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J-OCTA事例:量子補正を適用した固体の定積比熱の評価

全原子MD
マテリアルサイエンス

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事例データDL

量子補正を適用した定積比熱の評価

目的と手法

古典的な熱力学に拠れば、定積比熱は全エネルギーを温度で微分することで求めることができます。これをそのまま古典分子動力学法で得られるトラジェクトリに対して適用する場合、評価される比熱は実験値に比べて過大に見積もられる傾向にあります[1]。本事例では量子統計力学の知見に拠り、古典分子動力学法で得られたトラジェクトリに対して量子的な補正を適用することで[2]、より精度よく固体の定積比熱を評価しました。

固体の定積比熱\(C_V\)は状態密度\(D(\nu)\)とボーズ・アインシュタイン分布関数\(f_{BE} (\nu)\)を用いて以下の式で評価することができます。

\[C_V=\frac{\partial}{\partial T}\int_0^\infty E(\nu)D(\nu)f_{BE}(\nu)d\nu\]

ここで\(T\)は温度、\(E(\nu)=h\nu\)で\(h\)はプランク定数、\(\nu\)は振動数です。古典分子動力学法において、状態密度は原子の速度相関関数をフーリエ変換することで求められます。この状態密度に対してボーズ・アインシュタイン分布関数を乗ずることで量子的な補正を適用します。

解析結果

50量体のポリスチレン(PS)、PMMAに対して本手法を適用しました。力場にはL-OPLSを用いました。300Kの平衡NVT計算により得られるトラジェクトリから速度相関関数を求め、その速度相関関数をフーリエ変換することで状態密度を求めました。

MDにより得られたトラジェクトリから評価したPMMAの状態密度は図1の通りとなりました。この状態密度を振動数で積分することで定積比熱が評価されます。

図1  MDで評価したPMMAの状態密度 図1 MDで評価したPMMAの状態密度

MDにより評価された、300KにおけるPSとPMMAの定積比熱は以下の表1の通りとなりました。比較・参考のため、文献[3]で示されている定圧比熱の値も同時に示しています。

表1 定積比熱の計算結果

比熱(J/g/K) PS PMMA
MD(定積比熱 300K) 1.29 1.45
文献値(定圧比熱) 1.185 (273.15K)
1.256 (323.15K)
1.42 (298.15K)
*参考文献
  • [1] R. Bhowmika, S. Sihn, V. Varshney, A. K. Roy and J. P. Vernona, Polymer, 167, 176 (2019)
  • [2] C. Li, G. A. Medvedev, E. Lee, J. Kim, J. M. Caruthers and A. Strachan, Polymer, 53, 4222 (2012)
  • [3] Polymer Handbook 4th Edition, Wiley, New York (1999)

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