[解析事例] Moldex3Dによるコンフォーマル冷却回路の最適化で冷却効率が70%向上
- 事例カテゴリ
- 冷却
明志科技大学は工学部、環境リソース学部、管理設計学部の3学部、11の大学院修士課程、1つの博士課程、10の学科を有する大学で、現在すべての学科で中華工程教育学会(IEET)、華文商管学院(ACCSB)などの国際的な教育認証を取得し、国際標準に即した教育システムを提供しています。(出典:https://www.mcut.edu.tw/)
- 導入企業様 プロフィール
-
- 学校:明志科技大学
- 地域:台湾
- 業種:教育
- 導入ソリューション:Moldex3D Advanced Package; Flow, Pack, Cool, Warp
概要
現在の製造業には「時は金なり」という言葉が当てはまります。プラスチック射出産業では多くのメーカーが射出成形プロセスにおける冷却時間を短縮してコストを最小限に抑えることを望んでおり、冷却システムの重要性が高まっています。本事例において明志科技大学チームは、冷却時間、キャビコア温度差、製品の変形問題の改善を目的とし、Moldex3Dを利用したコンフォーマル冷却回路設計の最適化を行いました。本事例で実施した実験結果では、コンフォーマル冷却回路は従来型冷却回路と比較して冷却時間を70%短縮するという優れた効果を発揮することを示しました。
課題
・ラピッドツーリング(rapid tooling)によって生じる製品の変形
・冷却効率の改善
・試作(トライ&エラー)期間短縮によるコストと時間の低減
導入ソリューション
明志科技大学の学生たちはMoldex3Dの冷却シミュレーション機能を利用して、様々な冷却回路設計(冷却回路なし、従来型冷却回路、コンフォーマル冷却回路)が製品の成形工程に与える影響を評価するとともに、製品品質を最適化する最適なコンフォーマル冷却回路設計の評価を行いました。
メリット
・冷却時間を70%短縮
・変形を56%改善
・コンフォーマル冷却回路の冷却効率を検証
・冷却時間を短縮し、試作コストを削減
・様々な冷却システムにおける冷却時間、温度、変形の違いについての理解
ケーススタディ
冷却時間は射出成形サイクル全体の70%を占めています。従来型冷却回路システムでは冷却時間の短縮と製品品質の維持を両立することは非常に困難であり、この問題を解決するには、コンフォーマル冷却回路への変更を検討する必要がありました。
明志科技大学では、シミュレーションで最適な冷却時間を特定し、実験を通してシミュレーション結果を検証することを目標とし、Moldex3Dを利用して冷却システムに影響を与える要因を調査しました。また、成形サイクルの短縮、温度差、そり変形に対する研究も同時に行いました。
本事例の製品はサイズが60x30x60mm、厚さ2mmのワックス製カップで、2mmのピンゲートからランナーシステムを経由せずに直接射出されます。Moldex3D eDesignによるメッシュ作成時に、製品表面に温度と冷却時間を測定するセンサーノードを配置します。45種類のサイズの異なるコンフォーマル冷却回路の設計、研究を行い、その中での最適な冷却回路と、従来型冷却回路および冷却回路なしのモデルとの比較を行いました(図1)。
図1 左:(a)冷却回路なし (b)従来型冷却回路 (c)コンフォーマル冷却回路
右:センサーノードの位置
最初の評価では、最適なコンフォーマル冷却回路での冷却時間は最短の92.73秒(図2)を達成し、その冷却回路設計は最小直径(4mm)、最小間隔(6mm)で、冷却回路中心から表面までの距離が最短(8mm)であることが確認できました。この設計では冷却回路の全体長が最長、表面積が最大となり、非常に高い冷却効率を得ることができました。また、シミュレーション解析結果から、間隔が広くなると冷却時間が長くなり、製品温度と金型表面温度の差が小さいほど、製品変形が少なくなることが確認できました。
図2 コンフォーマル冷却回路の冷却時間の比較
