[解析事例] Moldex3Dによるコストと時間の低減(Shape社)
- 事例カテゴリ
- 充填/最適化
Moldex3Dの自動車部品(フェンダー)への活用事例
- 導入企業様 プロフィール
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顧客名: Shape Corporation 国: インド、アメリカ、ヨーロッパ、アジア 産業: 自動車部品メーカー 解決方法: Moldex3D eDesign Shape Engineering Servicesは、衝撃エネルギー制御システムにおけるグローバルリーダーであるNet Shape Engineering LLC/ Shape Corp., の子会社です。アメリカ合衆国ミシガン州グランドヘーブンに本社を置くShape Corp.は、プラスチックおよび金属成形の設計からエンジニアリング、試験、製造までを担うフルサービスサプライヤーで、北米はもちろんヨーロッパやアジアにも多くの顧客を持つ企業です。なかでも、高度先進ロール成形と射出成形においてはパイオニアと言える存在です。Shapeはこの専門技術をエネルギー制御システムに生かし、さらに自動車、オフィス家具、医療、農業 など、多種多様な分野に参入しています。
(出典)
概要
今回ご紹介するのは、Moldex3Dの自動車部品(フェンダー)への活用です。フェンダーは自動車業界で非常に幅広く利用されている保護パーツで、自動車に限らず様々な車両に取り入れられています。基本的にホイール上部に取り付けられるフェンダーは、高速衝突時および小石や砂などの異物から車両を保護する役割を担います。自動車業界は軽量化のために部品をより薄く、軽くする方向に進んでいますが、同時に部品の耐久性を維持しなくてはなりません。
今回のケースではバルブゲートシステムを利用し、部品の複数箇所にバルブゲートを配置して充填パターンを最適化しエアトラップ削減や軽量化の検討を行いました。工程の解析にあたっては、Shellでメッシュを作成したモデルを使用して、ウェルドラインの最小化と部品全体のフローパターン安定化のためにゲート位置と板厚を変更し検討しました。
Moldex3Dでの複数の解析実行を経て最適化されたデザインは、最終的な部品形状に反映されました。また、Shape社の技術者チームはMoldex3D eDesignを活用して3Dメッシュを作成し、Shellを用いた場合の結果と3Dの結果を比較しました。その結果、Moldex3D Shellの解析結果がもつ高い信頼性が確認できたため、Shellでの検討を利用し短時間での設計変更が可能となりました。さらに、Moldex3D eDesignの3D解析により、金型の製作前に最終的な最適設計を確認することができました。
課題
部品設計および金型設計段階において、下記の課題が持ち上がりました。
- ・理想的なバルブゲート設計によるフローバランスの向上
- ・部品重量を要求される範囲内に抑えながらも、確実に充填されるような肉厚の検討
- ・超過重量の低減による指定重量への適合
- ・金型修正と金型試作回数の削減
メルトフロント(時間) -75%:
部品の強度不足につながるエアトラップおよびウェルドライン(赤色)
メルトフロント(時間) -100%:
部品左側の充填に続いて右側を充填 部品右側にはショートショットの問題を確認
解決策
課題を克服し、最初のゴールにたどり着くまでに、ゲート数、ゲート位置、肉厚変更などの条件を変えて流動性確保のため幾度も充填解析を行いました。しかし、充填解析に与えられた時間はわずか2週間であったため、短期間で結果を出すことが求められました。
Shape社は、リモート計算を使ってMoldex3D Shell メッシュ解析を構築、実行しました。そのため、技術打ち合わせの合間に次の計算を流すことも可能となりました。ワークフローが大きく改善されたことにより、Shape社は、限られた時間の中で迅速に理想的な充填シナリオに到達しました。
さらに Moldex3D eDesign 3D解析を使って最終設計の評価を行いました。3D解析計算の結果は、実際の金型を使ったトライアルの結果と高い精度で合致しました。
ケーススタディ
まず、Shape社は基本的なゲート位置を使って解析を行い、基準となるフローパターン、必要な圧力および重量を導き出しました。この解析には、メッシュ品質を下げて計算を高速化するMoldex3Dのオプションを利用し、さらに8個のCPUをフル活用したことで解析は短期間で完了しました。続いて、初期解析の結果から、Shape社はゲート位置とゲート点数を調整しました。重量に制限があったため、フローリーダーの使用なしには理想的な充填シナリオをそのまま適用できませんでした。フローリーダーに関する各調整は、Shape社の技術者が提案し、同社技術者チームと顧客の承認を得て行われました。
