「名前が何よ。バラをバラと呼ばなくても、その芳しさは変わらないわ」
ロミオとジュリエットの悲劇は、反目しあう家名が原因となるが、シェイクスピアは当時、造語が盛んに行われていたことを皮肉ってジュリエットにこう言わせたのかもしれない。
ところで、構造力学では紛らわしい呼び名がある。それはカスチリアーノ(Castigliano)の定理の呼び名である。その紹介にはちょっとした準備がいる。
一組の荷重 P1,P2,・・・,Pnにより一組の対応する変位q1,q2,・・・,qn が生じる骨組を考える。歪エネルギーをW、不静定力をX1,X2,・・・,Xk とする。線形弾性で微小変形の範囲では次の式が成立する。(不静定力の説明や次式の証明は省略する)
i=1,・・,n (1)
i=1,・・,n (2)
i=1,・・,k (3)
これらを用いて骨組を解くには二つのルートがある。
A:歪エネルギーW が変位qの2次形式で与えられるなら、(1)式は変位qを未知数とする連立一次方程式となり、それを解くことで変位が求まる。
B:歪エネルギーW が荷重Pと不静定力Xとの2次形式で与えられる場合、(3)式を解くことで不静定力X を荷重Pの1次式として表すことができる。これにより一種の静定構造に置き換えられ全部材力が求まる。又、変位は(2)式から求まる。
相当に荒っぽい話であるが、前者は変形法または剛性法と呼ばれる解法に、後者Bは応力法と呼ばれる解法につながる。ちなみに日本で普及しているこの「変形法」「応力法」の訳語は鷲尾健三による[1]。
本題に入ろう。