次の評価では、コンフォーマル冷却回路の冷却効率が従来型冷却回路や冷却回路なしのモデルよりも優れていることを確認できました。最適なコンフォーマル冷却回路は、従来型冷却回路や冷却回路なしのモデルと比較して、冷却時間をそれぞれ70.03%、90.26%短縮(図3)することができ、温度差が最小に抑えられたことによりカップ底部の内側および外側の温度分布が均一になっています(図4)。また、キャビティ壁面の上部、下部の温度差についても冷却回路なしの場合と比較して99.5%減少しています(図5)。さらに重要な点としては、最適なコンフォーマル冷却回路の製品そり変形の3軸方向の変位と総変位量が最小となっており、従来型冷却回路、冷却回路なしのモデルと比較すると、それぞれ24.05%、56.01%改善されています(図6)。
図3 各種冷却回路システムが取り出し温度に達するまでの冷却時間の比較
図4 カップ内部の製品温度差:(a)冷却回路なし (b)従来型冷却回路 (c)コンフォーマル冷却回路
図5 金型温度差:(a)冷却回路なし (b)従来型冷却回路 (c)コンフォーマル冷却回路
図6 各方向の変位の比較:(a) X軸変位 (b) Y軸変位 (c) Z軸変位 (d)総変形
シミュレーション結果検証のために、エポキシ樹脂を充填したアルミ製金型と冷却システムを製作しました。従来型冷却回路はK512ワックスで製造しましたが、コンフォーマル冷却回路はABSやPLAを用いて製造を試みましたが、うまくいかなかったためワックスフィラメントで製造しました。実験では水を冷却液として使用しました(図7)。また、金型にセンサーノードを配置し、表面温度、製品温度、冷却時間を測定しました。
図7 左:(a) K512ワックス製の従来型冷却回路、(b) ABSコンフォーマル冷却回路、(c) PLAコンフォーマル冷却回路、(d)ワックスフィラメント製コンフォーマル冷却回路
右:低圧射出成形によるワックス製製品
本実験ではワックス射出成形技術を用い、低圧射出装置によってワックスを金型に射出しています。溶融温度と冷却液温度の設定はそれぞれ82°C、27°Cで、解析精度の確保のため、成形サイクルを10回繰り返しています。
図8より、Moldex3Dのシミュレーション結果と実験結果は良好な一致傾向を示しています。シミュレーション結果から従来型冷却回路に比べ、コンフォーマル冷却回路では冷却時間が69.61%改善していることが確認でき、従来型冷却回路とコンフォーマル冷却回路のシミュレーション結果と実験結果の誤差はそれぞれ16.96%、18.62%となっています。
図8 実験結果とシミュレーション結果の比較:(a)従来型冷却回路の冷却時間、(b)コンフォーマル冷却回路の冷却時間
結論
上記の研究から、明志科技大学のチームがMoldex3Dを利用した冷却、そり変形解析は、45パターンのコンフォーマル冷却回路から最適な設計を特定する助けとなっただけでなく、この設計を利用して製品の冷却時間、温度差、製品の変形を効果的に改善することも確認できました。実験結果からもコンフォーマル冷却回路は従来型冷却回路よりも冷却効率に優れていることが確認され、Moldex3Dはコンフォーマル冷却回路の最適化に対して優れた効果を発揮するツールであると言えます。
事例一覧
-
- 先進実装学会にてサンユレック様ご講演に関する技術報告
- ワイヤウィザードとワイヤテンプレートを使ってワイヤコンポーネントを素早く構築
- Moldex3D StudioにおけるCoWosの自動メッシュ作成
- シミュレーションによる電子ポッティングプロセスの最適化および製品信頼性の向上
- IC業界における信頼性試験:温度サイクル試験のシミュレーションによる熱疲労予測
- Moldex3D ICキャピラリーアンダーフィルの包括的シミュレーション
- Moldex3D StudioのICパッケージングにおけるトランスファー成形シミュレーション
- さまざまなIC封止成形プロセスに柔軟に対応するMoldex3D IC封止成形解析機能
- Moldex3D Expert Moduleによる反り変形の改善と成形パラメーターの最適化
- 第3ブレーキライトの設計最適化にMoldex3D を活用し、収縮問題を見事に解決