また、開発工程全体の期間を大幅に短縮する必要に迫られたShape社の技術者チームは、モデルをShell要素に切り替えました。これにより、迅速に結果を取得し、かつ、1回の変更につき20回の反復計算を必要とするフローリーダーの変更に対応する時間も捻出しました。全ての要件を満たす結果が得られるまで、ゲート位置の変更やフローリーダーの板厚調整と位置変更を繰返し行いました。最終的に、2000トン以下という要件を満たしながら、ほぼ同時に部品左右の充填が終了する方法を見付け、充填時間の差がわずか0.2秒に短縮できました。また、エアトラップも管理可能な範囲に収め、フィードに使用する外部ランナーの数を可能な限り少なくすることでポストプロセスの作業回数を抑えることに成功しました。
Moldex3D Shellメッシュを使用したことで、Shape社は元のパーツの解析実行後に、フローリーダーの追加やパーツの輪郭を移動するなど必要とされる改良を行い、非常に短い期間で理想的な結果を得ることに成功しました。
Shape社の技術者チームは解析結果を部品設計担当者に伝え、部品の最終設計で考慮すべき点をフィードバックしました。設計担当から最終設計を受け取ると、技術者チームはMoldex3D eDesign 3Dを使って最終設計を解析しました。同時に、元のShellモデルと実際の金型による実験結果とのクロスチェックを行ったところ、Shellモデルによる解析結果と3Dモデルによる解析結果は実際の試作結果を精度よく再現していることが確認できました。
解析結果は、フローパターン、圧力、重量など多くの点で実際の試作結果と合致していました
利点
Moldex3D Shell および3Dモデル解析を使用することで、Shape社は理想的なフローパターンを見付け出し、ゲート数とゲート位置を最適化することができました。加えて、重量低減も可能にしました。このようにして、Shape社は金型改造または修正にかかったであろう莫大な費用の削減に成功しました。
- 想定される削減費用(推定)
- A:金型試作費用($7,200) + B:人件費($33,000) + C:金型修正費用($60,000) = $100,200 USD
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削減項目 削減内容 削減額(USD) A:金型試作費用 設計変更にあたり、充填解析で確認した問題解決に要すると見込まれた金型試作回数について、約6回分を削減できる。 金型試作6回:
$1,200 * 6 = $7,200B:人件費 従来の部品製造では充填不良修正のためトリミング作業を要した。また、1回のショットにつき2名の作業者を必要とした。今回はトリミング作業が不要となり、1回のショットにつき1名の作業員で作業が可能となった。 工員1名:
$20 * 1,650 時間 = $33,000C:金型修正費用 従来の部品製造では充填不良修正のためトリミング作業を要した。また、1回のショットにつき2名の作業者を必要とした。今回はトリミング作業が不要となり、1回のショットにつき1名の作業員で作業が可能となった。Moldex3Dを用いた設計変更・最適化により、充填時の問題解決に要する2〜3回のホットランナーの移動およびゲート位置の変更工程が不要となった。この工程は2キャビティにつき $10,000 USDを見積もることができる。 金型修正3回:
$10,000 * 3 * 2 = $60,000
さらに、Moldex3D の計算パラメーターオプション(マルチコア、リモート計算、高速解析)により、Shape社は迅速かつ効率的に解析結果を得ることができました。流動解析結果が手元にあるため、Shape社の顧客との設計変更の交渉がスムーズに行えたほか、Shape社による金型製作も期間内に完了しました。金型製作後のトライアル時に、実際の充填状態を確認したところ、その結果が Moldex3D の解析による予測とほぼ一致しました。
まとめ
結論として、Moldex3D CAEツールがなければ、今回Shape社が品質を保ちながら、生産コストを下げるという目標を達成することは難しかったでしょう。Moldex3Dのシミュレーション技術は、最適な結果を得るのに役立ち、潜在的な生産コストを大幅に削減することに成功しました。このケースは、Moldex3Dによる解析が、複雑で困難な設計と製造の問題を解決するための最適化検討を示す好事例となりました。
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