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知的好奇心旺盛な前田建設様からのお声掛けに触発されエンジニア魂に火がついてしまったJSOL

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今回、2024年11月8日(金)に開催された第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)の特別講演「前田建設ファンタジー営業部における異業種共創の具体例 〜JSOL共にオープンイノベーションのマネジメントを考える〜」で語られた、JSOLらしいエピソードをご紹介します。

前田建設ファンタジー営業部様の知的好奇心に触発され、業務外でも本気の解析技術で応えるJSOL。エンジニア魂に火がついてしまったJSOLと新たな知見獲得の可能性を見いだした前田建設様との活動は、共著論文の発表につながりました。

JSOLは「技術的な面白さ」に喜びを求める技術者集団です。休むことなく技術開発に取り組むJSOLの姿勢の1例としてご紹介します。

JSOLを巻き込んでくださった前田建設ファンタジー営業部(JIMTOF2024特別講演の振り返り)

アニメ、マンガ、ゲームといった空想世界に存在する、特徴ある建造物を本当に受注し現状の技術および材料で建設するとしたらどうなるか、を大真面目に検討し、成果を工期、工費で公開されてきた前田建設ファンタジー営業部様。2003年2月に発足した前田建設様のホームページ企画のこの名称は、Webコンテンツだけでなく、書籍や舞台、また映画をとおしてご存じの方もいらっしゃると思います。

さて、今回ご紹介するエピソードは、前田建設様によるJIMTOF2024特別講演から始まります。JSOLは、2010年公開の 『機動戦士ガンダム』編 と2020年2月公開の 映画『ファンタジー営業部』へ の広報協力のお話をいただいたご縁から、JIMTOF2024特別講演の第2部に登壇し、投げかけられた質問に回答しながら当時を振り返りました。

JIMTOF2024特別講演に前田建設様とともに登壇したJSOLJIMTOF2024特別講演に前田建設様とともに登壇したJSOL

Q:「ファンタジー営業部」に巻き込まれたきっかけは何でしたか?

Q:「ファンタジー営業部」の企画を聞いた時の印象は?

Q:上司や会社は、どんな反応でしたか?

きっかけは、2010年公開の『機動戦士ガンダム』編の中で、象徴的なシーンとして取りあげられた地球連邦軍の建造物解析(トーチカの破壊)のお話をいただいたことでした。当社代表にじかにご連絡をいただき所属部門に連絡が入った際、技術的な好奇心から、とにかく面白い!ぜひやりたい!の気持ちを強く持ちました。当時の上司(現 執行役員)とともに臨んだ前田建設様との最初の打ち合わせで、「自動車衝突解析のJSOLさんにぜひお願いしたい」と評価をいただき、われわれの解析技術が普段の業務とは違う形で世に出せるのでは、の気持ちが膨らみました。
一方、お受けするには社内承認が必要です。幸いなことに、前述の上司は部下のモチベーションに理解があり、その場で即決。業務に支障を出さないことを条件に、業務時間内に対応する許可を得ることがきました。
反応は正直、予想以上でした。社内からは「やりたかったー!」「うらやましすぎる!」「こんなアプローチもあったのでは?」など、たくさんの声をもらったほか、お客様からも「みたよ〜」「面白いことやっているね!」など、好意的な声をいただくことができました。
こうしてファンタジー営業部様に触発されエンジニア魂に火がついてしまったJSOLは、2020年2月公開の映画『ファンタジー営業部』への広報協力として『劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいか』編、続いて『ロケットパンチ』編のお話をいただいたころには、初代メンバーだけでなく「今度は自分がやる!」と心に決めた有志の輪がさらに広がることになりました。

JIMTOF特別講演の前田建設様資料JIMTOF特別講演の前田建設様資料

こうして振り返ると、JIMTOF2024特別講演の第1部において、「ファンタジー営業部」を「強烈な(対価ゼロ)自律型組織マネジメントの試行」と称され、さらにその本質を「動機の生成と維持」にあるとされた前田建設様の解説につながっていたことをあらためて実感した瞬間でした。

JIMTOF特別講演の前田建設様資料JIMTOF特別講演の前田建設様資料

ここで、あらためて前田建設様との活動と共著論文の発表に至るお話をご紹介します。

技術的な好奇心と社会貢献が原動力

2010年にお声がけいただいたトーチカの破壊解析の際、JSOLは躊躇することなく「ご一緒させてください」と即答した際、決め手になったのは、前述の技術的な好奇心だけではありませんでした。破壊解析のご依頼とともにいただいた「たたき壊されるトーチカの中に詰める地球連邦軍の兵士を助ける方法はないか」の一言に、自動車衝突の安全解析と同じ「社会貢献」につながる感覚を持ったためです。
この解析作業は技術的に難しいものではなかったので一気に進められる程度の内容でしたが、社内外で予想を上回る好意的な反応をいただくことができました。この評価が次のお声掛けの下地になり、JSOL内での「次は自分が!」の機運が高まっていきました。