- 自動車用ヘッドライト反射板のエアトラップ解消事例
- Moldex3D粉末射出成形シミュレーション:ジルコニアインプラントの反り改善
- Moldex3D光学モジュール適用事例 : レーザープロジェクター レンズアレイの最適化
- Moldex3Dを使ってマルチショット射出成形の成形課題を克服
- 薄板成形品の反り変形予測
- マイクロレンズアレイ成形技術の飛躍的進歩
- Moldex3Dによるコストと時間の低減(Shape社)
- Moldex3Dによる成形品質改善(Widex社)
- MuCell® 技術の正確な解析 - Moldex3D解析 との融合
- 充填アンバランスの改善(BTI社)
- Moldex3Dによる冷却ファンブラケットの変形量改善
- 3Dプリントがもたらすスマート成形ソリューション
- コンフォーマル冷却回路の最適化とLEDレンズ残留応力の低減
- 金型温度調節機と冷却回路の互換性評価方法
- LS-TaSCを用いた射出成形金型のトポロジー最適化
- 流動解析の使用で3Dプリントによる開発プロセスを短縮
- ゲート位置アドバイザーの強化よりゲート設計を迅速に最適化
- 新しいMoldiverseクラウドプラットフォームで産業変革への第一歩を踏み出す
- ノートパソコン用キーボードのファミリーモールドの開発と組立ての自動化
- Composite 2023:StudioでRTM繊維配向を編集する方法
- Simpleware Software との連携による繊維配向予測精度向上
- Moldex3D Studio API機能を体験
- Moldex3Dを利用したiMFLUXのプロセスシミュレーション解析
- 樹脂流動解析の応用によるシングルバルブゲート型ホットランナーのアンバランス流動およびコアシフトの改善
- StudioでShellモデルを構築する方法
- Moldex3Dシミュレーションのためのクラウド活用
- 成形プロセスおよび金型構造がASA製品表面の白点に与える影響に関する研究
- 流動解析と実験計画法(DOE)の組み合わせにより最適なソリューションをすばやく特定
- NXのMold Wizardで作成されたランナーへの構造メッシュの作成
- 設計最適化によるそり変形問題の解消
- ICパッケージング業界のための自動シミュレーションワークフロー
- 金型業界におけるコンフォーマル冷却の普及について
- コンフォーマル冷却ウィザードの強化
- IC封止成形解析メッシング機能の高速化と信頼性向上
- APIによる射出成形シミュレーションの自動化
- 圧縮成形時の繊維配向変化の予測
- 高度な材料データを使用した射出成形圧力予測の改善
- 樹脂材料と3Dプリンタによる射出成形型(3DPIM)の効果的な設計検証ツールの実証実験
- 製品設計の最適化と複数解析の自動化
- ガラス繊維射出成形品のウェルドラインの検証
- Moldex3D バージョン2021 Viewer機能紹介
- 3D冷却CFD解析による仮想と現実の統合
- 射出発泡成形におけるコアバック技術の解析
- 共射出成形製品の物理メカニズムの調査と反り変形問題の解消
- シミュレーションテクノロジーを用いてSynventive社の高度なバルブゲートシステムを検証
- ウィスコンシン大学における学術研究:プラスチック製品の不具合予測
- AUDIX社 - 寸法精度の向上と外観不良の解消を両立
- Moldex3Dのコンフォーマル冷却解析による冷却時間の短縮
- Delta Groupは、冷却ファンブラケットの変形を改良するためにMoldex3D を利用
- CAEの使用でツール製造における複数の課題を一度に解消
- BASF、デザイン変更を行わずにガスアシスト成形の椅子製品を最適化
- 射出成形製品の最適化ワークフローを完全自動化
- 東陽実業による車用フォグランプの外観不良対策事例
- 電子部品のアンバランスな流動、ウェルドライン、エアートラップの問題を一挙に解決
- 先進的なCAEツールを使用して光学製品のそり変形と屈折率を検証
- 清華大学、Moldex3DによるVaRTMプロセスの検証に成功
