
CAE Technical Library 橘サイバー研究室 - CAE技術情報ライブラリ
vol.33 スナップスルー(Snap-Through)と非線形計画法(nonlinear programming)
−話せば長いことながら入り口だけでも−
2014年7月2日
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以前にもふれたが(Vol.18, 曲がってもいいじゃないか)3年終了時点で単位が大分足りない学生がいた。
「卒論と卒業設計ができても単位不足で卒業できないかも知れない。4年では少し多めに単位をとるように」と言った。その学生が卒業のときに「先生のおかげで4単位も多くとった」と口をとがらせた。
4単位分だけアルバイトの時間が減ったという。人それぞれの事情がある。
私のようなうっかり者にとっては有難いアドバイスも、絶妙のコントロールで日々過ごしている者にとってはよけいなお節介だった。大学は小学校ではない。立派に自己責任のとれる人の集まりだ。
そして、天体も、この学生と同様に絶妙のコントロールで運行している、と言えなくもない[1]。
しかし天体はすこし大袈裟なので図1のトラスをとりあげる。それも静的な問題に限定しよう。このトラスは体育館をイメージしてもよい。山型の屋根をもち、そのハラミダシをおさえる両側の柱を右側の2本の柱で代表している。
このトラスの節点1に強制変位Δを下向きに与えた場合、節点1の反力Rについて考えよう。
未知変位は節点1の水平変位と節点2の水平および鉛直変位であり、自由度は3となる。
それらを便宜上X(1), X(2), X(3)で表すことにする。材料は弾性Eとし、断面積はすべてAとしよう。
図1 簡単なトラス構造 [2]
「なーんだ、簡単な問題だ」
が・・・これがなかなかの難物である。
図2が解析結果であり節点1の反力Rと強制変位Δの関係を表しているのが「実線」である[2]。
(とりあえずは実線以外は無視) 「エー、何これ?」
図2 反力Rと強制変位Δとの関係 [2]
まーまー、落ち着いて。おおまかな話の流れは次のようになる。
1)節点1の下向きの強制変位Δが1m過ぎるあたりから屋根の勾配がゆるくなるので、反力Rは下がりはじめる。やがて、Δが2mになると屋根は水平になり反力Rは0となる。(図2では点A)
2)さらに強制変位Δを増やすと反力は負に変じる。つまり節点1は下に引張られるわけだ。Δが4mになるとちょうど上下対称の位置にくるので、反力Rは再び0となる(図2では点B)。
3)さらに強制変位を増やすと、こんどは節点2が内側(左側)に引張られはじめる。やがて2本の柱が一直線になったとき水平抵抗は0となり反力Rも0となる。(図2では点C) その後しばらく反力Rは負となる。
4)節点2が結果的に0.5mだけ左に移動したとき(図2では点D)、再び反力Rは0となり、それ以降は上昇しつづける。
(*注 点Cや点Dの正確な位置は実際に解析しないとわからない)
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