[解析事例] ポリマーの誘電緩和
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cisポリブタジエンのMD計算から誘電緩和を評価
目的と手法
誘電緩和は材料の電気的な応答から分子のダイナミクスについて情報を得る手段です。また、近年では通信デバイスに用いられる絶縁性材料の性能として、低誘電損失であることが求められており、ポリマーの誘電特性を制御することは重要な課題となっています。
本事例ではcisポリブタジエンのMD計算から、自己相関関数を用いて誘電緩和を解析した例を紹介します。低分子系での解析例はこちらにあります。(事例1、事例2)
ポリマーは25量体のモデルを使用し、力場にはL-OPLSを指定しました。系を平衡化させるためまずNPT計算を500Kで実施し、10K/1nsの速度で温度を下げた後、各温度でNVT計算を行いました。計算にはGromacsを用いました。計算結果から双極子モーメント \(M\) の自己相関関数 \(\Phi\) を計算し、得られた \(\Phi\) のデータに対してKohlrausch-Williams-Watts (KWW)式を用いてフィッティングして緩和時間 \(\tau\) を算出しました[1] 。フィッティングで得られたパラメータを用いて、フーリエ変換を行うことで周波数応答を計算しました。
\[\Phi(t) = \frac{\langle M(t)M(0) \rangle}{ \langle M(0)M(0) \rangle }\]
\[\Phi_{KWW}(t) = \Phi_{0}exp(-(t/\tau)^\beta)\]
図1に各温度で計算した自己相関関数 \(\Phi\) を示します。各データに対してKWW式によるフィッティングを黒の破線で示しています。また図2にはフィッティングで得られた緩和時間 \(\tau\) を温度の逆数に対してプロットしており、先行文献の値も比較の為に記載しています。
図3には \(\Phi\)KWWのフーリエ変換で得た周波数スペクトルを示しました。
図1:各温度での自己相関関数
\(\Phi\)とKWW式でフィッティングした結果。
図2:KWW式によるフィッティングで得られた緩和時間 \(\tau\) [ps] を温度の逆数に対してプロットしたもの。
図3:誘電緩和スペクトルの実部(+)と虚部(●)
- *参考文献
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- [1] G. D. Smith, O. Borodin, and W. Paul, J. Chem. Phys., 117, 10350 (2002).
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