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2011.05.02

陰解法機能の特徴 PARTU

カテゴリー
: 構造解析
関連製品
LS-DYNA

ちょうど一年前、陰解法機能の特徴と利点、利用上の注意点を説明しました。今回は2010年弊社ユーザー会でLSTC社長 Dr. John O. Hallquist氏からも紹介された、ルーフクラッシュ解析の例題を通してもう少し具体的に利用上の注意点を説明します。

陽解法でモデル構築ができていて、ちょっと陰解法を試してみようと思われている方の助けになればと思います。

検証モデル1 約48万節点 検証モデル1 約48万節点

※ルーフクラッシュ(耐性試験)解析では、自動車横転時の安全性(生存空間の確保)を評価します。
※オリジナルモデルはNCAC/GWUの提供する自動車衝突解析モデル。LSTC社がルーフクラッシュ解析陰解法モデルに変更。

陰解法を有効に使うには

陰解法は、陽解法と比べ時間ステップを100倍、1000倍大きくすることができるため、静的な問題を解くのに有利です。ただし、各時間ステップで収束計算をします。収束性(収束計算回数)が問題によって異なるため、計算時間を事前に推測することが難しいという不利な点があります。計算時間が分からないにしても、無駄な収束計算はしたくない、というのが本音です。

必要メモリは陽解法の10倍以上

陽解法モデルを陰解法モデルにすることは非常に簡単です。次のカードを陽解法モデルに追加するだけです。

*CONTROL_IMPLICIT_GENERAL
IMFLAG=1(0:陽解法、1:陰解法)、DT0:時間増分

まず、計算実行する際に、最初に気づく重要なことは、陰解法と陽解法の計算に必要なメモリ量の違いです。陰解法は陽解法と比べ非常にたくさんのメモリを使用します。今回の検証モデルでは、陽解法700Mバイトに対し、陰解法は8Gバイト弱と、約10倍。

陰解法による解析を実施するのに十分なハードウェアを用意する必要があります。少なくとも2〜3割の余裕を持たせてください。

計算時間は8コアで21時間

今回の陰解法検証モデルを、8コアのLinux機で計算しました。1計算あたり21時間かかりました。
本計算の前にモデルチェックのために何度か固有値解析を実施しました。固有値計算は1計算あたり15分程度です。

ルーフクラッシュテストは現象時間が10秒程度です。陽解法により10秒の現象を計算すると、165時間程度かかります。現実的ではないため、テスト時間を短縮するなどして計算時間を短縮するのが一般的です。

並列数による計算時間の違いについては「陰解法機能の特徴と利点」をご参照ください。

固有値解析によるモデルチェック

不安定な構造が計算の収束性を悪化させますが、その特定方法として固有値解析をお奨めします。これも設定は非常に簡単です。次のカードを先の陰解法モデルに追加するだけです。

*CONTROL_IMPLICIT_EIGENVALUE
NEIG:固有値出力数

特に以下の(1)(2)(3)の低周波数のモードは簡単に見つけることができます。(4)の結合不足についても比較的簡単に見つけることができます。

固有値解析をする際の注意点1

浮遊パートや不安定構造の数が不明確な場合は、モデルを分割して問題を特定していくことが、作業性改善のポイントです。

固有値解析をする際の注意点2

LS-DYNAの固有値解析では、初期状態で部品間に接触ありと判定されると、固着させた上で計算されます。不安定構造を見つけるためには、接触定義(*contact_automatic_single_surfaceなど)を削除した上で固有値解析をした方が視覚的に分かりやすいため、効率的です。接触なしで計算することが、モデルチェックする際の作業性改善のポイントです。

初期めり込みの影響

また、初期状態で部品間にめり込みや貫通がある場合、計算の収束性を著しく悪化させることがあります。陽解法では問題がなくても、陰解法では悪影響を及ぼす、ということもあります。めり込みや貫通がないモデルを作成することも、収束性改善のポイントです。

まとめ

以上収束性改善と作業性改善のポイントについて説明しました。さらに詳しい理論、新機能、解析ノウハウについては、弊社ではステップアップセミナー「LS-DYNAによる陰解法入門」をご用意しております。参加お待ちしております。

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