[解析事例]
GHz周波数領域における水の誘電分散(1)
- 全原子MD
- 光学・電気・磁気
- マテリアルサイエンス
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VSOPによる水の誘電分散の評価
目的と手法
全原子分子動力学法を用いて水の誘電分散を評価しました。 デバイ型の緩和を持つ物質(一つの緩和時間を持つ物質)の場合、複素誘電率(実部: ε′, 虚部: ε′′)は緩和時間をτとして以下の式で表されます。
\[ ε'(\omega) = ε(\infty) + \frac{ε(0) - ε(\infty)}{1 + (\omega\tau)^2} \]
\[ ε''(\omega) = \frac{(ε(0) - ε(\infty))\omega\tau}{1 + (\omega\tau)^2} \]
…(1)
ε(∞) : 変位分極に起因する誘電率
τは誘電緩和関数 φ(t) から評価します。φ(t) は分極P(t)(単位体積あたりの双極子モーメント)の時間相関関数(式2)から求めることができます。
\[ \varphi(t) = \frac{\langle P(t) ・ P(0)\rangle}{\langle P(0) ・ P(0)\rangle} \]
…(2)
VSOPを用いて平衡計算を実施することにより各時刻における分極を求め、分極の自己相関関数を計算することで誘電緩和関数を評価しました。水の力場にはSPC/Fwを用い、300[K]の温度でNVTの平衡計算を実施しました。
その結果を以下のデバイ型の緩和関数(式3)でフィッテイングすることにより、緩和時間τを求めました。
\[ \varphi(t) = \varphi_0 e^{ - \frac{t}{\tau}} \]
…(3)
さらにVSOPの平衡計算結果を元に、ε(0)を以下の式より求めました。
\[ ε(0) = 1 + \frac{4\pi V}{3k_BT}(\langle P^{2} \rangle - \langle P \rangle^{2} ) \]
…(4)
T : 温度[K]
V : 体積
解析結果
VSOPによる誘電緩和関数は図1のようになりました。これをデバイ型の緩和関数(式3)でフィッテイングすることにより、τは11.3[ps]と評価されました。
また、式4から求められたε(0)は79.9となり、文献値[1] 77.8に近い値が得られました。
図1 水の誘電緩和
これらの結果τ、ε(0)を用い、式1より誘電分散を図2のように評価することができました。 (ε(∞) =5.85としました[2])
図2 水の誘電分散
- ●参考文献
- [1] 理科年表 2005 丸善
- [2] Liebe, H.J. et al,Int J Infrared Milli Waves 12,659-675 (1991)
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