- 射出成形の効率化を図るホットランナー設計にMoldex3Dを活用
- 軽量化と製品強度の要件を兼ね備えたプラスチック製品の実現
- 逆そり変形によるそり変形ソリューション
- 革新的な2ステップのシミュレーションでシート状複合材料の圧縮成形プロセスを一括管理
- マサチューセッツ大学による自転車金属部品の代替素材の特定
- ヘッドアップディスプレイのコンバイナー用蒸着治具金型と成形効率の最適化
- ブダペスト工科経済大学はMoldex3Dにより冷却時間を18%短縮
- ファスナー製品に欠かせない強度最適化手法
- イタリアの金型メーカーがMoldex3Dを使用して再利用可能なマスクをスピーディに量産化
- WISE、Moldex3Dにより引き出しスライドレールの要求寸法を達成
- STマイクロエレクトロニクスはMoldex3Dを使用してICパッケージングプロセスの最適化を実現
- SABICはMoldex3Dを使って2K-ICM製品の外観を最適化
- IDEMI、Moldex3Dにより新型コロナウイルス対策用フェイスシールドを検証
- Blackcad、Moldex3Dによる新型コロナウイルス対策用フェイスシールドの製造に成功
- 最短時間で最適な製品形状設計を見つけるには
- タブレットのバックパネルのそり変形を92%改善
- 部門間をつなぐビッグデータ管理プラットフォーム(Moldex3D iSLM)
- 独ケムニッツ工科大、Moldex3Dを用いた熱硬化性射出成形の壁面滑り現象の研究
- Moldex3Dを用いる事により成形歩留まり率を改善!
- 反り変形予測の定量評価に重要な粘弾性特性
- Moldex3Dにより車窓のガラスランチャンネルの変形を解決する方法を特定
- Moldex3Dによるコンフォーマル冷却回路の最適化で冷却効率が70%向上
- 炭素繊維配向の応力シミュレーション解析によりハンマータッカー製品の構造強度が向上
- 微細形状を持つ製品の流動評価
- Moldex3Dを使用して自動車部品の冷却時間を67%短縮
- CAE検証例:炭素繊維テープによるプラスチック製船舶用プロペラ構造の強化
- Berry PlasticsはMoldex3Dにより「時は金なり」であることを実証
- マルチコンポーネント成形:厚みのある光学製品の冷却時間を55%短縮
- コンフォーマル冷却回路の有効性を検証することでUSB外装部のサイクルタイムを短縮
- Moldex3DとANSYSの組み合わせによりガラス繊維のポリ乳酸製品構造に与える影響を検証
- CAEツールを利用したカメラレンズ筐体の真円度改善
- ACER社:Moldex3Dを活用し軽量・薄型タブレットを製造
- Moldex3Dを使用してLED製品の最適化を行い、金型製作コストを11,500米ドル削減
- Moldex3Dによる車載ナビゲーション機器部品の変形問題の解決例
- Moldex3DとLS-DYNAを統合し、スキャナーパーツの反り変形という難題の改善に成功
- Moldex3D成功例:反り変形抑制とサイクルタイム短縮例
- Moldex3Dと構造解析ソフトの統合 ― 反り変形の解決
- Moldex3D適用事例 −ガスアシスト・ワックスインジェクション成形の研究成果
- Moldex3Dにより光学製品の精密成形工程を最適化
- Moldex3D DOEによるパラメーター設定の最適化:部品品質の向上
- Moldex3D Advanced & Optics Module:ウェルドラインの解消
- Moldex3D eDesignを活用したウェルドライン改善の事例
- 樹脂流動解析と構造解析の連成事例
- 新繊維配向アルゴリズム(iARD) 〜長繊維配向の予測をより高速に、より高精度に〜
- 粉末射出成形「PIM」の紹介
- インサート成形用コアシフトシミュレーション(FSI)
- 3Dプリンター(レーザー焼結方式)を活用したコンフォーマル冷却による品質向上の事例
- ※Moldex3Dの開発元は CoreTech System Co., Ltd. です。
- ※記載されている製品およびサービスの名称は、それぞれの所有者の商標または登録商標です。