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[解析事例] Simpleware Software との連携による繊維配向予測精度向上

事例カテゴリ
充填/最適化/その他

Moldex3D と Simpleware Software を連携させることで繊維配向予測精度を向上する事例を紹介

背景

現在、産業界では軽量化・高強度化などを目的として、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, 以下FRPと略称)が広く用いられています。FRPはエポキシ樹脂やフェノール樹脂などに、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維を複合して強度を向上させた強化プラスチックであり、軽量・安価で高強度、成形性・加工性に優れていることから、自動車の内外装、建築資材、航空機部品など様々な分野に適用されています。

通常、FRPは異方性を持ち、繊維の向きによって様々な物理的特性(伝熱・導電性・機械特性)が変化します。具体的には、繊維の配向方向の強度は高くなり、繊維配向を横切る方向の強度は低下します。そのため、FRPを用いた製品を設計する際には繊維配向分布を正確に予測し、狙った方向に繊維を配向させることが非常に重要となります。

各ソリューションの紹介

JSOLでは繊維配向分布予測に関連したプロダクトとして、2つのソリューションを展開しています。ここでは、各プロダクトの概要と、それらを用いて当社が展開している繊維配向予測ソリューションをご紹介します。

Simpleware Software

1) 概要紹介
Simplewareソフトウェアは、Synopsys社(米国)によって開発されている3次元画像データに対するイメージデータプロセッシングソフトウェアです。X線CTやSEMなどのスライス画像データから中間フォーマットを介さず解析用の高品質のメッシュを素早く生成することが可能で、材料研究や医療分野などを中心に世界中で広く活用されています。
図1. Simplewareソフトウェアの使用用途説明図図1. Simplewareソフトウェアの使用用途説明図
2) 繊維配向予測ソリューション
SimplewareソフトウェアのコアモジュールであるScan IPを用いることにより、スライス画像データ群からスキャン領域での繊維配向テンソルを算出することができます。算出したデータを元に、厚み方向の繊維配向度をグラフ出力する、各スライス断面での繊維配向の様子をコンター表示するなどして、成形品のうちスキャン領域の繊維配向を詳細に分析することが可能です。
図2. Simplewareソフトウェアを用いた繊維配向分析・可視化の一例図2. Simplewareソフトウェアを用いた繊維配向分析・可視化の一例

Moldex3D

1) 概要紹介
Moldex3Dは、CoreTech System社(台湾)によって開発されている、射出成形プロセスに特化した樹脂流動解析ソフトウェアです。射出成形プロセスのうち、充填工程・保圧工程・冷却工程・最終的な変形について一貫した解析を行うことができ、自動車・家電メーカー、医療機器、材料メーカーなど、樹脂成形に携わっている殆どの業界で使われています。使用用途としては、製品形状の初期検討時のランナー・ゲート位置を変えた際の流動性評価や、試作時の成形条件検討、成形不良の発生原因の分析まで、幅広く用いられています。
図3. Moldex3Dで実現が可能な解析図3. Moldex3Dで実現が可能な解析
2) 繊維配向予測ソリューション
Moldex3Dでは、独自開発したiARD-RPRモデルを用いて、FRPを射出成形する際の繊維配向分布予測を実現しています。iARD-RPRモデルでは、3つのパラメーター(Ci、Cm、α)を用いて繊維の拡散・回転をモデル化しており、部材形状全体の3次元的な繊維配向分布と、それに関連する弾性率分布を高精度に計算します。
通常、FRP材料に対して繊維配向解析を実施する場合は、繊維配向パラメーターの一般値が自動的に入力されますが、このパラメーターは必ずしも最適なものではないため、より厳密に繊維配向を評価したい場合は、テストピース・簡易モデルでの試作を行った際の測定結果など信頼できる正解データを元に配向パラメーターの合わせこみが必要となります。繊維配向パラメーターは材料種類のみに依存し、部材形状・成形条件によって変化することはないため、簡易形状で合わせこみを行い得られた繊維配向パラメーターを用いて解析を行うことにより、複雑形状部品の成形における繊維配向分布を高精度に予測できます。
図4. Moldex3Dを用いた繊維配向予測の一例図4. Moldex3Dを用いた繊維配向予測の一例

