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[解析事例] 金型業界におけるコンフォーマル冷却の普及について

事例カテゴリ
冷却/変形

コンフォーマル冷却金型を用いた反り変形改善事例

Grand Dynasty Industrial Co., Ltd(GDI)は、1984年3月、林忠義氏(Lawrence Lin 博士の父)によって設立されました。当時、台湾の他の多くの小さな会社と同様に、国内市場を対象とした家族経営の射出成形業としてスタートしました。林博士(社長)は、1989年にマサチューセッツ州ローウェルのマサチューセッツ大学化学部でポリマー科学とプラスチック工学の博士号を取得して卒業し、ボストン地区のフォーチュン500企業の研究所で数年間勤務した後、1993年11月にGDIに入社しました。( Source)

導入企業様 プロフィール

概要

冷却水路の多くは、ドリル方式を採用した従来の金型で、深部にバッフル/バブラーやスパイラル型を使用しているが、製品の構造が複雑なため、配置が困難です。また、蓄熱面積が大きくなると、冷却時間を長くする必要があり、コアとキャビティの温度差が大きくなると、製品の反りが発生しやすくなります。Grand Dynasty チームは、製造前に Moldex3D を使ってコンフォーマル冷却チャンネル金型の作成をシミュレーションし、電力検査用ソケット製品の反り問題を解決することに成功しました。これにより、成形サイクルタイムが短縮され、製造前に優れた設計のコンフォーマル冷却チャンネル金型を見出すことができました。この研究事例では、反りが 49% 改善され、生産効率も 25% 向上しました。

課題

  • ・組立部品が干渉して組立が難しい。
  • ・製品の反り問題を改善し、スムーズな量産を実現する。

ソリューション

Moldex3D の冷却解析により、コア金型とキャビティ金型の温度分布が不均一である問題を特定しました。部品 B のコア金型とキャビティ金型の間に 47℃ の温度差があるため、部品 B の部分の部分領域が凹み、部品 A、C と組み立てる際に干渉や緩みの問題が発生していました。コンフォーマル冷却チャンネル技術に基づき、チャンネル構成を変更し、コアとキャビティ金型の温度差を減らしつつ、反りを改善しました。最適化された設計の冷却管は、金型製作のために3D金属プリンティングで加工されました。結果、反りは 49% 減少し、成形サイクルは 25% 減少しました。

利点

  • ・製品サイズを効果的にコントロールし、組立製品の隙間や緩みの問題を改善する。
  • ・冷却時間を 25% 短縮し、生産能力を 1/4 増加させる。

事例紹介

自動車業界で使用されるプラスチック部品はますます増えており、本事例では電力検査台が主な対象です。電力検査台は、図1 に示すように、3つのプラスチック部品で構成されています。部品 B と部品 C は干渉して組み立てが難しく、図2 に示すように部品Aと組み合わせると部品 B が緩みやすくなります。上記のような問題があると、品質が悪くなり、スムーズな量産に支障をきたします。

図1. 電力検査台とプラスチック部品3点図1. 電力検査台とプラスチック部品3点

図2. 部品組み立ての問題による品質低下図2. 部品組み立ての問題による品質低下

これらの問題を改善するために、Grand Dynasty Industrial社は Moldex3D を利用して根本原因を分析し、最適な冷却チャンネル設計を決定しました。図3は、オリジナルと最適化された両方のコンポーネントモデルの形状と冷却水路の設計を示したものです。
表1に示すように、従来の冷却チャンネルとコンフォーマル冷却チャンネルの冷却結果を比較したところ、コンフォーマル冷却チャンネル設計は、オリジナル設計に比べて冷却効率が良く、突出時間が短いことが判明しました。さらに、反り変形を観察した結果(表2)、コンフォーマル冷却チャンネル設計により、反り変形を大幅に最適化できることがわかりました。

図3. (a) 本体モデルの形状と冷却水路の設計 (b) オリジナル (c) 最適化されたもの図3.
(a) 本体モデルの形状と冷却水路の設計
(b) オリジナル
(c) 最適化されたもの

表1. 従来の冷却チャンネルとコンフォーマル冷却チャンネルの冷却結果

要因 従来の
冷却チャンネル
コンフォーマル
冷却チャンネル
結果
完成品の温度 高温だが均一でない 低温と均一 冷却路はコンフォーマルの方が良い
冷却・取出し時間 より長く、48s より短く、16s 冷却路はコンフォーマルの方が良い
冷却効率 18% 35% 冷却路はコンフォーマルの方が良い
平均温度 高温だが均一でない 低温・均一 冷却路はコンフォーマルの方が良い
金型温度 高温 低温 冷却路はコンフォーマルの方が良い

表2. CAE反り結果および改善効率

# CAD寸法 従来の
冷却水路の
変形寸法
コンフォーマル
冷却水路の
変形寸法
改善効果
1 28.33 22.83(-5.5) 24.82(-3.5) 36%
2 55.14 49.28(-5.85) 51.60(-3.48) 40%
3 94.08 91.81(-2.27) 93.02(-1.05) 53%
4 176.13 173.93(-2.20) 174.60(-1.53) 30%
5 40.21 37.55(-2.66) 39.06(-1.15) 56%
6 170.3 166.58(-3.72) 168.22(-2.08) 44%

3D 金属プリンティングによる金型コアの完成後、実用的な射出成形の検証を実施しました。赤外線サーモグラフィにより、コンフォーマル冷却チャンネル設計が金型温度を効果的に下げることが確認されました。さらに、2.5D 投影測定法を用いて反り変形を取得しました。測定の結果、関連する寸法が改善されており、改善幅は25%〜50%であることがわかりました(表3)。
この改善により、その後の部品 B と C の組み立てが干渉せず、また部品 B と A の組み立てが緩みにくくなり(図4、5)、実生産時の冷却時間も 14% 改善されました。 以上の結果から、コンフォーマル冷却水路は、成形サイクルの短縮や反り変形の問題を効果的に改善できることが明らかになりました。

表3. 現場での反り量測定結果と改善率

# オリジナル3D
図面寸法
従来の
冷却水路の変形寸法
コンフォーマル
冷却水路の変形寸法
改善効果
1 28.19 25.21(-2.98) 26.17(-2.02) 32.20%
2 54.87 46.05(-3.73) 47.88(-1.90) 49.10%
3 93.62 93.50(-0.12) 93.56(-0.06) 50.00%
4 175.26 175.66(+0.4) 175.56(+0.30) 25.00%
5 40.01 39.59(-0.42) 39.70(-0.31) 26.20%
6 169.45 169.78(+0.33) 169.66(+0.21) 36.40%

図4. 部品Bは平面度がよく、部品Cと干渉しない。図4. 部品Bは平面度がよく、部品Cと干渉しない。

図5. 部品BとAの組立は緩むことなく、しっかりと接続することが可能図5. 部品BとAの組立は緩むことなく、しっかりと接続することが可能

結論

Grand Dynasty Industry は、Moldex3D の冷却解析により、金型温度分布の不均一、特にコアとキャビティ間の温度分布の不一致という問題を解決することに成功しました。冷却チャンネル構成を設計する過程で、複数の冷却解析シナリオを使用し、コアとキャビティの温度差が最も小さくなる設計を見出すことができました。この設計ソリューションは、3D 金属プリンティングで金型製造され、反り変形の問題を大きく改善しました。

事例一覧

  • ※Moldex3Dの開発元は CoreTech System Co., Ltd. です。
  • ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。
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