[解析事例] Moldex3D Advanced & Optics Module：ウェルドラインの解消

本事例の目的は、プロジェクターのレンズ（Fig. 1）のウェルドラインの問題を解決し、サイクルタイムを短縮することにあります。問題解決のため、CALIN Technology社は、オーバーフローエリアとコンフォーマル冷却チャネルの追加を検討しました。オーバーフローエリアとコンフォーマルチャネルの設計には様々な手法が存在しますが、いずれも金型製造のコストと時間の増加が懸念点でした。このため同社は、実際の試作の前段階でMoldex3Dを活用し、オリジナルデザインとオーバーフローエリアのデザイン、そしてコンフォーマル冷却チャネルの３つのデザインをから生産コストの増加を抑えられる最適な成形条件を評価検証しました。

Fig. 1 本事例のプロジェクターレンズ製品

解析結果から、従来の射出成形手法では製品の主要エリアにウェルドラインが発生し、さらにそれは、変形の潜在的リスクとなることを確認しました。さらに、この成形不良は製品の機能と外観にも影響します。 最終的に、CALIN Technology社は、オーバーフローエリアの追加によってウェルドラインの問題の解決を図りました。そして、変更後の設計をMoldex3Dで解析した結果、主要エリアに発生していたウェルドラインの解消が確認されました。

続いて、サイクルタイム短縮のため、同社はコンフォーマル冷却チャンネル設計に取り組みました（Fig. 3）。Moldex3Dによる解析結果から、設計変更後もオリジナルデザインと比較してサイクルタイムが大きく短縮されないことが判明したため（Fig. 4）、冷却チャンネルの設計変更は見送る決定を下しました。

Fig. 2 左図：オリジナルデザイン。ウェルドラインが確認できます。右図：オーバーフローエリアを追加したデザイン。ウェルドラインに改善が見られます。

Fig. 3 コンポーネントフォーマル冷却チャンネルの採用によるサイクルタイム短縮への取り組み。

Fig. 4 コンフォーマル冷却チャンネルを追加したデザインでも、サイクルタイムの大幅な改善は望めないことが判明。

CALIN Technology社は、Moldex3Dを用いることにより金型製作前段階で充填挙動を理解し、またウェルドライン発生個所の予測を精度よく行うことができ、最終的に成形上の問題を解決し製品と金型の最適化に成功しました。今回の実機比較検証によりMoldex3Dの精度の高さが証明されました（Fig.5）。

Fig. 5 右図：Moldex3Dの解析によるオリジナルデザインのウェルドライン。左図：試作におけるウェルドライン。双方の位置は一致している。