両ソリューションの連携事例とその効果

事例概要

本事例では、Moldex3DとSimplewareソフトウェアを連携させ、繊維配向予測精度を向上させることを目的として、以下の試作・検証を行いました。

  • 1) Moldex3D開発元のCoreTech System社の協力のもと試作を実施し、試作成形物のうち3点付近を試験片として切り出し、CTスキャンを実施。
  • 2) 試作金型形状と同一の形状に対して、Moldex3Dを用いて解析モデルを作成し、繊維配向を考慮した樹脂流動解析を実施。解析実施ケースは平板厚さ違い・射出速度違いで合計4ケースを検証。
  • 3) CTスキャン結果から得られる実成形品の繊維配向テンソルを参考値としてMoldex3Dの繊維配向パラメーターを実験計画法(DOE、Design Of Experiment)で選定した場合の解析結果と、デフォルト値での解析結果との比較を行うことにより、Simplewareソフトウェアを用いた分析による実測配向データの有無で繊維配向予測精度がどの程度向上するかを検証。

試作時に用いた材料はNAN YA社製でグレード名 #3210G4となる20%ガラス繊維入りのPPであり、繊維長は10mmです。平板部分の板厚が1.0mmと2.0mmの2種類の形状を検証に用いました。試験片については、図5に示す位置で5mm×5mm×平板板厚の大きさで切り出しを行いました。

図5. 実成形品と解析モデル図5. 実成形品と解析モデル

検証結果

繊維配向パラメーターのデフォルト値での解析結果(Sim.Default)と、スキャン結果から実験計画法を用いて選定した繊維配向パラメーターでの解析結果(Sim.DOE)のそれぞれについて、スキャン結果から算出した実測値(Exp)に対する相対誤差を算出し比較を行った結果(図6)、最適化後の結果では繊維配向予測精度の大幅な改善が確認でき、Simplewareソフトウェアを用いた分析による実測配向データを元にパラメーター最適化を行うことの有用性を示す結果が得られました。今回検証を行った4ケースの中では、厚板形状・高速射出条件が最も改善幅が大きい結果となったので、ここでは、両プロダクトの連携により最も大きな精度改善が見られた事例として、図7に厚板形状・高速射出条件における、各位置での厚み方向の繊維配向予測解析結果を示します。

図6. 解析結果(Sim.Default, Sim.DOE)と測定結果(Exp)の相対誤差比較図6. 解析結果(Sim.Default, Sim.DOE)と測定結果(Exp)の相対誤差比較

図7. Sim.DefaultとSim.DOEで繊維配向予測結果を比較(厚板-高速射出条件の結果)
(縦軸は繊維配向強度[-]、横軸は正規化板厚[-])図7. Sim.DefaultとSim.DOEで繊維配向予測結果を比較(厚板-高速射出条件の結果) (縦軸は繊維配向強度[-]、横軸は正規化板厚[-])

まとめ

本事例では、Moldex3DとSimplewareソフトウェアを連携させ、繊維配向予測精度を向上させることを目的として試作・解析・検証を行いました。検証結果として、Simplewareソフトウェアを用いた分析により算出された繊維配向データを参考値として、Moldex3Dの繊維配向パラメーターの最適化を行うことで、繊維配向予測精度を大幅に改善できることが確認できました。

既にMoldex3Dを使用しているユーザーは、Simplewareソフトウェアを導入し本事例のように活用することにより、実物の繊維配向結果を解析にフィードバックでき、より正確な繊維配向分布予測を解析上で実現することが可能です。
また、既にSimplewareソフトウェアを使用しているユーザーは、Moldex3Dを導入することにより、3次元的な繊維配向分布を成形品形状全体に対して予測することが可能になり、FRP材料を用いた製品設計に役立てることができます。

このように、2つのプロダクトを連携させることにより、それぞれ一方では実現が困難である課題を解決に近づけることが可能です。

当社では、その他にもさまざまなプロダクトを取り扱っており、お客様の実現したい解析内容に沿った提案をしております。現状のCAE解析の活用に課題をお持ちのお客様は、是非一度、当社までお問い合わせください。

事例一覧

  • ※Moldex3Dの開発元は CoreTech System Co., Ltd. です。
  • ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。
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