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[活用事例] 非経口バイアル瓶の完全性を目的としたX線CTによるストッパーの封止工程の可視化

分野
  • 工業分野
モジュール
  • ScanIP、CAD Module
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薬剤を密封するガラス製バイアル瓶の
密封状態をSimplewareを用いて分析

非経口薬剤を入れるガラス製のバイアル瓶を密封するのに使われる密封方式として最も一般的なものは、圧着したアルミニウムバンドによって固定されたエラストマーストッパーです。この密封方式は微生物汚染を含む環境要因に対し収容物を保護するために使われています。X線マイクロCT測定により、エラストマーストッパーとアルミニウムバンドの両方の非経口バイアルの密封工程前後の位置に関して詳細な情報を確認することが可能です。この情報は、密封の完全性を評価し、密封工程で密封の完全性を確保するのに改善が必要であるかどうかを見極めるのに活用できます。本事例はSimpleware ソフトウェアを用い、Micro Photonicsと共同プロジェクトの一部としてマイクロCTデータを正確にモデル化・分析するのに活用された事例です。

データのご提供
Micro Photonics, Inc., https://www.microphotonics.com/, Seth Hogg様, Benjamin Ache様

画像の取得

密封工程が完了する前後で生産ラインから取り除かれた2つのバイアルに対して高解像度のX線マイクロCTスキャンを実施しました。1つ目のバイアルは、エラストマーストッパーとアルミニウムバンドが適切に配置され、密封前を示しています。アルミニウムバンドは圧着しておらず、ストッパーは圧縮されていません。2つ目のバイアルは、閉じられ、密封された形状を示し、アルミニウムバンドは完全に圧着していることで、ストッパーが圧縮され、バイアルを密封しています。
撮像は、マイクロCTのBruker社SkyScan 1275によって行われ、画像は1ボクセルサイズ25μで、連続断面画像として再構成されました。

密封過程における2種類の工程での非経口バイアル瓶の高解像度のマイクロCTスキャン画像。左のスキャン画像は、密封前で、右の画像は、密封後を示している。 密封過程における2種類の工程での非経口バイアル瓶の高解像度のマイクロCTスキャン画像。左のスキャン画像は、密封前で、右の画像は、密封後を示している。

画像処理とセグメンテーション

各バイアルの画像は、Simpleware ScanIPにbitmap画像データのスライスデータとして読み込まれました。バイアルは、ストッパーとアルミニウムシール材の形状にThresholdツール、Morphologicalフィルタ、3D editingツールを組み合わせて用いることで分離されました。以降の処理に先立ちセグメンテーション後のデータの表面を滑らかにするため、スムージングフィルタを適用しています。

Simplewareソフトウェアを使用して作成された、アルミニウムシール材が所定の位置に配置されている密封前の形状のバイアル(左)と、圧縮されていないストッパーを示すためにアルミニウムシール材を非表示にしたバイアル(右)。 Simplewareソフトウェアを使用して作成された、アルミニウムシール材が所定の位置に配置されている密封前の形状のバイアル(左)と、圧縮されていないストッパーを示すためにアルミニウムシール材を非表示にしたバイアル(右)。

密封工程の特性

バイアル形状からセグメンテーションされたストッパーとバンドをSTLファイルに出力し、比較目的のため、密封前のバイアルの形状を含むプロジェクトファイルにインポートしました。Simpleware CADモジュールを用いて、密閉前と後のストッパーを比較し、ストッパーの変形を定量化するため表面偏差分析を実施しました。表面偏差分析過程において、密封後のバイアル上部に接しているストッパーの表面と密封前のストッパーの同等な表面の位置合わせを実施しています。

参照表面として密封前のストッパーを用い、密封前のストッパー上のサンプリング点から変形したストッパーの最近傍点の距離を計測することで表面偏差が計測され、計測距離は、参照のストッパー上にカラーマップとして表示されました。

結果

密封前のストッパーとバイアルの画像の上に変形したストッパーを重ねることで、密封工程の間にストッパーがどのように変形するかに関する定量的情報が得られました。ストッパーの上部が圧縮され、バイアルの上部と端の縁にわたって外側に変形させます。バイアルのネック部に位置するストッパーの一部は密封工程の間にバイアルの下方へ押されたことが分かります。

A) 変形したストッパーの断面(黄緑)、密封前のストッパー(赤)、バイアル瓶の断面 B) 変形したアルミニウムシール材の断面(黄緑) 密封前のシール材(赤)、バイアル瓶の断面 C) 密封前のストッパーとシール材 D) 密封後のストッパーとシール材 図に表示されている計測は、密封後が密封前と比較され、キャップの圧縮が22%あることを示唆している。 A) 変形したストッパーの断面(黄緑)、密封前のストッパー(赤)、バイアル瓶の断面 B) 変形したアルミニウムシール材の断面(黄緑) 密封前のシール材(赤)、バイアル瓶の断面 C) 密封前のストッパーとシール材 D) 密封後のストッパーとシール材 図に表示されている計測は、密封後が密封前と比較され、キャップの圧縮が22%あることを示唆している。

Simplewareソフトウェアの表面偏差マップは、変形を定量化します。ストッパーの最大変形量は1.07 mmでした。最大変形が起こった領域は、ストッパーの上部と一致しました。ストッパー側壁の横方向変形は均一ではなく、最大の横方向変形はストッパーの片側に集中していることが観察されました。

A) 密封後の変形したストッパー(半透明の黄緑) 密封前のストッパー(赤); B) C)とD) 密封前のストッパーを参照サーフェースとして密封後のストッパーの変形を図解したカラーマップ A) 密封後の変形したストッパー(半透明の黄緑) 密封前のストッパー(赤); B) C)とD) 密封前のストッパーを参照サーフェースとして密封後のストッパーの変形を図解したカラーマップ

データはアルミニウムバンドの変形(圧着)が均一ではなかったことを示しました。

密封前のアルミニウムバンドの底面(左), 密封後の底面(右). 密封後の圧着が同型でないことが分かる。 密封前のアルミニウムバンドの底面(左), 密封後の底面(右). 密封後の圧着が同型でないことが分かる。

この事例研究は、非経口バイアルの密封工程で、非破壊的にエラストマーキャップとシール材の変形を定量化し、評価する方法を例証しています。変形値と実際のバイアルの密封品質を関連付けるのにさらなる研究が必要です。このモデルをさらに発展させていくならば、密封後のバイアルでの異なるバイアルキャッピングマシンの設定での追加実験が求められるでしょう。追加の例は、ここで説明された方法を用いて、得た結果と比較しながら従来の容器の密封完全性のテストを行う必要があります。この結果の関連性により、密封工程で、ストッパーとバンドの変形が密封の完全性にどう影響を与えるのかについて、さらなる理解を得ることができるでしょう。

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