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[解析事例] リバースマッピングによるアモルファス構造の作成

全原子MD / 粗視化MD
分子構造・親和性・溶解性
マテリアルサイエンス

長鎖ポリマーモデルの緩和構造を効率的に作成

ポリマー物性をシミュレーションで評価する際、バルクモデルの作成はモデリングの第一ステップです。

J-OCTAでポリマーバルクモデルを作成するアモルファス作成機能には、通常版とリバースマップ版の2種類のオプションがあることをご存じでしょうか。通常版の機能では希薄状態から開始して、圧縮や複数の平衡化のためのMD計算によって平衡密度のバルク状態を作成します。リバースマップ版では密度と特性比を指定することで、全原子のモデルに対応するKremer-Grest (KG) モデルを作成し、平衡化MDをKGモデルで実施後にリバースマップを行います。(図1)

通常版は汎用性がありどんなモデルでも使える機能である一方で、ポリマー鎖を十分に平衡化するためには計算時間が長くなってしまう課題があります。リバースマップ版は粗視化モデルによって平衡化を行うために、この課題をクリアしてポリマーバルクが持つ構造特徴を再現することができます。

ここではポリエチレン(PE)、cisポリブタジエン(PB)、ポリスチレン(PS)の20、40、60量体をそれぞれの機能で各3水準ずつ作成し高分子鎖の構造特徴を比較しました。MD計算のための力場はGAFFを用いました。

図2には作成されたバルクモデルの密度、回転半径<Rg>を示しました。密度についてはどちらの方法でも同程度の値が得られていますが、 <Rg>については重合度の大きいモデルにおいて2種類の作成方法に差が確認されました。
次に3水準のモデルの<R2>の平均値の分子量依存性を図3に示しました。ポリマーの<R2>や <Rg2>は重合度に比例することが知られていますが、リバースマップを用いて作成したバルクモデルではこの傾向が明確に確認されました。また、参照値として<R2>/M [1]から計算される値とも比較し、リバースマップ版で作成される構造の妥当性を確認しました。

図1. アモルファス作成機能の処理フロー(左)通常版(右)リバースマップ版図1. アモルファス作成機能の処理フロー
(左)通常版(右)リバースマップ版

図2. アモルファス作成機能で作成されたポリマーモデル3水準の密度と<Rg>
        (左)通常版(右)リバースマップ版図2. アモルファス作成機能で作成されたポリマーモデル3水準の密度と<Rg>
(左)通常版(右)リバースマップ版

図3. 作成されたPB、PE、PSモデルの<R<sup>2</sup>>の重合度依存性の比較○:通常版、☐:リバースマップ版、破線:参照値図3. 作成されたPB、PE、PSモデルの<R2>の重合度依存性の比較
○:通常版、☐:リバースマップ版、破線:参照値

またリバースマップ版においては、KGモデルを用いて緩和計算を行うことで絡み合った高分子鎖の構造も作成することができます。[2]
図4は本機能で作成されたポリカーボネート25量体の絡み合ったバルクモデルです。

図4: リバースマップ機能により作成されたポリカーボネート25量体の絡み合いモデル
(左)KGモデル、(右)全原子モデル図4: リバースマップ機能により作成されたポリカーボネート25量体の絡み合いモデル
(左)KGモデル、(右)全原子モデル

*参考文献
  • [1] L. J. Fetters, D. J. Lohse, and R. H. Colby, Physical properties of polymers handbook , 445?452 (2006).
  • [2] H. Nitta, T. Ozawa and K. Yasuoka, J. Chem. Phys., 159, 194903 (2023).

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