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[解析事例] Moldex3D適用事例 −ガスアシスト・ワックスインジェクション成形の研究成果

事例カテゴリ
特殊成形

台湾の中原大学MAERC(Mold Automation Education Resource Center/モールドオートメーション教材センター)は、高精度メカトロニクス教育促進プログラムの一環として、台湾政府教育部によって2001年に設立されました。MAERC設立の目的は様々な組織に分散していた金型と成形に関する技術の教育と関連データを一箇所に集約することにありました。(具体的には、調査・トレーニング支援の産業基盤の構築、金型関連技術に関する国際交流とワークショップによる協力の促進、研究内容の交換および共同調査のための訪問、そして、e-ラーニング環境の整備や産学連携の促進などが挙げられます。)

導入企業様 プロフィール

概要

ガスアシスト射出成形(GAIM)はプラスチック製品の生産に広く用いられています。飛行機や自動車部品などの大型部品から一般消費者が使用する小型部品まで、さまざまな部品の生産に用いられるガスアシスト射出成形は、製品品質と生産効率を向上させながらも軽量化、材料の節減、サイクルタイムの短縮、コスト削減等を実現できる技術です。本ケーススタディでは、中原大学のMAERCによるインベストメント鋳造工程の初期のワックス射出ステージにおけるGAIM技術導入の可能性に関する調査を取り上げます。特に、インベストメント鋳造品の寸法コントロールに対する更なる改善のため、偏肉形状を持たせたデザインの製品に着目します。ここで、MAERCはMoldex3DのGAIM機能を導入しワックス射出工程を可視化することで、インベストメント鋳造工程のワックス射出ステージにおけるガスアシスト射出成形技術について詳細部の研究を行い、ガスアシスト射出成形技術の導入が従来のワックス射出成形に更なる優位性があることを証明しました。

課題

インベストメント鋳造工程のワックス射出ステージにおいてよく見られる欠陥には、ショートショット、バリ、き裂、気泡、収縮不良などがあります。さらに、壁に板厚変化をもつワックス部品では以下のような問題が生じることがあります:

・製品仕様(寸法)との不一致
・極端な収縮による製品の反り変形

Fig. 1:インベストメント鋳造工程のワックス射出ステージによく見られる欠陥 Fig. 1:インベストメント鋳造工程のワックス射出ステージによく見られる欠陥

導入ソリューション

Moldex3Dのガスアシスト射出成形(GAIM)モジュールを使って、MAERC研究チームは金型キャビティ内に射出されたワックスの充填パターンとガスの浸透作用を確認しました。ガスの持続時間、充填率(ショートショット)、メルト温度を含む多様なパラメーターは、ワックス射出成形におけるガスの浸透作用の理解の為に重要な要素です。

メリット

本ケーススタディの結果、以下のことがわかりました。

・Moldex3Dは、インベストメント鋳造工程のワックス射出ステージにおけるガスの浸透作用を正確に予測しており、将来的な技術導入および金型設計において有効である。

・ワックス射出成形にてGAIM技術を導入することにより、体積収縮を48%低減可能である。

ケーススタディ

ガスアシスト射出成形(GAIM)はプラスチック製品業界では広く用いられており、軽量化、材料の節減、サイクルタイムの短縮、コスト削減等と、製品品質と生産効率向上を両立させる有益な技術です。ガスの浸透作用は2段階に分けられます(→ Fig. 2参照)

・第1次ガス浸透:充填工程では、材料に浸透したガスがメルトフロントを促進します。金型キャビティが射出された材料とガスで満たされると、ガスの浸透が完了します。

・第2次ガス浸透:保圧ステージでは、ガスが内側から拡張を続けることによって冷却に伴うプラスチックの体積収縮を相殺します。

Fig. 2:GAIM工程におけるガスの浸透作用 Fig. 2:GAIM工程におけるガスの浸透作用

本研究の目的は、GAIM技術の金属製品開発への導入であり、最終的にはGAIMの長所を生かしてインベストメント鋳造工程の改良と製品品質の向上を目指したものです。ワックス成形はインベストメント鋳造工程の最初の段階です(→ Fig. 3);このステージでワックス成形の精度制御が可能になれば、インベストメント鋳造工程全体と製品品質を大幅に向上させることができます。

Fig. 3:焼き流し射出工程の初期段階であるワックス射出 Fig. 3:焼き流し射出工程の初期段階であるワックス射出

まず、MAERCはワックス材に関して、粘度、PVT、熱容量、熱特性等の材料測定を行い、その後その材料データを用いてMoldex3Dにより ワックス成形挙動とガス浸透作用を調査するため解析を実施しました。解析結果が出ると、MAERCは解析結果と実験結果の比較を行い、ガス浸透に直接影響するガスの持続時間、充填率(ショートショット)、メルト温度などの重要なパラメーターを検証し、インベストメント鋳造工程のワックス成形ステージにおけるGAIM技術導入への理解を深めました。

1. ガスの持続時間と総浸透長さ(→ Fig. 4):第1次、第2次のガス浸透を含む総浸透長さはガスの持続時間の延長に伴って長くなります。

Fig. 4:ガスの持続時間と総浸透長さ Fig. 4:ガスの持続時間と総浸透長さ

2. 充填率(ショートショット)と総浸透長(→ Fig. 5):第1次、第2次のガス浸透を含む総浸透長さは、充填率(ショートショット)の増加に伴って短くなります。

Fig. 5:充填率(ショートショット)と総浸透長さ Fig. 5:充填率(ショートショット)と総浸透長さ

3. メルト温度と総浸透長さ(→ Fig.6):メルト温度の上昇は表層の薄肉化につながります。このため、第1次浸透長さが短くなりますが、中心領域の高温化により第2次浸透長さが長くなります。

Fig. 6:メルト温度と総浸透長さ Fig. 6:メルト温度と総浸透長さ

上記の比較検証結果により、MAERCはMoldex3Dによる成形挙動予測の精度を検証し、ワックス射出に関するMoldex3DのGAIM解析は実験結果と高い相関をもつと判断しました。また、その解析結果から、インベストメント鋳造工程のワックス射出ステージへのガスアシスト射出成形技術の導入により、体積収縮が従来の鋳造工程に比べて48.7%低減可能であることを確証しました。この結果、MAERCはワックス成形ステージにGAIM技術を導入することにより、鋳造製品の部品寸法精度が飛躍的に向上することを確認することができました。

Fig. 7:ワックス射出ステージにGAIM技術を導入することにより、体積収縮を48.7%低減 Fig. 7:ワックス射出ステージにGAIM技術を導入することにより、体積収縮を48.7%低減

結果

Moldex3Dの解析から、GAIM技術の適用によって、偏肉形状を持った部品における変形問題や体積収縮(Fig.8)、総変位量(Fig.9)等が大きく改善することがわかりました。それにより、製品の不良率を大幅に低減させることが可能となりました。また、GAIM技術では部品中央が空洞となるため冷却効率も向上し、従来の鋳造工程に比べて成形サイクルも短縮することができました。Moldex3Dの解析技術と実験結果は、MAERCによるガスアシストワックス射出成形に関する一連の研究を効率化し、特に偏肉形状の製品における最新技術としてガスアシスト射出成形技術の適用の可能性を示すことができました。

Fig. 8:Moldex3D解析結果:体積収縮 Fig. 8:Moldex3D解析結果:体積収縮

Fig. 9:Moldex3D解析結果:総変位量 Fig. 9:Moldex3D解析結果:総変位量

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