎ合わせるLEDレンズは、光の利用効率および発光効率を高めるために使用されます。外観品質に対する要求が高く、ウェルドラインやフローマークなどの表面の欠陥を避けなければならず、表面粗さについても20 nm未満に抑えなければなりません。この研究において、最適化前の冷却回路設計(図1)では冷却後の温度分布が不均等になり、そり変形および熱残留応力がさらに大きくなるほか、冷却時間も長くなっていました。
図1. 最適化前の冷却回路設計
最適化前の冷却システムの温度および残留応力の分布は、それぞれ図2および図3のとおりです。これらの図を見ると熱量が球体の中心に集中しており、温度および残留応力の変化が大きく、光学部品においては欠陥とみなされることがわかります。
図2. 最適化前の冷却回路システムの温度分布
図3. 最適化前の冷却回路システムの残留応力
研究チームは3Dプリントしたコンフォーマル冷却回路を用いて冷却効果の最適化を行い、計2種類の異なるコンフォーマル冷却回路 [図4の (a) および (b) ] を開発しました。図4 (a) の設計は、コンフォーマル冷却回路をバッフルの代わりに使用しています。図4 (b) の設計では、ウェルドライン付近に冷却回路を1つ追加しています。
図4. コンフォーマル冷却回路設計
最適化された設計は、最適化前の設計と比べて冷却後の温度が低くなり、分布も均等になっています(図5)。見込み冷却時間は15秒から13秒に短縮し、13%減少しました。また、製品の残留応力についても改善が見られ(図6)、より高い光学性能を発揮できるようになりました。
図5. コンフォーマル冷却回路設計採用後の温度分布
図6. コンフォーマル冷却回路設計採用後の残留応力
研究では偏光器を用いた成形実験を実際に行い、製品の光学的特性を確定させました(その結果は図7のとおり)。光弾性縞は、ランナーとゲートにのみ現れています。これはフレネルレンズが優れた光学的品質を持ち、Moldex3Dのシミュレーション結果の実現可能性が検証されたことを示しています。
図7. 偏光器で実際に成形実験を行って製品の光学的特性を確定
結論
東莞理工学院はMoldex3Dを利用した解析により、コンフォーマル冷却回路の冷却設計を最適化し、蓄熱問題を解決しました。冷却時間を15秒から13秒に短縮させ、同時に製品の残留応力および屈折率も改善することで、最高の光学的品質を手に入れました。
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