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[解析事例] 機械学習によるσプロファイルを記述子とした物性推算

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機械学習を用いて推算されたσプロファイルを記述子としたガラス転移温度の予測

目的と手法

σプロファイルは分子の表面電荷分布を記述したもので、COSMO-RS[1]やCOSMO-SAC[2]で用いられます。溶解度や相平衡などの物性を高精度に予測できる一方で、生成のために量子化学計算が必要であり計算コストが高いという欠点があります。

J-OCTAの記述子計算機能では、機械学習を用いて高速にσプロファイルを推算することが可能です。データセットの作成が容易になったことで、物性推算に用いるための機械学習の記述子としての利用も考えられるようになります。

本事例では、記述子計算機能を用いてσプロファイルを推算し、機械学習の記述子として利用することで物性を予測した事例を紹介します。

1 Sigma profileのGCNによる予測

σプロファイルはスペクトルで表され、様々な物性の予測に用いられます。通常はσプロファイルを求めるには量子化学計算が必要です。J-OCTAでは機械学習モデルであるGraph Convolutional Network(GCN)を用いて、分子記法であるSMILESから高速に推算[3]することが可能です。
今回、量子化学計算とGCNによるσプロファイルを比較しました。量子化学計算にはGaussianを使用しました。

結果

図1に推算結果を示します。
通常の計算結果とよく一致していることが確認できます。

図1. アセトアミド(a)のσプロファイル(b)図1. アセトアミド(a)のσプロファイル(b)
青線が量子化学計算によるもの、橙線が機械学習によるもの

2 ガラス転移温度のXGBoostによる予測

COSMO法の記述子であるσプロファイルを機械学習の記述子として利用し、物性を予測した例を紹介します。
モデルの構築および記述子の準備にはJ-OCTA機械学習機能(MI-Suite)を使用し、ガラス転移温度(Tg)を予測しました。
Tgのデータセットは[4]を使用しました。取得したデータは各化合物のSMILESとTgの値です。

Tgの学習・予測手順は以下の通りです。

  1. 1. 記述子計算機能を用いて、各化合物のSMILESからσプロファイルを推算しました。
  2. 2. 推算されたσプロファイルを入力値、Tgを目的値として学習を行いました。
    学習時の設定は下記の通りです。
    • ・MI-Suite の学習機能でサポートされている学習方式のうち、ブースティングベースの学習方式であるXGBoost を使用しました。XGBoost のハイパーパラメータの設定は GP(ガウス過程)に基づいた最適パラメータ設定を用いました。
    • ・学習時の訓練セット、テストセットのデータ比率は 8:2 としました。
  3. 3. 推算されたσプロファイルをUMAP[5]を用いてマッピングしTgの値で色分けしました。
    • ・UMAPは次元削減手法の一つで、多次元空間を可視化し解釈性を向上させることができます。
    • ・今回は51次元のσプロファイルを2次元空間にマッピングしました。

結果

図2に学習の結果を示します。
予測精度は決定係数ベースで、トレーニングデータでR2=0.999、テストデータでR2=0.942となりました。
マッピング結果を図3に示します。
X軸が示す特徴がTgに影響を及ぼしている一方で、Y軸はTgとは関係が薄い別の特徴を示していることが読み取れます。
Xの値のみが大きく違う点のσプロファイルのプロットから、Xに集約された特徴が分子の分極であることが分かります。

図2. Tg予測結果図2. Tg予測結果
縦軸は予測値、横軸は実験値

図3. マッピング結果と各点に対応するσプロファイル図3. マッピング結果と各点に対応するσプロファイル
各点が物質を表し、色はそれぞれのTgの値。x軸とy軸はそれぞれ異なる特徴を表しており、この図ではx軸に沿ってTg値が変化することからx軸が表す特徴が影響を及ぼしていると考えられる。3つの物質についてσプロファイルを掲載しており、特徴的な形状を示していることが分かる。

*参考文献

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