[解析事例] 炭素繊維配向の応力シミュレーション解析によりハンマータッカー製品の構造強度が向上
- 事例カテゴリ
- 構造連成
スタンレー・ブラック&デッカー(Stanley Black & Decker)社は、電動工具、ハンドツール、家庭用品の世界的なリーディングカンパニーであると同時に、プロフェッショナルユースの信頼性の高い産業・家庭用工具、電動工具、空圧工具メーカーでもあります。共通の顧客に対するより専門的な製品とサービスの提供に努めています。(出典:https://www.stanleyblackanddecker.com/)
- 導入企業様 プロフィール
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- 顧客名:スタンレー・ブラック&デッカー
- 国:アメリカ
- 業種:ツール製造
- 導入ソリューション:Moldex3D Advanced ソリューション/流動解析モジュール Flow/保圧解析モジュール Pack/冷却解析モジュール Cool/Designer BLM/繊維配向モジュール Fiber/FEAインターフェース機能モジュール
概要
繊維配向は構造強度に大きく影響するため、スタンレー・ブラック&デッカー社は炭素繊維30%配合のPA66製ハンマータッカー製品に対し、外殻構造強度を確認する試験を行う必要がありました。繊維配向が製品の機械的特性に与える影響を評価するのは容易なことではありませんでしたが、スタンレー・ブラック&デッカー社は流動解析と構造解析のシミュレーションツールを組み合わせることにより、正確な構造解析と製品全体の構造強度を確保するのに必要となる重要な解析データを取得しました。
課題
繊維配向が製品強度に与える影響を評価
製品の応力集中領域を特定
導入ソリューション
スタンレー・ブラック&デッカー社はMoldex3D FEAインターフェースを用いて、射出成形プロセスにおいて流れ場方向の影響を受ける繊維配向の結果をAltair Multiscale Designerにエクスポートし、それをAltair Radiossにマッピングして構造解析を行いました。
メリット
・繊維の異方性挙動によって生じるそり変形を観察
・潜在的な応力集中箇所を特定
・製品の構造強度を最適化
ケーススタディ
プラスチック製造における課題の一つに、コスト削減の要求を達成するための製品の軽量化があります。この目標を達成するには製品設計の最適化が求められ、プラスチック材料工学とCAEソフトの活用が必要不可欠となります。ですが、構造解析のCAEソフトではプラスチック射出材料の異方性特性をサポートすることがいまだ難しい状態にあります。
そこでスタンレー・ブラック&デッカー社はMoldex3DとAltair Radiossを用いてハンマータッカーの外殻構造強度の解析を行うことにしました(図2)。この製品は炭素繊維30%配合のPA66で製造されており、300,000回の耐久試験に合格する必要があります。2つの解析ソフトを組み合わせることで、繊維配向が製品強度に与える影響を予測するとともに、その結果を製品最適化の評価に用いることができます。
図1 本事例のハンマータッカー製品
図2 本事例の製品形状
まず、Moldex3Dのシミュレーションを通じて、射出成形のシミュレーション結果と繊維配向情報を取得します。シミュレーション結果から適切なゲート位置を評価し、スプルー圧力、エアトラップ、そり変形が要件を満たしていることを確認します(図3)。ここでMoldex3D FEAインターフェース機能を通じて、動的構造解析ソフトに繊維配向結果の異方性特性をインポートすることが重要なポイントとなります。
図3 Moldex3Dによるスプルー圧力、エアトラップ、そり変形、繊維配向の評価
次に等方性材料モデルを使用して、Radiossで境界条件とモデルをテストするためのシミュレーションテストを行います。シミュレーション完了後、メッシュをインポートして後続のMoldex3Dの繊維配向結果のマッピングを行います。
さらにMoldex3Dの繊維配向結果をRadiossのメッシュ上にマッピングさせます。まず、Moldex3DのメッシュがRadiossにインポートされ、繊維配向結果がロードされます。その後、Moldex3Dのメッシュが削除され、繊維配向がマッピングされたRadiossのメッシュに置き換えられます。このモデルはMultiscale Designerにエクスポートされます(図4)。
図4 Moldex3Dの繊維配向結果がマッピングされたRadiossのメッシュ
スタンレー・ブラック&デッカー社のMultiscale Designerの中で材料モデルと特性を設定し、ユニットセルモデルを組み合わせて不連続繊維構造として定義します。次にプラスチック材料と繊維材料の特性を入力し、Moldex3Dの繊維配向テンソルを6層の積層メッシュに3つの異なる流動方向で配置し(図5)、同時に非線形材料特性も設定します。最後に、Radiossシミュレーションを実行するための材料ファイルと繊維配向ファイルを作成します。
図5 Radiossにおける3つの流動方向の積層設定
繊維無配向と繊維配向の結果はそれぞれ等方性、異方性の材料特性を表します。両者の応力とひずみの結果は異なり、材料特性は繊維配向の影響を受けて異なる変形挙動を生じさせます。また、繊維配向結果から、等方性材料モデルでは検出できなかった特定の領域で、高い応力集中の問題が生じていることが確認できます(図6)。
図6 異方性材料特性とは異なり、等方性材料モデルでは高い応力集中の問題を検出できない
結論
スタンレー・ブラック&デッカー社はMoldex3Dを用いた本事例を通じて、実際の材料特性をシミュレーションするには、等方性材料モデルでは不十分であることがわかりました。Moldex3Dの繊維配向解析と構造解析ソフトを組み合わせることで、実際の試験における詳細な製品の変形挙動を理解する助けとなり、また、より安全な状況で製品重量の軽減、製品の脆弱な部分の強化、製品設計の最適化を検証することができました。
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