[解析事例]
活性化エネルギーを用いたモンテカルロ判定によるエポキシ樹脂の架橋反応
- 量子化学・DFT
- 全原子MD
- マルチスケール解析
- 力学・粘性・粘弾性
- マテリアルサイエンス
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VSOPによる架橋構造の作成と物性評価
目的と手法
架橋構造を持つ熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)の機械特性を求めるため、VSOP により架橋構造を作成しその伸長計算を行った。主剤に DGEBA、架橋剤に 44DDS に用い、2:1 の割合で配置した。
J-OCTA では主剤と架橋剤の反応部位を指定し、全原子分子動力学(Full-Atomistic MD)計算を実行することにより架橋構造を作成する。活性化エネルギーを用いたモンテカルロ判定による架橋反応計算では、指定された活性化エネルギーに基づく反応速度に従い反応が起こる[1]。反応計算のアルゴリズムを以下に示す。
- ① 反応部位が反応距離内に近づく
- ② 反応が発生するかどうかは活性化エネルギーを使用したモンテカルロ法によって判断される
- ③ 反応が起こると反応熱が発生する
- ④ 反応が繰り返される間、反応熱により系の温度が上昇し反応がさらに加速される。
ここで、MD 計算で使用する活性化エネルギーは ab initio 計算から取得できる。J-OCTA では ab initio 計算ソルバーの1つである SIESTA(密度汎関数理論:DFT ソルバー)とのインターフェースが用意されており、SIESTA で得られた結果を MD 計算に取り込むことができる。
最後に、反応計算で得られた架橋構造を NPT アンサンブルにて10.22 [m/s] の速度でひずみ5%程度伸長し、エポキシ樹脂のヤング率を求めた。
解析結果
初期配置の異なる3つの構造から3つの架橋構造を作成し、それぞれの架橋構造に対して X, Y, Z 方向に伸長計算を行った。
伸長計算で得られた SS カーブ(合計9ケース)を平均しひずみ5%までの領域の線形近似直線の傾きからヤング率を求めた。
モンテカルロ判定を用いた反応計算でエポキシ樹脂の硬化度は 80% 以上に達した。
反応後の構造の伸長計算から求めたヤング率は 4.15 GPa(実験値:3.76 GPa)となった。
- ●参考文献
- [1] Tomonaga Okabe, Tomohiro Takehara, Keisuke Inose, Noriyuki Hirano, Masaaki Nishikawa, Takuya Uehara, "Curing reaction of epoxy resin composed of mixed base resin and curing agent: Experiments and molecular simulation", Polymer 54 (2013) 4660-4668.
- [2] V. Sundararaghavan, A. Kumar, International Journal of Plasticity, 47, 111 (2013)
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