ここまでやるか!JSOL

そして9年後、映画『ファンタジー営業部』の広報協力としてお声掛けいただいた、『劇中の土質屋山田さんはどれくらい正しいか』編では、映画中で登場する「防御力向上のためにマジンガーZの格納庫のプール(水)を土に変更してはどうか」という、掘削オタクの山田さんの提案が解析対象でした。ここでは、DEM(個別要素法)による土粒子(礫)のモデル化への興味から、応諾は即答となりました。土木系の業務実績は多くありませんでしたが、土石流の解析経験を元に「やってみたい」の気持ちが前面に出た形です。

最初の企画から間も空き、解析の対象も変わったことで担当には新たな立候補者が立ちました。各回で担当者は入れ替わっていますが、解析技術で社会に貢献したい気持ちは共通です。立候補したメンバーたちがアイデアを共有しながら解析作業を進めていきました。こうして、前田建設様に巻き込まれた形からスタートした活動は、JSOL内でも認知され技術者の前向きな姿勢を確実に後押しすることにつながっていきました。

これらJSOLの姿勢と解析結果が、土質分野の専門家の目に留まるとともに、JSOLの当たり前に「ここまでやるか」と驚いていただくことになりました(異業種座談会:2021年 )。

過去の記事で紹介した解析結果の例 粒状材料のせん断挙動とせん断層に与える粒子形状の影響(堆積物の崩れ方)

過去の記事で紹介した解析結果の例 粒状材料のせん断挙動とせん断層に与える粒子形状の影響(堆積物の崩れ方)

過去の記事で紹介した解析結果の例 粒状材料のせん断挙動とせん断層に与える粒子形状の影響(堆積物の崩れ方)過去の記事で紹介した解析結果の例
粒状材料のせん断挙動とせん断層に与える粒子形状の影響(堆積物の崩れ方)

好奇心から技術開発に発展

異業種座談会での技術者同士の意見交換をきっかけに、前田建設様の技術とJSOLの技術を相互に補完し、土質分野の新たな知見確認に向けた情報共有を継続することになりました。こうして技術者同士が連携した後は一気に話が進み、翌2022年には解析業務の受託につながりました。
2010年の「お金や仕事にはなりませんが・・・」のお声掛けに対して、「おもしろそうです。ぜひやらせてください!」の好奇心で始めた活動が、技術的に評価された場面でした。技術の開発や展開では業界業種の理解は欠かせません。今回、土質分野への技術展開を導いてくださった前田建設様にあらためて感謝申し上げます。

過去の記事で紹介した解析結果の例 地固め最終状態における粒子のダメージ量(粒子結合が受けた破断量)過去の記事で紹介した解析結果の例
地固め最終状態における粒子のダメージ量(粒子結合が受けた破断量)

技術成果は共著論文として発表

2019年に実施した、映画『ファンタジー営業部』の広報協力での土粒子(礫)のモデル化から5年たった、2024年9月5日(木)、前田建設様から評価いただいた一連の成果は、土木学会全国大会にて共著論文として発表することができました。
2010年にいただいた前田建設ファンタジー営業部様から初めてのお声掛けから14年、仕事仲間と楽しく取り組んだ活動は業務になり、論文発表に至りました。また、『ロケットパンチ』編で実施した超合金Zの物性評価では、JSOL社員のお子さまが描いた絵から3Dデータを起こしてモデル化した未知の怪獣「クーハイヤン」まで世に出すなど、印象深い活動になりました。

図7 未知の怪獣「クーハイヤン」衝突解析結果(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション

図7 未知の怪獣「クーハイヤン」衝突解析結果
©前田建設/Team F ©ダイナミック企画・東映アニメーション

さいごに

JSOLの取り組み姿勢を表すエピソードとして、JIMTOF2024特別講演の会場でいただいたご質問とJSOLの回答をご紹介します。

Q     :今回のような無償対応は、大手企業からの依頼だからだと思う。
中小企業からの依頼でもJSOLは受けるのか?

JSOL:依頼先の規模が関係することはありません。
JSOLは「技術的な面白さ」に喜びを求める技術者集団です。
技術的な興味や、私たちの技術がお役に立てられるか、を大切にしています。

JSOLは、社会に貢献できるよう、絶え間なく技術開発に取り組んでいます。
ホームページその他でご紹介していないソリューションであっても、お困りごとがあればお気軽にお声がけください。

参考文献
  • 「DEM解析を用いたベントナイト混合土の締固め過程の再現」
    本研究は、ベントナイト混合土の締固めによる遮水性発生メカニズムを解明するため、締固め試験の際に初期含水比(飽和度)の違いによる間隙構造形成プロセスの差を生む、粒子配列状態をDEM解析によるシミュレーションで再現し、ベントナイト混合土の初期含水比による構造の違いや透水計数への影響を検討したものです。

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