
[解析事例] 金属の電子比熱解析
- 量子化学・DFT
- 熱
- マテリアルサイエンス
目的と手法
金属の電子比熱は、極低温における電子状態を知る上で重要な物理量です。得られる比熱の情報からフェルミ面の状態密度、電子の熱的な有効質量を見積もることができます。電子比熱 CelV は以下の式で与えられます。
ここで、εFはフェルミエネルギー、De(εF)はフェルミ面における電子状態密度です。この式から分かるように電子比熱はフェルミ面での状態密度に比例します。これは、フェルミ面を挟む数ケルビン程度(低温での計測時における温度程度)の範囲にある電子だけが電子比熱に寄与するためです。しかし実際の数値計算で計算上求められるフェルミ面での状態密度を用いた評価では、近似が粗くなってしまいます。
そこで、状態密度のエネルギー依存性を考慮して、以下の式に戻って数値的な積分を取ることで解析を行いました。ここでƒF(ε)はフェルミ・ディラック分布関数です。
SIESTAモデラでは状態密度を計算し可視化することができます。ここではLi/K/Al/Cuの金属の状態密度の計算と、電子の1モルあたりの比熱容量と電子比熱係数を求めた事例を紹介します。
解析結果
図1にSIESTAモデラから得られた電子状態密度の結果を示します。図中の赤線はフェルミエネルギーを示しています。この状態密度から得られた電子比熱を図2に示します。いずれの比熱曲線もほぼ線形に変化していることが判ります。図3に各温度における電子比熱をその温度で割った電子比熱定数の結果を文献値(C.Kittel:固体物理学入門)と比較したグラフを示します。
図1 左上から時計回りにLi/K/Cu/Alの電子状態密度
図2 Li/K/Al/Cuの電子比熱の温度依存性
図3 Li/K/Al/Cuの電子比熱定数
事例一覧
- ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。