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[解析事例]MDおよびMO/DFTを用いた比誘電率の評価

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事例データDL

様々な分子の比誘電率の評価

目的と手法

比誘電率の種類は電子分極、イオン分極、配向分極があります。実験ではこれらの和が誘電率として求められますが、シミュレーションで評価する場合、それぞれ適切な手法を選択し計算を実施する必要があります。

MDによる評価

MDでは振動と配向に起因する分極を評価することができます。下記の式を用いて各原子の電荷から求められる双極子モーメント(µ)の和の時間揺らぎから求めます。

MDによる評価

  • µi: 分子iの双極子モーメント
  • qk: 原子電荷
  • rk: 原子位置
  • M: 分子の双極子モーメントの総和
  • εr: 比誘電率
  • T: 原子電荷
  • V: 原子位置

QMによる評価

QMでは電子分極を評価することができます。分子分極率αからClausius-Mossottiの式を用いて求めます。数密度Nは実験値やシミュレーション、QSPRなどを用いて別途求める必要があります。

QMによる評価

  • εr: 比誘電率
  • ε0: 真空の誘電率
  • N: 電気双極子の数密度
  • α:分極率

解析結果

ベンゼンとアセトンについてMOとMDによる比誘電率の評価を行った結果を図2および表1に示します。QMはGaussianを用いて求めた分子分極率と実験値の密度を使用しました。MDはOPLS力場を用いた300K、1barの結果から算出しました。アセトンのεMDの値は同じOPLS力場で15との値が報告されており[2]、J-OCTAによる計算結果も妥当な結果であると言えます。

ベンゼンは対称性が高く永久双極子がほとんどないため、配向に起因する分極を評価するMDでは誘電率の値が非常に小さく、実験値のほとんどは電子分極に起因していることが分かります。一方、アセトンは電子分極を評価するだけでは十分ではなく、配向に起因する誘電率を評価することが重要であることが分かりました。

図1 解析モデル(左:ベンゼン、右:アセトン)図1 解析モデル(左:ベンゼン、右:アセトン)

図2 比誘電率計算結果図2 比誘電率計算結果

  εMO εMD εsim. εexp.
Benzene 2.16 1.03 2.19 2.28
Acetone 1.76 13.96 14.72 21.01
比誘電率
  μMO[D] μMD[D]
Benzene 0.013 0.190
Acetone 3.196 3.110
双極子モーメント

表1 比誘電率計算結果

さらに、MDおよび定量的構造物性相関QSPRを用いてPVCポリマーの比誘電率を算出しました。結果を表2、3に示します。
MDでは繰り返し数10のPVCモデルを作成し、OPLS力場を設定しました。100分子を系に投入し、300K、1barで緩和を行い、平衡状態での2nsのMDの結果から比誘電率を算出しました。平衡状態での密度は1.32g/cm3、MDにより求められた比誘電率は2.92となりました。
QSPRによる比誘電率の推算では、密度1.3835 g/cm3、比誘電率2.9289となり、どちらもMDの結果と近い値を得られました。

図3 解析モデル(PVC)(白:水素、灰色:炭素、緑:塩素)図3 解析モデル(PVC)
(白:水素、灰色:炭素、緑:塩素)

ρMD[g/cm3] εMD[-] µMD[D]
1.32 2.92 2.01
表2 MDによる比誘電率計算結果
ρMD[g/cm3] ε298K[-]
1.3835 2.9289
表3 QSPRによる比誘電率計算結果
*参考文献
  • [1] J.Bicerano, Prediction of Polymer Properties, 3rd Ed. Marcel Dekker, 2002
  • [2] J. Chem. Eng. Data 2018, 63, 5, 1170

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