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[解析事例] DPDを用いた粘弾性のシミュレーション

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マテリアルサイエンス

高分子の絡み合い効果を考慮したDPDシミュレーション

散逸粒子動力学(Dissipative Particle Dynamics : DPD)は粗視化分子シミュレーションの一種で、ソフトポテンシャルの採用や流体力学効果が含まれることから、相分離現象などに広く適用されてきました。一方で、ソフトポテンシャルを用いると粒子同士がすり抜けを起こすため、高分子鎖の絡み合い運動を扱うことはできませんでした。

参考文献[1]の手法をJ-OCTAのVSOPに組み込むことで、高分子鎖の絡み合いを考慮した粘弾性のシミュレーションを実施しました。高分子の間に下図に示すような仮想の結合ポテンシャル(Slip-Spring)を設定することで、これが絡み合い点を模擬します。通常のDPDの時間進行を一定ステップ実施後にSlip-Springをスライド運動させ、このプロセスを繰り返します。

図1 高分子鎖間に設定されたSlip-Spring図1 高分子鎖間に設定されたSlip-Spring

図2に、計算結果を示します。単分散ポリスチレンの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G’’を示しています。3つのグラフは、それぞれ異なる分子量での結果になりますが、いずれも実験値とよく一致していることが分かります。

J-OCTAにはNAPLESやPASTAといったレオロジーのエンジンがありますが、VSOPのDPDを用いることで同様な計算が可能になります(現在はCOGNACにも同様な機能が含まれています)。また、DPDならではの特徴として成分間相互作用やフィラー分散系への適用が期待できます。架橋ゴム材料などもターゲットになり得ます。それぞれのエンジンの得意な領域を選択して使い分けていくとよいでしょう。

図1 計算に用いたモデル(アラニン10量体)。 N末端を固定しC末端を動かす。図2. 絡み合いDPDによるポリスチレンのG’とG’’
左:分子量60.6k、中:分子量112k、右:分子量271k

*参考文献
  • [1] Y. Masubuchi, M. Langeloth, M. C. Bohm, T. Inoue, and F. Muller-Plathe, Macromolecules, 2016, 49, 23, 9186-9191

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